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解説:視聴者がいつしか“伴走者”に 共に夢を追った8週間 夜ドラ「いつそら」が刺さったワケ

NHKの夜ドラ「いつか、無重力の宙で」最終回の場面カット (C)NHK

 俳優の木竜麻生さん主演のNHKの夜ドラ「いつか、無重力の宙(そら)で」(総合、月~木曜午後10時45分)の最終回(第32回)が、10月30日に放送された。「超小型人工衛星」で宇宙を目指す、30代女性たちの2度目の青春物語は、“ミッション”の成功と、その先の夢へと視線が向けられた中で、見事に完結。熱心な視聴者から「いいドラマでした」「出会えたことに感謝」などの感動の声が寄せられた。なぜ本作は深く刺さったのか、ひもといてみたいと思う。

 ◇ファミレス会話だけでも“画がもつ”、そんなドラマに

 ドラマは全32回、8週にわたって放送。高校時代に「一緒に宇宙に行こう」と夢を語り合った天文部の女性4人が、大人になってそれぞれの道を歩む中、ふと忘れていたかつての夢と再会。“あの頃”の自分に背中を押されて、2度目の青春が始まる。4人が目指したのは、自作の「超小型人工衛星」を宇宙へと送り、地球を見ること。途中、仲間との悲しい別れもあったが、周囲の力を得て、夢を現実のものへと変えた。

 一見、未知なる宇宙を相手にした“絵空事”にも思える、元天文部の30代女性4人による夢と挑戦。実のところ、“超小型”という人工衛星の大きさと同様、視聴者にもしっくりくるスケール感で描かれた分、現実離れしたものにはならず、話が進むにつれ、多くの共感と感動を呼ぶことに。このあたりは武田雄樹さんの脚本の巧みさが光った。

 元天文部の30代女性4人のキャラクター造形も秀逸で、広告代理店での仕事に忙殺されそうになったり、判断に迷ったりした主人公の望月飛鳥(木竜さん)を筆頭に、“太陽”のようにいつも明るく前向きでありながら、その裏では病魔と闘っていた日比野ひかり(森田望智さん)、甘え上手で、言いたいことは言うタイプでありながら、繊細さも併せ持つ水原周(片山友希さん)、真面目で堅実な合理主義者だが、息子に愛情を注ぐことは惜しまないシングルマザーの木内晴子(伊藤万理華さん)と、各者各様。彼女らが、ファミレスで楽しそうに会話しているだけでも“画(え)がもつ”、そんなドラマ(脚本)だったというのも成功の要因の一つだと思う。

 もちろん、ファミレスシーンを成り立たせていたのは、飛鳥役の木竜さん、ひかり役の森田さん、周役の片山さん、晴子役の伊藤さんの演技力に負うところも大きく、コントにもオフビートにも寄らない、自然体のやりとりに親近感を抱いた視聴者も多かったはず。そういったシーンの積み重ねこそが、いつしか視聴者を、4人(プラス彼女たちに関わった人たち)の“伴走者”にし、共に夢を追う気持ちにさせていった、とも言える。

 ◇適材適所のキャスティングは高校時代の4人にも

 キャスティング面でいうと、飛鳥、ひかり、周、晴子の高校時代を演じた田牧そらさん、上坂樹里さん、白倉碧空さん、山下桐里さんの起用からも丁寧なドラマ作りが感じられた。シーンによってはシームレスに過去と現代を行ったり来たりもしたが、違和感のない適材適所のキャスティングも手伝ってか、ありがちな混乱、見づらさを招くこともなかったし、妙な懐かしさも感じさせてくれた。

 余談ではあるが、ひかり役の上坂さんと周役の白倉さんは 1月期に放送され、大きな話題となったTBS系日曜劇場「御上先生」の生徒役に続く、再共演となっている。

 そして「御上先生」の生徒役からもう一人、大学で宇宙工学の研究室に所属している金澤彗を演じた奥平大兼さんの存在も忘れてはならない。孤独を好み、素人ながら人工衛星を作ろうと奮闘する飛鳥たちに最初はあきれ、時に厳しい言葉を投げかけることもあった“金澤くん”は、劇中でもっとも成長を遂げたキャラクター。ひかり亡き後、人工衛星の開発リーダーとなってからは、ひかりの思いと意志を具現化するという、重要な役割を担ったが、その内面の変化や心の揺れ具合を、ゆっくりと吐き出すようなせりふ回しで表現と、奥平さんの演技力が生きたシーンも少なくはなかった。

 何歳になっても夢を追うことは尊い、なんて道徳的な話は抜きにして、結局のところ、シンプルに「いいドラマだった」と思える普遍的な要素が数多く散りばめられていた「いつか、無重力の宙で」。だからこそ、各視聴者の心に深く刺さったのだろう。

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