旅立ちの島唄:ヒロイン・三吉彩花と母・大竹しのぶ、父・小林薫に聞く 「男親は寂しい…」

撮影:佐々木龍
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撮影:佐々木龍

 アイドルグループ「さくら学院」の元メンバーで女優の三吉彩花さんの初主演映画「旅立ちの島唄~十五の春~」(吉田康弘監督)が18日から全国で公開中だ。沖縄の離島・南大東島で暮らしてきた15歳の少女の旅立ちを描いた作品で、三吉さん演じるヒロインの両親を小林薫さんと大竹しのぶさんが演じている。3人に同作について聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

ウナギノボリ

 映画「旅立ちの島唄~十五の春~」は、沖縄本島から東へ360キロ離れた南大東島が舞台。島に高校がないことから、この島で暮らす子供たちは、15歳の春に島を出て、家族と離れて暮らさなければならない。三吉さんが演じる仲里優奈も同様で、母(大竹さん)が、兄、姉が進学するときに那覇に渡ったままということから、以来、ずっと父(小林さん)と2人暮らしだった。そんな彼女の、父を気遣う姿や、那覇での暮らしに対する不安などが、島の少女民謡グループ「ボロジノ娘」の歌とともにつづられていく。優奈もボロジノ娘のメンバーという設定で三吉さんは、沖縄の楽器・三線や民謡の練習を、撮影に入る2カ月前から始め、役作りをした。

 この映画に出演する前には、アイドルとして歌を披露していた三吉さんだが、三線には触れたことがなく、「最初は歌いながら弾くということができなかった」と話す。それでも「自分のやれることは全部やったので悔いは残っていません」と言い切るほど練習をしたかいがあり、映画では、島唄「アバヨーイ」の弾き語りを見事に披露している。その上で「歌というのは、ジャンルによって歌い方も違いますが、感動したり元気をもらったりというのは共通しています。今回も『アバヨーイ』を歌いながら、それを聴いて感動してくれる人がいたり、頑張ろうと勇気をもらえる人がいたりすると思うと、歌ってすごくいいなあと改めて感じました」としみじみと語った。

 思い入れがあるシーンを3人に聞くと、父親役の小林さんは、優奈が民謡教室で練習をしているとき、彼女の幼少期の写真を見つめる場面を挙げ、「写真を見たとき、つい三吉が3、4歳だったときの無邪気な様子や、小学校に入学したときのこと、こんなケガをしたことがあったなあ、熱を出したことがあったなあとか、そういうことが勝手に思い浮かんでね。僕も人の子なんだなあ、ジンときました(笑い)」と、三吉さんと役柄の優奈が重なってしまっていたことを明かした。

 一方、那覇で暮らしているという設定の大竹さんは、優奈の卒業コンサートの場面で、娘の髪結いと着付けを手伝うシーンについて「あそこはせりふのないシーンでしたが、娘の旅立ちを祝いたいし、それまで面倒をみてあげられていない負い目からの、ごめんねという気持ちもあるし。そうした15年間の思いを表現できたらいいなあと思っていました」と話す。

 すると小林さんは「大竹さんは、沖縄本島に行ってしまって、(夫役の)僕のもとに帰って来ない役。なのに久しぶりに島に帰って来たら、楽屋で(娘に)化粧をしたり衣装を着せたり、気軽に触れたりできる。でも男親は、そうしたいと思っても母親がするようにはできない。父親って損だなあ、寂しい存在だなあと思いましたね」と、その場面を思い出しながら、世の父親の男親ならでは孤独を代弁した。

 三吉さんが「好きなシーンはいっぱいあるんですけど」と断った上で挙げたのは、面接のシーン。そこは、「初めて優奈が人に、自分が思っていることを打ち明ける重要なシーン」であり、また、自身と重なる部分が多かったという。埼玉県出身の三吉さんは、上京の際、距離が近いこともあり、父親とは軽い別れで済ませたという。ところが、日ごろからコミュニケーションを取るなど父親と仲がよかった三吉さんは、面接のシーンで父親を心配するせりふを言いながら、「(自分の父親のことが)本当に心配になってきたんです。私は一人っ子で、一人娘が自分のところから離れていくというのは、父親にしてみるとすごく寂しいのかなと思ったり……。その意味で、親のことを考えたり、いろいろ思い出したシーンでした」としみじみと振り返った。

 この日、1年ぶりに再会したという3人。身長が伸び、171センチになったという三吉さんは「もういいです、(成長は)止まってくれて」と苦笑い。そんな三吉さんに大竹さんと小林さんは、まるで我が子の成長を喜ぶ親のように優しい笑顔を向けていた。映画は18日から全国で公開中。

 <三吉彩花さんのプロフィル>

 1996年生まれ、埼玉県出身。2010年、「ミスセブンティーン」に選ばれ、現在は雑誌「seventeen」の専属モデルとして活躍。07年、テレビドラマ「オトコの子育て」で女優デビュー。その後、映画「女の子ものがたり」(09年)、「告白」(10年)に出演。「グッモーエビアン!」(12年)で、第67回毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞を受賞した。

 <大竹しのぶさんのプロフィル>

 1957年生まれ、東京都出身。75年、「青春の門~筑豊編」のヒロイン役で映画デビュー。同年に出演したNHK連続テレビ小説「水色の時」で国民的ヒロインに。以来、数々のドラマ、映画、舞台に出演。最近の出演作「一枚のハガキ」(11年)では、第21回日本映画批評家大賞主演女優賞受賞。また11年には紫綬褒章を受章した。

 <小林薫さんのプロフィル>

 1951年生まれ、京都府出身。71~80年まで唐十郎さん主宰の劇団「状況劇場」に所属。退団後、映画、ドラマ、舞台などで活躍。「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(07年)での日本アカデミー賞最優秀助演男優賞など受賞歴多数。最近の出演作にNHK連続テレビ小説「カーネーション」(11年)、「深夜食堂」(09年、11年)、映画「舟を編む」(13年)などがある。

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