話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。今回は「銀魂」「おそ松さん」などの藤田陽一監督が手がけたことも話題のオリジナルアニメ「クラシカロイド」です。NHKエンタープライズの制作統括の野島正宏さんに作品の魅力を語ってもらいました。
ウナギノボリ
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現代に突如現れたベートーヴェンが、初めて食べたギョーザの底知れぬ魅力に取りつかれ“究極のギョーザー・漆黒のハーモニー”を作るため苦闘する……。決してそんな“ギョーザアニメ”ではありません!!!
偉大な作曲家の人格、記憶を持つクラシカロイドのベートーヴェン(通称ベト)やモーツァルト(通称モツ)が、地方都市・ハママツにある洋館・音羽館に住み着きます。そのちょっとおかしな言動でとんでもない騒ぎを次々起こし、洋館の大家の女子高生・歌苗を日々悩ませる、という日常ドタバタコメディーです。
一方、そんなベトやモツがいったんムジークという音楽を奏でると、ロボットが出現して踊り出したり一夜の夢がかなったりと、不思議なできごとが起こります。ムジークは、ベートーヴェンの「田園」やモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」などクラシックの名曲を、布袋寅泰さん、tofubeatsさんはじめトップミュージシャンたちがロックやポップスにアレンジしています。クラシックをあまり聴かない方も気軽に楽しめる曲ばかりです。トンデモコメディーと魅力的なムジーク、これがアニメ「クラシカロイド」の特徴です。
オリジナルアニメの担当は今回で3回目なので、その独自の世界観を伝える難しさはよく分かっています。当然、「クラシカロイド」にも世界観や物語構造は作ってあるのですが、この作品はそっちの方向でストーリーを深掘りするアニメじゃないよね、ということは藤田陽一監督はじめスタッフ間で当初から意見が一致していました。
むしろ、ベトやモツたちの個性をたっぷり濃厚に描いて“キャラを立てる”こと、また脚本家それぞれの持ち味を生かし、毎回異なるタッチのコメディーにすることを優先しています。監督の言葉を借りるなら“闇鍋”的な面白さの追求です。とにかくあのキャラが気になってしかたがないとか、ムジークが頭の中でループしちゃうとか、何度も見たくなる“クセになるアニメだ”と感じてもらえたらうれしいですね。
--作品を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったことは?
シナリオ構築は試行錯誤の連続で、スタートしてから2年たちました。実在の大作曲家をそのままキャラにするのではなく、クラシカロイドの彼らはどういう独自の個性を持ち、現代の何に関心を抱き、どんな騒ぎを起こすか? というイメージが共有できるまでに半年かかりました。
例えば、音楽以外にも何かと内省的なベトだからこそ、初めて食べたギョーザの鮮烈な印象に、とことんこだわります。一方、一見チャラくて分かりやすそうなモツの描写は非常に難しく、スタッフ一同かなり悩みました。モツがどんなふうに一筋縄でいかないキャラになったかは、ぜひアニメで確認してください。
また、キャラクター原案の土林誠さんに藤田監督のイメージをすぐにビジュアル化していただいたり、土林さんが描いたキャラを見て人物像を深めたり、というキャッチボールができたのは幸せなことでした。特に歌苗、シューベルト、チャイコ(チャイコフスキー)の個性は、このやりとりの中から生まれた部分が大きいと思います。
クラシカロイドの正体が少し明らかになり、バッハがいよいよムジークを使い、力の一端を見せつけますが、今後も基本は1話完結のコメディーです。
歌苗と幼なじみの奏助は毎回騒動に巻き込まれていきますが、大家の覚悟(?)を決めた歌苗、あわよくばムジークの力に乗っかりたい奏助も、もう受け身なだけではありません。クラシカロイド同士の人間関係や思惑も絡んでくるので、これまで以上におかしな騒ぎもあれば、ちょっといい話や切ない話もあります。そして、ベトたちに対するバッハの思惑も次第に見えてくるので、毎回見逃せません。
どの話数からでも、あるいは途中見忘れた方でも、すぐになじめ、とにかく笑って一時を過ごせる気楽なコメディーです。好きなクラシカロイドの活躍を期待するもよし、毎回ムジークの楽曲と演出を楽しむもよし、ベト、モツとバッハの対立の結末を予想するもよし。自由な見方でご覧いただければと思います。
NHKエンタープライズ 「クラシカロイド」制作統括 野島正宏
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