関根勤:初監督作「騒音」語る 日本アカデミー賞で「帰って参りましたとあいさつしたい」

初監督作「騒音」について語った関根勤監督
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初監督作「騒音」について語った関根勤監督

 タレントの関根勤さんが映画監督に初挑戦した映画「騒音」が公開中だ。今作は、関根さんが2013年に還暦と芸能活動40年を迎えたことを記念し、CSの映画チャンネル「チャンネルNECO」の番組「映画ちゃん」で始動した企画で、俳優の温水洋一さん、村松利史さん、酒井敏也さんらが主演を務め、謎の地底人から街を守るべく、日本のオヤジ”が立ち向かう姿が描かれる。関根監督に初監督した感想などについて聞いた。

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 ◇見る側から作る側になり心境に変化

 初めて映画監督に挑戦し、「最初は本当にプレッシャーで逃げ出したくなった」という関根監督だが、「こんなに楽しいことが60歳を過ぎてあったんだというぐらい、みんなでニコニコ笑いながら夢のような日々だった」と笑顔で振り返る。「監督業というのはこんなに大変なんだということが分かった」と打ち明け、「映画の現場には演者として行ったことはあるのですが、作る側に回ったことがなかったので、一つの作品を撮るのは大変なんだなと思った」と神妙な顔で語る。

 プレッシャーを感じた理由について「今までは観客として作品や演者の皆さんを見ていたからプレッシャーもなかったし、客として面白いなとか楽しんでいればよかった」と切り出し、「今回は僕が監督して世に送り出すということで、ものすごい責任がある」と神妙な面持ちで語る。その結果、「レントゲンで内蔵を見るぐらい集中して演者さんを見ていたら、プロの役者さんのすごさが以前よりも分かった」と再認識したという。

 ◇番組での気軽なトークから企画が始動

 映画の製作はCS番組「映画ちゃん」の企画がきっかけでスタート。そのときには「映画を撮るとは思っていなかった」という関根監督は、「最終的には撮れなかったというオチで終わると思っていたから、気軽にコメディーをやろうとか、SFアクションだなと適当なことを言っていた」と笑う。地底人が登場することになった経緯も、同番組内のトークで「撮れるとしても低予算だから、宇宙人だとコスチュームのデッサンなどにお金がかかるから、地底人だったら穴から出てくれるだけでいいから、それでいこうと(笑い)」と理由を打ち明ける。

 日本のオヤジたちがヒーローとなる設定について、「僕が撮るならカッコいい人たちじゃないコメディーがいいと思っていた」と話すも、「オヤジのこととお笑いのことばかり考えて作っていたらヒロインを入れるのを忘れちゃいました(笑い)」と笑顔で打ち明ける。主演以外のキャスティングも「こんな映画ですから、どこからも『この人使え』というような圧力も一切なかった」といい、温水さん、村松さん、酒井さんという3人のキャスティングは「10年ぐらい前からいいなと思っていた」と関根監督。「あの3人のそろい踏みは初めてで、(キャラクターが)かぶるかなと思ったらかぶらず、明らかに違う役割で活躍してくれている」と満足げな表情を浮かべる。

 ◇大御所出演の裏側を明かす

 今作にはタモリさんや明石家さんまさん、お笑いコンビ「キャイ~ン」「ずん」など関根監督に縁のある顔ぶれが数多く出演している。「タモリさんとさんまさんにはぜひ出てほしい」と考えた関根監督は、2人に直談判。「さんまさんに『温水さんと酒井さん、村松さんに(ずんの)飯尾(和樹)くんと(岩井)ジョニ男が入って地底人と戦う』と映画の内容を説明したら、『豪華やな。でも若い女の子には響かんな』と(言われた)」という。そして「普通は事務所から話が行くと思うのですが、さんまさんがオーケーしてくれて、その場でマネジャーさんにスケジュール調整を頼んでくれました」と出演決定の裏側を明かす。

 当時、「笑っていいとも!」に出演していたタモリさんにも、「迷惑にならないように、『いいとも!』が終わって1時間だけください。タモリさんの楽屋で撮りますから」とお願いした。「タモリさんとさんまさんが共演するのは、『大霊界2(死んだらおどろいた!!)』以来。だから僕はキャスティング力で丹波哲郎さんに並んだということ(笑い)」と胸を張り、「僕が好きな人だけを集めて好きなように作った“自主映画”みたいなもの」と言ってほほ笑む。

 ◇監督してのこだわりを披露

 今作の構成を「コメディーを支える屋台骨としてSFとアクションが土台にある形でやりたい」と決めていた関根監督だが、演出に関しては「皆さんめちゃくちゃうまいので、俳優さんには演出を一切していない」と明かす。「テストをしたら、僕の想像より、みんな面白い(笑い)」とうならされたが、オヤジたちが地底人と戦うために特訓を受けるシーンでは「訓練をする女性教官に、オヤジたちのしごき方を演出した」とこだわりを見せたという。

 キャストの演技力の高さと面白さに「ほとんどワンテークでオーケーだった」といい、撮るスピードの速さから「和製クリント・イーストウッドといわれる」と冗談めかす。演者への演出は抑えめだが、「カメラアングルの演出のほうが多かった」と言い、監督としてのこだわりをかいま見せる。

 完成度は、「うまい役者さんと喜劇人がコラボすると、化学反応を起こして素晴らしい喜劇になる」という持論を持つ関根監督は、「例えて言うなら、役者さんが牛だとしたら芸人は豚。つまり合い挽きのハンバーグになる。これはもう絶妙で、今回はそれがやりたかった」と言い、「お互いが織りなすハーモニーが素晴らしく、それがこの『騒音』の魅力の一つだと思う」と自信たっぷりだ。

 ◇“関根勤監督映画祭”を開催したい

 映画の反響を「面白かったと言ってもらえたとしても、それが10年とか15年ぐらい先に言われるのは寂しい。なんらかの批評は(すぐに)聞きたい」といい、「(作風が)合う合わないはあるから批判などは覚悟しているし、批判はまだ見てくれているのだからありがたい」と神妙な面持ちで語る。自ら今作を「コメディーでぜいたくなB級映画という感じ」と評すが、「非日常の世界に行けますので、時間を忘れて楽しんでいただけたらと思います」とアピールする。

 司会を務めたことがある日本アカデミー賞に「映画で帰りたい」と野望を明かし、「西田敏行さんに『話題賞です』と紹介され、『どうも帰って参りました』とあいさつしたい」と野望を明かし、ほほ笑む。さらに「1本だけでは“関根映画祭”ができないから、最低でもまず3本は撮りたい」と切り出し、「そうすると海外で3本上映の“関根勤監督映画祭”とか銘打たれて、ゲストで行って、向こうのファンが『僕は2作目がいいんです』『やっぱり1作目があったから』とか、熱く語っているのを聞きたいというのが最後の妄想」と思いをはせた。映画は全国で公開中。

 <プロフィル>

 1953年8月21日生まれ、東京都出身。74年に「ぎんざNOW」(TBS系)の「素人コメディアン道場」で初代チャンピオンとなり、スカウトされ芸能界入り。テレビやラジオ、CMなどのほか、舞台「カンコンキンシアター」の座長を務めるなど幅広く活躍している。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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