六つの時代と六つの場所で、それぞれの人生を生きる人々が、一見無関係のようでいて、実は密接にかかわり合っている……英国の作家デビッド・ミッチェルさんの小説を映像化した「クラウド アトラス」(ラナ&アンディ・ウォシャウスキー姉弟監督、トム・ティクバ監督)のブルーレイディスク(BD)&DVDセットが発売中だ。医者、ホテルの支配人、映画俳優、作家などエピソードごとに異なる六つの役柄を演じたトム・ハンクスさん、同じく六つの異なる役柄を演じたハル・ベリーさんに話を聞いた。(毎日新聞デジタル)
ウナギノボリ
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−−この映画は数々の時代や土地を行き来する素晴らしい冒険物語ですが、時代をまたぐ設定は演じていていかがでしたか?
ハンクスさん: 何もかもが新しいアドベンチャーだったよ。事前にいろいろ聞かされていたので覚悟はできていた。脚本を読み始めたのも製作に入る数年前だったし、撮影に入っても、前夜には翌日の撮影内容も聞かされていた。それでも、職人たちにメークしてもらうと、それぞれのキャラクターに没頭し、それぞれに冒険できた。体力の要する仕事だったが、毎日がワクワクするような挑戦に満ちていた。
ベリーさん:タイムトラベルができました。未来へ飛び、過去へ飛び、また未来へ飛び、そして遠い未来へ飛ぶことができた。私は1970年代を舞台にしたストーリーに出ていて、あの時代は自分の大きな一部でもあるのだけれど、ルイサ・レイというキャラクターを通して見るとまったく違った見方ができる。だから楽しかったです。
−−役になりきるのが俳優業や女優業の醍醐味(だいごみ)なのでしょうが、今回はそうするのに打ってつけの作品でしたね。メークだけでなく、シチュエーションや言語や時代もさまざまで、見事な変身ぶりを見せてくれましたが、満足感はありましたか?
ハンクスさん:(メークや衣装は)身のこなしが変わるので、とても面白いね。衣装を着るだけで立ち方が変わるので、自然とその役の中に入ることができる。マウスピースを口に入れたりすれば話し方も変わるしね。役に身を委ねることができる。それが役者の醍醐味であり、それを仕事にできるのはとても幸運なことだ。1日、あるいは3、4日かけて特定のシーンを撮影し、役に没頭できる素晴らしさは全く否定のしようがない。1日が信じられないくらいあっという間に終わるんだ。
−−私たちの姿勢や行動がのちにどのような影響を及ぼすのかという問いかけをする作品ですね。
ベリーさん:私は輪廻転生(りんねてんしょう)を信じます。ずいぶん長いこと考えてきた問題だけれど、死んでしまえばおしまい、体は土に返る、それ以外は何も残らないというのはどうしても受け入れられないんです。私たちの魂は体から体へ移るものであり、最高の域へ昇華するべく、何度でも形を変えて帰ってくるものだと信じています。その最高の域が何かは分からないけれど……。この映画はそういう考え方を提案しているのだと思う。
ハンクスさん:素晴らしいせりふがある……何も高尚なものを信じる必要なはないのだと。人生は扉であり、その扉がまた新たな扉を開け、その新たな扉がまた新たな扉を開ける。皆がつながっているということを深く伝える言い方だと思う。神学的背景、宗教的背景は人それぞれだが、これだけは否定しようのない事実だと思う。人類の歴史は先祖とのつながりによって、そして数百年先に生まれる子孫たちとのつながりによってできている。
−−ウォシャウスキー姉弟監督は原作とは大分違うアプローチを取っています。映画は映画で成り立っていて、原作を読まなくても楽しめますね。そのことについてどう思いますか?
ハンクスさん:そうだね、私もそう思う。
ベリーさん:私は撮影後に初めて原作を読みました。あえてそうしたの。ある日、ラナ(ウォシャウスキー監督)に原作を読んでいないことを明かし、読むべきかどうか聞いてみたのだけど、「いや、今は脚本を読んで。まずは脚本を理解すること。原作はいつか読めばいい」と言ってくれ、その通りにしました。原作に描かれたさまざまな描写を知らずに脚本だけを頼りにしたけれど、取り組むには十分な材料だったわ。
ハンクスさん:脚本そのものがとても濃密だった。原作を参考にしなくてはいけないようなものではなかった。答えはすべて脚本にあったんだ。
*……ブルーレイディスク(BD)&DVD(ともに初回限定生産)▽BD(本編172分+特典54分)、DVD(本編172分+特典7分)、各3980円、発売元・販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
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