藍井エイル:新作「D’AZUR」リリース「新しい歌い方を発見できた」 11月に武道館決定

最新アルバム「D’AZUR」をリリースした藍井エイルさん
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最新アルバム「D’AZUR」をリリースした藍井エイルさん

 アニメ「アルスラーン戦記」のエンディングテーマ「ラピスラズリ」が好評を博し、テレビ朝日系「ミュージックステーション」の出演も話題になった歌手の藍井エイルさんの最新アルバム「D’AZUR(ダジュール)」が24日リリースされた。同作について、また11月2日に決定した初の日本武道館(東京都千代田区)でのライブに向けて話を聞いた。

ウナギノボリ

 ――タイトルの「D’AZUR」は「~の青」という意味。エイルさんのイメージカラーが、青なんですよね。

 はい。「あなたと私の青い世界」という意味で付けました。私の楽曲や歌声は、力強さやパンチのあるものが多いので、言葉の響きから一瞬でそれが分かるものがいいと思って、たくさん考えた中にあったのが「D’AZUR」でした。女性らしい雰囲気を残しつつ、言葉の響きに強いものを感じたので、絶対にこれしかない!という感じで決まりました。それはジャケット写真もそうで、後ろに写っている青いライオンは、ダジュールくんと呼んでいるんですけど(笑い)。ライオンは力強さの象徴で、私のテーマカラーである青のライオンを背にしているという。

 ――今回のアルバムは、最新シングル「ラピスラズリ」を筆頭に、全体に分かりやすいメロディーを意識されている気がしました。

 はい。分かりやすいメロディーの曲が、アルバムの新曲にはたくさんあります。それと「ラピス」のお陰で、新しい歌い方を発見することができました。それがあったお陰で、「青の世界」などのバラードを歌ったとき、ノドやおなかの使い方が変わったと実感しました。

 ――具体的には?

 BPM(テンポ)の速い曲と聴き比べていただくと、分かりやすいと思います。バラードは、声がものすごく太くなっていて、声を筒にたとえると、空洞の部分が大きくなっているイメージです。

 アルバム「D’AZUR」は、1本の木から枝分かれした先がたくさんあるような、いろんなジャンルに触れたアルバムになっているのですが、それに伴って歌い方も曲によって全く変えています。なので、歌声や歌い方という部分にも注意して聴いていただけたらうれしいです。

 ――その「青の世界」は、エイルさんご自身の作詞で、しっとりと歌い上げるバラード。このアルバムで描かれたさまざまな気持ちを最後にまとめている感じですね。

 実は、ファンクラブイベントで一度だけ歌ったことがあって。そのときはリリースも決まってなくて、タイトルも違っていたんですけど、いつかリリースする!と決めていて。今回、歌詞を新たに私が書かせていただいて、より壮大に生まれ変わったという形です。ファンクラブイベントのときも、ファンのみんなから「めっちゃいい曲ですね!」と言ってもらえたし。「いつリリースするんですか?」と聞かれたときは、「まだそれは、ちょっと……」と言葉を濁していたんですけど、ようやく点と点がつながって線になった(形になった)感覚です。

 ――また「幻影」という曲は、メロディーとドラマチックなオーケストラが、すさまじい迫力ですね。

 そうなんです! メロディーが超難しくて、表メロに行ったあとに裏メロに行って、また表に戻ってくるじゃないですか。最初、うまく入れなくて。絶対にずれるっていう。だから、めっちゃ練習して本番のレコーディングに臨みました。

 作詞に関しては……この切ないメロディーとドラマチックな展開を、どう表現したらいいか悩んで。それで初めての試みで、まず自分で小説を書いて、その小説から浮かび上がった映像的なイメージを歌詞にしていったんです。

 ――なんと遠回りな(笑い)。

 でも、2時間半くらいでできましたよ。もちろん超短編で、とりあえず世界観を作るためのものなので、小説というと大げさかもしれませんけど。主人公の設定とかシチュエーション、主人公が何を考えているかなど書いていって。そうやっていくうちに、自分の気持ちもまとまっていった。だから小説に1時間、作詞に1時間半くらい。逆に、いつもみたいに映画を見たり小説を読んだりしてインスパイアを得るよりも、めっちゃ早かったです(笑い)。

 ――超短編でも物語を書けるのはすごいです。そういう経験が今までにも?

