アイカツ!:売り上げ140億円に急成長 大ブームの裏側

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 小学低学年女児を中心に人気を集めているカードゲーム「アイカツ!」。カードの販売開始から約1年半で急成長を遂げ、グッズなどの売り上げは今年度約141億円が見込まれており、同じバンダイナムコグループのキャラクターでは10周年を迎えた人気アニメ「プリキュア」シリーズを上回る予定だ。ハマっているのは子どもだけではなく、同ゲームのファンの大人の男性を指す“アイカツおじさん”という言葉も話題になるなど社会現象になりつつある。子どもから大人まで夢中になっている大ブームの裏側を探った。

ウナギノボリ

 ◇カード売り上げは1億枚

 「アイカツ!」は“アイドル”と“ファッション”をテーマとしたカードゲームで、玩具店などに設置されているゲーム機にカードを読み込ませてプレーする。プレーヤーは、トップスやスカート、アクセサリーなどファッションアイテムが描かれたカードを組み合わせて、コーディネートしたり、音楽に合わせてボタンを押してリズムゲームを楽しんだりできる。コーディネートの評価やリズムゲームの得点に応じて、ファンが増える設定となっており、獲得したファンの数はICカードに登録される。1プレー100円で、1回につきカードが1枚手に入る仕組みとなっている。

 カードは2012年10月に販売が開始され、同時期にテレビアニメの放送がスタート。コアターゲットは小学1~3年生の女児で、アニメでカードを含む玩具をプロモーションするメディアミックス戦略がとられた。グッズなどの売り上げは12年度の約半年間で約18億円だったが、13年度は約141億円(見込み)になるまで急成長し、約117億円(同)の「プリキュア」シリーズを抜く勢いだ。カードの累計売り上げは約1億枚(今年度見込み)で、スマートフォンを模した「アイカツフォンスマート」は今年度、約25万個の販売を計画するなど、関連商品も好調だ。なお、“アイカツおじさん”という言葉が話題だが、同社によると、ユーザーはコアターゲットの小学1~3年生女児が8割以上で「大人の男性は1割以下」という。

 ◇低年齢化するAKB48&オシャレブームに着目

 「アイカツ!」の企画がスタートしたのは11年春。同ゲームを手がけるバンダイのカード事業部の廣瀬剛さんによると、ターゲットとして想定したのは、幼稚園児がメインターゲットの「プリキュア」よりも少し年齢層が高い小学校低学年の女児だという。廣瀬さんは「AKB48」がアイドルファンだけではなく、子どもからも人気を集めていることと、小学生向けのファッションブランドや化粧品が続々と登場したことで、女児のファッションやコスメへの関心が高まっていることに注目し、ファッションとアイドルをテーマとしたカードゲームの開発に着手。廣瀬さんは、今どきの女児の流行を探りながら「親は30代前後で、ファッション誌を読んで育った世代。子どもと一緒に楽しめるものを目指した」とターゲットを絞っていった。

 ◇今どき女児が夢中になるシステムとは?

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 ファッションをテーマとした女児向けカードゲームの先駆者として「オシャレ魔女 ラブandベリー(ラブベリ)」(セガ、04~08年)がある。「アイカツ!」と「ラブベリ」のコンセプトは似ているが、「アイカツ!」は男児向けアニメ、マンガの要素やインターネットを使った機能を取り入れることでアップデートさせた。

 「ラブベリ」はラブとベリー、ミーシャの3人からキャラクターを選び、プレーするが、「アイカツ!」には、可愛いアイドル風衣装を好む主人公の星宮いちごやゴスロリ風の藤堂ユリカ、ロックテイストの音城セイラ、米国育ちの一ノ瀬かえでら個性的なキャラクターが続々と登場する。女児向けのファッションが多様化していることに合わせて、キャラクターの数を増やしたのだ。さらに、廣瀬さんは「『キャプテン翼』などの男児向けの作品のように、ライバルが次々と登場し、仲間になり、最後はオールスターで活躍する……という群像劇をイメージした。大人数のグループのAKB48が流行していることも意識した」と説明する。

 ゲームの公式サイトで登録すれば、ウェブ上に“部屋”を持つことができ、インテリアのコーディネートや、ゲームの進行状況を確認できる「マイルーム」というサービスも展開。マイルームには、友達と交流できるなどSNSのような機能もあり、自宅でも「アイカツ!」の世界を楽しめる。小学低学年にもインターネットが浸透している現代ならではのサービスだ。

 ◇ゴスロリやツンデレが人気!?

 廣瀬さんは「アイカツ!」のヒットで予想外だったのが「ブレークの早さ」だったという。「13年初頭にはブレークしたので、初年度の予算は早い段階で達成できました。女児ものは火が付くまで、半年程度かかると言われているので、驚きました」と話す。成功の要因を「アニメなどのメディアミックスの方法がよかったのかもしれません。ゲームやアニメの世界観を統一することを意識しました」と分析する。

 また、予想外に人気を集めたのがゴスロリ風のキャラクター・藤堂ユリカだったという。廣瀬さんは「大人には以前からゴスロリは人気ジャンルでしたが、子どもにも浸透してきたようです。ほかにも、ツンデレキャラや萌(も)えキャラも人気で、少し前に話題になったキーワードが、時間がたってから、子どもにも流行する傾向はあるかもしれません」と話す。

 「今後も皆さんの想像の斜め上をいくような展開を目指したい」と話す廣瀬さん。12月には初の劇場版アニメの公開も控え、今後も今どきの女児の流行を取り入れながら、ますます大きなムーブメントになっていきそうだ。 

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