1997年に36歳で亡くなったダイアナ元英国皇太子妃にナオミ・ワッツさんがふんした映画「ダイアナ」(オリバー・ヒルシュビーゲル監督)が全国で公開中だ。その美貌や社会貢献活動などで世界中の人々を魅了し、そのかたわら、パパラッチに追いかけられたり、クルーザー上での男性とのバカンスをすっぱ抜かれたりと世間を騒がせたダイアナ元妃。このバカンスの写真には実は“裏”があったのだが、そういったエピソードも含め、今作ではダイアナ元妃がチャールズ皇太子との別居生活を余儀なくされ、その後に離婚。愛する人に出会い、あの“運命の日”を迎えるまでが描かれている。
ウナギノボリ
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興味深い作品だった。しかし、なぜ今、公開なのかという思いは拭えない。ウィリアム王子の結婚とその息子ジョージ王子の誕生などで英国王室が今、世間から注目されているのは分かる。それにしても、だ。また、ダイアナ元妃にまつわる知られざる一面、スキャンダラスな出来事の裏側が見られるとばかり思っていたら、そのやじ馬根性もあっさり否定され、英国王室の人たちがほとんど姿を見せない作品への物足りなさも否めない。
映画に映るダイアナ元妃は、どれも私たちが彼女の生前、テレビや新聞、ゴシップ誌で見かけた写真や映像に忠実に描かれている。洋服や身のこなし、パパラッチに追いかけられる姿……ほとんどが見たことがある場面で、それをワッツさんがうり二つに演じていることには感心する。半面、ダイアナ元妃にまつわる思い出を、当たり障りのない形で描いたに過ぎないという印象が強い。
しかしそこにヒルシュビーゲル監督の、あくまでも客観的にダイアナという一人の女性を描くという固い意志がうかがえる。ダイアナ元妃の写真や、彼女の個人的な手紙に目を通し、そこから得た事実だけを見せることで、観客に余分な揺さぶりをかけない。ダイアナ元妃の生き方の善しあしは観客それぞれが判断すればいい。自分はあくまでもダイアナという女性、“戦士でもあった”ダイアナ元妃を事実に即して描くのみ。監督のそんな職人気質が伝わってくるのだ。これまで「英国王のスピーチ」や「クイーン」といった映画があった。それらの作品と併せて見ることで、英国王室を俯瞰(ふかん)でとらえるという楽しみ方もできる。18日からTOHOシネマズ有楽座(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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