 昔から、お話を考えたり、文章を書くのがすごく好きだったんです。子どもの頃は、よく自分でマンガや小説を書くまねごとをしてました。そういう流れでいうと、いつか絵本を書いてみたいという夢もありますね。昔、絵本が好きでいろんなものを読んでいた時期があったんですけど、小さい子どもにも読めるものがいいなと思って。まあこれは、音楽とは別のもう一つの夢という感じですけどね。

 私たちのような仕事は、歌詞を書くことで自分の気持ちを整理整頓できるんです。と同時にそれは、自分自身と向き合う瞬間でもあって。そういう中で、違った自分が見えてくることもあるし。

 ――自分を確認することもできる。

 8曲目の「JUMP!!!」という曲の2番の歌詞は、まさに自分を確認することとつながっています。自分らしさはこうなんだ! と、どんなに思っていても、他人から見たら違ってたりすることもある。自分のことは自分が一番分かってるつもりでも、近すぎて見えづらくなってることもあると思ったことがあって、それがそのまま歌詞になっています。

 昔は、人からこうだよねって自分のことを決めつけられると、絶対に認められなかったけれど、今は「私にそういう面もあるんだ」と、受け入れられるようになった。否定してばかりでは、それ以上広がらないし、何にもつながっていかないと気づいたんです。ちょっと大人になったのだと思います(笑い)。

 ――今作は、エイルさん自身が作詞した曲がたくさんありますが、ご自分からそうしたいと?

 はい。極力自分で書きたいと思って。それによって、伝えたいことがしっかり形にできたと思います。

 ――言いたいことがたまっていたということですか。

 言いたいことは常にありますよ(笑い)。最近は家から現場まで徒歩で移動するようにしていて。だいたい1時間半くらい歩くんですけど、その間にいろんなことを考えるので、思いついたことがあったら立ち止まってメモして。それで、ネタはたくさんたまっているので。

 ――あと、相川七瀬さんの「BREAK OUT!」のカバーも収録していますね。

 相川さんの曲は、学生時代にカラオケで歌いまくっていたから、こうやってカバーさせていただいて、収録できたことがうれしいです。ご本人とはまだお会いしたことがないのですが(その後、27日のライブで初共演)、ツイッターですごくからんでくれて、めっちゃやさしいです(笑い)。歌ってすごく楽しかったし、キメがめちゃめちゃ気持ちよかった。昨年のライブでも歌ったんですけど、そのときはみんな赤いサイリウムを振ってくれて、すごくうれしかったです!

 ――ライブといえば、11月2日には初の日本武道館公演が決まりましたね。

 話を聞いたときはすごくうれしくて、速攻で親に電話しました(笑い)。武道館が決まった今、私がやるべきことは明白です。気持ちを歌に乗せて、誰かの心の支えになれたり寄り添うとか、それを全力でやることです。それはもう、これから先もずっと終わらない夢なんですけど……。音楽というものに全身全霊を込める。その気持ちは、武道館が決まったことで、より強くなりました!

 <プロフィル>

 11月30日生まれ、札幌市出身。血液型AB型。2011年にアニメ「Fate/Zero」ED曲に抜てきされたシングル「MEMORIA」でデビュー。「機動戦士ガンダムAGE」や「ソードアート・オンライン」など数多くの人気アニメ楽曲を歌い、日本のみならず海外でも人気を得ている。パワフルでエモーショナルなライブパフォーマンスには定評がある。

 8月15日に「お台場夢大陸 めざましライブ」に出演。11月2日に自身初の日本武道館(東京都千代田区)でのライブを行う。

 (取材・文/榑林史章)

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