渡部秀:武田梨奈と「進撃の巨人」を語る「複雑な心境とリンクしてもらえれば成功」

dTVのオリジナルドラマ「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN  反撃の狼煙」に出演している渡部秀さん(右)と武田梨奈さん
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dTVのオリジナルドラマ「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN  反撃の狼煙」に出演している渡部秀さん(右)と武田梨奈さん

 俳優の渡部秀さんと女優の武田梨奈さんが出演するオリジナルドラマ「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 反撃の狼煙」が動画配信サービス「dTV」が15日から配信中だ。諫山創さんの人気マンガを実写化した映画「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」(樋口真嗣監督)と連動した同ドラマでは、映画では描き切れなかったエピソードを全3話で描いている。石原さとみさんや桜庭ななみさんら映画版キャストのほか、平岡祐太さんがドラマオリジナルの新キャラクターを演じている。映画とドラマの第3話「自由への旅立ち」でフクシを演じる渡部さんと、リルを演じる武田さんに話を聞いた。

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 ◇独特なアクションの動きに試行錯誤

 特撮ドラマ「仮面ライダーオーズ/OOO」で主演を務めた渡部さんと、数多くのアクション作品に出演している武田さんというアクションのイメージがある2人。「今回は、いつもやっているようなアクションとは全然違ったので難しかった」と話す武田さんは、「体の使い方から何まで違い、武器を持ったりワイヤもあったので一から始めた感じ」と振り返る。「松明(たいまつ)やムチを使ったり、あとは両手に刀を持ったりと変則的な動きが多かった」と渡部さんが理由を説明し、「殺陣は習っていましたが、両手となると腰の入れ方が全然違う。基礎から初めて、そこに動きの順番をつけて、さらに感情を乗せました」とアクション練習の一端を明かす。

 撮影中は「最初の骨組みは作ってもらったのですが、細かいところは2人で決めました」と渡部さんはいい、「感情のずれがあったり流動的でなくなってしまったりしたら違う動きで試させてもらったりなど、アクション部さん含め一緒に相談をして作り上げました」とアクション完成までの道のりを語る。

 「進撃の巨人」のアクションといえば、立体機動装置を使ったアクションも見逃せない。「原作では飛び方がすごく特徴的だったので再現するのは難しかった」と武田さんは心境を打ち明けると、渡部さんは「ワイヤアクションは好きな方なので、意外に立体機動装置は好き」と対照的な発言をする。渡部さんは続けて「(仮面)ライダーでもワイヤアクションは何度かやっていましたが、ライダーは実際にはワイヤというものの概念がないように見せるアクションなのに対し、今回はワイヤありきのアクション」と解説する。

 さらに「実際にワイヤを出しているから引っ張られるという演技でいいのですが、本当の力で引くわけにはいかないので、そこにリアクションを自分でオーバーめにつけたりとかいうところが、今回はいつもとは変わっていました」と独特なアクションの動きを語った。

 ◇出演にあたり覚悟を決める

 原作含め「進撃の巨人」の魅力について、「マンガの世界もここまできたかと」と実感を込めて話す渡部さんは「くくりとして合っているか分かりませんが、僕の中では“ダークファンタジー”や“if世界”というイメージで、人類がちょっと変な方向に進んだらああいう未来も考えられるなと想像しながら見ていました」と原作に対する独自解釈を披露する。聞いていた武田さんも「原作とアニメを見させていただいたのですが世界観がすごく独特」と同調する。

 今作の実写版出演にあたり、「『進撃の巨人』にかかわらず、マンガ原作の作品はいろんな難しさがあると思うし、原作の世界観を大事にするのかオリジナルのものを作り上げていくのかという部分もある」と渡部さんは切り出し、「特に『進撃の巨人』という設定が複雑で、意外に分かりやすいものを描いているように見せかけて実は人間同士の戦いだったりを描くという難しさがある中で実写化され、自分が携わることになりいろいろと覚悟しました」と強い決意を抱いたという。そして「生かすも殺すも自分たち次第だから、作り込む段階ではみんな考えたと思う」と振り返る。

