斉藤由貴:高校卒業の思い出語る デビュー30周年記念アルバム「ETERNITY」リリース

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 歌手で女優の斉藤由貴さんが、デビュー30周年を記念したニューアルバム「ETERNITY」を11日にリリースした。「誰もが味わった特別な恋の瞬間へのオマージュ」をテーマにした作品で、ジャズバラードの名曲やオリジナル楽曲などを合わせた全10曲で構成されている。30年の時を経て、3児の母になった今もなお、意欲的に活動する斉藤さんに、新アルバムの話やデビュー当時のエピソードなどについて聞いた。

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 −−ジャズスタンダードのカバーを中心に収めた新作「ETERNITY」のテーマはズバリ、“恋”だそうですね。

 若かりし頃は熱烈な恋をして、眠れなかったり、月夜や海に吠えてみたくなったりするけれど(笑い)、40、50歳になると、そういうものから遠ざかって、責任をいっぱい背負って頑張ってるわけですよね。でもだからといって、その当時の恋のトキメキみたいなものがなくなったわけじゃなくて、何層かの記憶の層のかなり下の方にはさまってたり。だから、このアルバムを聴いて、恋をしていた時ってこういう気持ちになったよなって一瞬でも思ってもらえたら、すてきなひと時が作れるんじゃないかなって。

 −−「Blue Moon」という楽曲は、奇跡的な恋の出会いを歌ったロマンチックなナンバーで、斉藤さんの恋の思い出の曲でもあるそうですが、どんなシチュエーションで聴いていたんですか?

 車(の中)とかですね。好きな人に、こういう(ジャズスタンダードの)歌を教えてもらって、この歌がすごく好きだっていう話をしてたので、じゃあ私も聴いてみようかって。歌も演奏もホントにジャズが好きな人で、例えばビル・エバンスとか。

 −−斉藤さんが作詞を手がけたオリジナル曲「永遠」は、歌詞にある通り、実際に夜中に目が覚めて歌詞を書いたそうですね。

 愛する人と一緒に眠っていて、その人の寝顔を見て「ずっと一緒にいてほしいな」って思うような感じの歌詞ですけど、実は私、一番末っ子の娘と一緒に寝てるんですね。だから、彼女の顔を見ながら書いたって言っちゃうと「恋の歌じゃないじゃん」みたいな感じになっちゃうんですけど、恋愛をしていて、その人が隣にいたら、そういう気持ちになるだろうなっていう歌詞ですね。

 −−スマホのメモ機能で作詞をされたそうですが、ちなみにデジタル機器には強い方ですか?

 全然。パソコンは起動することぐらいしかできないし、あとはもう強制終了させるしかないという。果ては壊しちゃうぐらいの勢いで(笑い)。iPadにいたっては子供に勝手にパスワードを変えられてしまって、子供がそのパスワードを忘れてしまったので、「このiPadは永久に使えません」みたいな状態です(笑い)。

 −−なるほど(笑い)。では、ご自身で今作を聴いて感じることは?

 30年たっても歌はへたなんだなって(笑い)。それと、すごくロマンチックですてきな歌なので、どうしても感情過多になってしまって、こんなにベタに歌わなくてもよかったかなって思ったり。芝居をしてる時も、感情移入しすぎてクドい感じになっちゃったりして、女優をやってる時の欠点とリンクしてるんだなって。

 −−デビュー当初は、歌手と女優をこなす“アイドル”だったわけですが、当時を改めて振り返ってみていかがですか?

 本当に忙しくてつらかったので、いつも「困ったなあ」って思いながらやってました。最初から、アイドル歌手や芸能人になりたいという意識が皆無だったんです。でも家族が、すごく神経質でナイーブだった私に目先の違うことをやらせてみたいと思ったらしく、オーディションに参加させたら残ってしまって……。だからアイドル歌手というものに憧れが全くなかったし、「私は別にこういうことをやりたくない」という気持ちが強かったです。

 −−「卒業」でデビューした1985年にちょうど高校を卒業されたんですよね。忙しくて卒業式に出席できなかったりは?

 それはさすがにないです。卒業式のあとの最後のホームルームで、全員で輪になって一人一人にエールを送る、みたいなことをやったんですけど、私の順番になったら、まだ(「卒業」が)発売されたばかりでそんなに覚えてなかったはずなのに、先生も含めてクラスのみんながこの歌を歌ってくれて、それはすごくいい思い出です。結構泣けました。

 −−また、井上陽水さんのカバー「夢の中へ」の振り付け(ステップ)はすごく印象的でした。この頃の思い出はありますか?

 自分の曲で、プロの人に振り付けしてもらったことって多分ないんです。だから、適当に自分で体を動かしてたら、ああいうふうになっちゃったんです。あとは、井上陽水さんと対談したことですかね。(カバーに関しては)結構、寛容に受け止めてくださって、「頑張ってくださいね」みたいなことを言われました。

 −−主演ドラマ「スケバン刑事」の主人公役を後に引き継いだ南野陽子さん、浅香唯さんといった同期アイドルとの親交は?

 南野陽子ちゃんの家に1回遊びに行ったことがあります。共通の友達がいたからなんとなく行くことになって。それで、お茶だけ飲んでさよならって言って帰ってきたっていう、すっごく変な時間で……。彼女もそれは覚えていて、この間、小堺(一機)さんの「ごきげんよう」(フジテレビ系トーク番組)に一緒に出た時にその話をして、「変な時間だったね」っていう話に落ち着いて。

 彼女はいつも、初代「スケバン刑事」の私を引き合いに出されて、“なんかなあ”って思う気持ちが多分あったと思うし、私は私で、そういうふうに思ってるんじゃないかな、悪いなあっていう気持ちもあって。でもお互いに年を重ねて「こんなこともありましたね」みたいな感じでサラッと話した時、大人になるって結構気楽なことも増えるなあと思って、何かホッとしました。

 <プロフィル>

 1966年9月10日生まれ、神奈川県出身。85年2月にシングル「卒業」で歌手デビュー。同年4月から放送されたドラマ「スケバン刑事」に主演。89年には井上陽水さんのカバー曲「夢の中へ」がヒット。斉藤さんが初めてハマッたポップカルチャーは、初めて買ったLPレコードで、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」。「音楽の教科書の楽典に、当時、ドイツの(ベルリン・フィルハーモニー)管弦楽団を率いていたヘルベルト・フォン・カラヤンの顔写真が載っていて、小学校2年生だったんですけど、“なんてカッコいいダンディなおじさんだろう”と思って。それで、お正月にお年玉を握りしめて(東京・)銀座のレコード屋さんに行ってカラヤン指揮の『くるみ割り人形』くださいって。たぶん、店員さんにすごく引かれてたと思います(笑い)」と話した。

 (インタビュー・文・撮影:水白京)

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