FF14:クレージーだった復活劇 吉田直樹プロデューサー語る

ファイナルファンタジー14:新生エオルゼア」のゲーム画面 (C) 2010-2013 SQUARE ENIX CO.,LTD.All Rights Reserved.
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ファイナルファンタジー14:新生エオルゼア」のゲーム画面 (C) 2010-2013 SQUARE ENIX CO.,LTD.All Rights Reserved.

 日米欧で登録アカウント数が150万を誇るスクウェア・エニックスのオンラインゲーム「ファイナルファンタジー(FF)14:新生エオルゼア」。2010年秋のサービス開始時は完成度不足でつまずいたが、2年半で巻き返し、現在は同時接続者数34万人と、FF11のピーク時(19万人)の倍を記録する人気ぶりだ。業界関係者が「異例」と口をそろえる復活劇について、立て直しの陣頭指揮を執った総責任者の吉田直樹プロデューサーに話を聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 −−どういう経緯で総責任者に?

 オンラインゲーム「ドラゴンクエスト10」のチーフプランナーを担当したり、スクウェア・エニックスの入社前にもオンラインゲームを作り、ユーザーとしてもオンラインゲームをかなり遊んだ経験があります。10年9月にFF14が始まったとき、全く別のゲームを作ろうとしていたのですが、チームのスタッフが、次々とサービスを始めたばかりのFF14のヘルプに入りました。そこで調べると「一大事」と思ったので社長の和田(洋一・現会長)に「(人員を)全投入しないと無理」と進言しました。(引き継ぐ)覚悟は決まっていましたが、それより当時のFF14をプレーしたお客さんに「申し訳ない」という気持ちが大きかった。私もかつてオンラインゲームを遊んでいたので、“怒りの炎”が大きいのは分かりますから。

 −−どうやって立て直した?

 すべての問題点を洗い出すことでした。開発者を一度休ませて、別の開発者で調査を進めながら、ゲームの修正が可能なのかを探るため、問題点をリスト化しました。調査は同年12月28日に終わり、正月休みの間に(問題点を)眺めていました。結論は「このままでは、求める最低ラインに到達しない」ということが見えたので、(旧FF14の)新しいシナリオを書いて、ゲームを一度終わらせることがベストと思いました。考えたのはこの先のFFシリーズのことで、失敗したままだと「次のFFを買ってもらえない」と思いました。

 −−改修しながら終わらせ、並行して新作を作るとは前代未聞ですね。

 その方が劇的じゃないですか。クレージーだけど「それもFFらしい」と思いました。11年1月に「メテオが落ちてゲームの世界を終わらせる」という内容の企画を社内でプレゼンしたところ、スタッフは「やれるならやってくれ」とおもしろがってくれて。新FF14は最初の3カ月間はいっさいプログラムを書かず、仕様の設計をしていましたね。問題はスケジュールでした。PS4など次世代機の発売時期を予想すると、遅くとも13年の春か夏に出さないとダメと思いましたから。理想はもっと早い時期でしたけれど、間に合ってホッとしています。

 −−開発の詳細な状況を逐次公開したことも話題になりました。

 説明責任があると考えたからです。オンラインゲームは政治のような部分があり、プレーヤーは国民、課金は住民税に当たります。そして、未来の期待感があってこそ遊ぶので、絶えずその期待感を伝えるのがベストだと考えたのです。ただスタッフからは(私がどんどん公開するので)「新情報がなくなる」と言われましたが……。

 −−特に大変だったことは?

 11年夏ごろでしょうか。当時は懸命にゲーム(旧FF14)のバトルシステムのテコ入れをしていたのですが、その時期にファンがしびれを切らすとも思っていました。ただプレッシャーに負けると付け焼き刃になるので、その葛藤はありました。あとは3月11日の東日本大震災ですね。当時は完成寸前だったタイタンとリヴァイアサンの召喚獣の実装ですが、地震や津波を思い出させるので延期しました。

 −−新FF14の手応えを感じたのは?

 ベータテストのフェーズ3(13年6月)が山場と考えていました。実は旧FF14は、課金を始めたときから終了時を比較すると課金者数が3倍に増えたのです。だから旧FF14をプレーしたコアユーザーの評判がいいのは当然で、PS3から入る新しいユーザーが入って来て楽しめるかが勝負でした。私は数字を見ないと納得できない性格なので、ベータテストの数字を見て初めて「いけるかな?」と確信しました。

 −−人気が爆発しました。

 正直もう少しゆるやかなスタートを想定していました。旧FF14のベータテストの参加者が予想よりも少なかったのもあります。同時接続者数が34万人になるとはさすがに予想はできませんでした。ただ(サービス開始当初、サーバーにアクセスが殺到し)プレーできなかったお客さんのお怒りは当然で、そこは反省です。(無料期間の)1カ月が経過して、課金の時期になっても1日あたりのログイン数がさすがに減ると思ったのですが、ほぼ減らないことにも驚いています。

 −−ドラクエ10の経験は生きた?

 (ドラクエ生みの親の)堀井雄二さんから言われたことがあるんです。私はゲーム好きで、使い込めば便利になるインターフェースを設計したりするのですが、堀井さんから「吉田くん、それが便利なのは分かる。でも使えないと一般の人には面白さは分からないんだよ」と指摘されたことでしょうか。新FF14でストーリーの流れをわかりやすくするため、イベントが起きるキャラクターの頭上に「!」のアイコンを付けたのも、見た目のわかりやすさを重視したからです。今のプレーヤーは忙しい中で貴重な時間を使って遊んでくれている人も多いので、ネットで調べなくても分かることを追求しています。

 −−ドラクエ10のようにタブレットやスマートフォンの展開は?

 FF14は日米欧で展開しており、ネットの地域の環境差を考慮しないといけません。その部分の解消にコストをかけるよりも、今あるお客さんへのアップデートに注力したい。今のお客さんに満足してもらって初めて新しいお客さんを獲得していけると考えています。

 −−これまでを振り返ってみていかがですか?

 MMOPRG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)の制作は通常4~5年はかかるのですが、(改修と新作開発の)並行で実質2年強でしたから不安はありました。だから思い入れもあり、「私の人生が終わってもいい」という覚悟で取り組んでいました。一番うれしかったのは、ゲームショウに来たユーザーに「FFの新作と思ってプレーしたらハマりました」と声をかけられたことですね。最高の褒め言葉でした。

 −−今後の展開は?

 12月には相当なボリュームのパッチ(追加データ)を用意しています。ゲーム内で家に住めるようになり、PVP(プレーヤー同士の対戦)も実装して、(従来ある)モンスターの戦いと合わせて、三つの軸がそろいます。プレーしてみる皆さんに「すごいボリュームのゲームだ」と認めてもらえることが、次のお客さんを呼ぶ原動力になるので、全勢力を傾けています。また来年2月に発売されるPS4の発売で、ビジネスサイズが上がる期待もしています。リスクを背負って勝負をしてきたので、どこまで駆け上がれるか頑張るつもりです。

 −−ファンへのメッセージを。

 昔にドラクエやFFを体験した人たちが、コントローラーを握って、○ボタンを押せば興奮できる作りにしています。オンラインゲームという単語を忘れて、最新作のFFが遊べると思って、1人で気軽にプレーしていただければうれしい限りです。

 ■プロフィル よしだ・なおき=05年にスクウェア・エニックス入社。「ドラゴンクエスト モンスターバトルロード」のディレクターや、「ドラゴンクエスト10」のチーフプランナーとして活躍。2010年12月からFF14のプロデューサー兼ディレクターに就任、現在に至る。

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