「スモーク」(1995年)などで知られる香港の名匠ウェイン・ワン監督が、西島秀俊さんやビートたけしさんらを迎えて製作した「女が眠る時」が27日から公開される。原作は、スペインの作家ハビエル・マリアスさんの短編小説。海辺のリゾートホテルを舞台に、謎の年の差カップルに興味をそそられた小説家の男が、じわじわと狂気に陥っていくさまを描いている。
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作家の清水健二(西島さん)と妻の綾(小山田サユリさん)は、休暇でリゾートホテルに滞在していた。健二は処女作のヒット後、スランプに陥り、今後は就職することにしていた。妻との関係は倦怠(けんたい)期にさしかかっている。ホテルのプールサイドで若くて美しい女性・美樹(忽那汐里さん)を連れた初老の男・佐原(たけしさん)を見かけた健二は、2人に興味をそそられ、あとをつけていき、部屋をのぞき見る。そこには、美樹の産毛をそり、眠る様子を撮影している佐原の姿があった……という展開。
倦怠期の夫婦と、謎めいたカップル。2組の男女が交差するのは、海沿いのおしゃれなリゾートホテル。生活感が一切しない洗練されたセンスの舞台の中で、西島さんやたけしさんの圧倒的な存在感が光る。たけしさんは、自作の映画以外での主演は12年ぶりだという。若い女性が眠る無垢(むく)な姿にとりつかれた初老の男の異様さを、視線や立ち姿で見せ、ゾクゾクさせられる。のぞかれる快感もあるような余裕も見せ、せりふの一つ一つが意味深に聞こえてくる。
一方、西島さん演じるスランプの小説家・健二は、少しずつ虚構の世界に入っていきながら、映画を導く人物。妄想中に出くわす民宿のオヤジをリリー・フランキーさんが演じ、健二と一緒にけむに巻かれる気分になる。健二の好奇心をかき立てるファーストシーンは、明るくまぶしいプールサイドだったのに、映画が進むにつれて色彩はグレーがかって不穏さを帯びていく。無垢な姿で眠る女は、白い衣装で純粋さが際立ち、男たちの妄想を駆り立てる。健二の妻・綾はやり手の編集者。4人の中で唯一、現実的な人物。彼女がどうからんでくるのか。その行方にもやきもきさせられる。「エンディングノート」(11年)の監督でもある砂田麻美さんが脚本陣に名を連ねている。27日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。西島さんの出演の「真木栗ノ穴」(07年)も併せて観賞をおすすめします。
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