 一方、武田さんは、「オリジナルキャラクターだったので、自分たちで作っていけるという自由さもある分、もともといるキャラクターを演じる人たちほどのプレッシャーはないかなと思った」と話すも実際は、「公開が近づくにつれて、原作の世界観やイメージを崩してしまうのではというプレッシャーも出てきました」と告白。しかし「作品自体はバランスよく全体的に面白いものになったので、今はもう自信たっぷりでいろんな方に見ていただきたいという気持ちです」と完成作に胸をはる。

 ◇ドラマと映画で補完し合うフクシとリルの物語

 渡部さん演じるフクシと武田さん演じるリルは、映画では恋人同士として描かれている。「確固たる思いとして2人の愛というものがまずある」と切り出した渡部さんは、「dTVで描かれることになりましたが、当初はなぜこんな時代に2人でラブラブしているのかというところについて、ペラペラに見えてしまわないよう下地をしっかりと作って挑まなければと思った」と役作りのベースとなった心情を明かす。続けて「ただのチャラチャラした2人ではないというのは作る前から分かっていたので、そこに自分たちがいろいろと考えた設定を持ち寄って撮りました」と渡部さんは語り、「細かい設定をいただいたdTVでは過去を逆算して作っていき、(映画とドラマが)うまくつながった」と自信を見せる。

 映画とドラマのストーリーが調和していることに笑顔で同意した武田さんは、「役に対して相談するのは普段は監督にすることが多い」と前置きし、「フクシとリルは画面にいるときは常に2人で1人なので、温度差やバランスなどは1人で作れるものではなく、話し合いをさせていただきました」といい、「リルという役を一緒に作ってくださった」と渡部さんに感謝する。さらに「映画でもドラマでリルはもいきなり豹変したりしますが、本能で生きているというか、あまり考えていないのか、思ったままに動いてしまう」と分析。そして、「まっすぐですけど変わった部分を持っていて、そこをフクシが包み込んでくれる。フクシとリルは互いにない部分を補い合っているのでは」とフクシとリルの関係性を語る。

 お互いが演じる役をどう感じるかと聞くと、「なかなかいないとは思いますがリルがもし実際にいたら、自分の思いはあるけれどうまく伝えられなかったり、素直になれない分、力で語ってしまうという不器用さみたいなものは、男性からしたらすごく可愛いなとは思う」と渡部さん。そして「ピュアだしストレートでうそがないから、見ていて変にいろいろ考えなくていいというか安心する」と人物像を評する。

 一方、武田さんは「折れないというところが、すごくカッコいい人」といい、「あんなにリルに拒否されているのに、それでも『俺は君を守る』というハートの強さを持っている人はなかなかいないと思うので、すごくまっすぐですてきな男性だなと思うし、そういう男性が好きです」と言ってほほ笑む。

 2人が初めてはまったポップカルチャーは、渡部さんは「『スタンド・バイ・ミー』はすごくワクワクしたし、『グーニーズ』やマンガでいったら『ワンピース』とか少年冒険談みたく、自分が主人公に置き換わって見られるもののは昔から好き」と語った。その発言を聞いていた武田さんは「まねされた!」と笑いながら声を上げ、「『グーニーズ』がすごく好きで、保育園のときにビデオテープがすり切れるぐらい見ていました」と意外な共通点があることが明らかになった。続けて「そこから映画の世界にはまって、小学生になって映画の世界に入りたくてオーディションを受けるようになりました」と語る。

 ◇フクシとリルの成長に注目してほしい

 ドラマではコミカルなシーンもあるが、「基本的にはすごく楽しくて笑えればいいと思うし、根底には信念があるということだけはうまく伝えようとした」と渡部さん。続けて、「表面でさらっと見るのであれば、コミカルなアクションをやっている作品として見てもらってもうれしい。映画を見たときにふとそれを思い返してくれて、『あんなあっけらかんとしていたけど、こんな複雑な心境があったんだな』というのをリンクしてもらえれば、僕らとしては成功かなと」と持論を展開する。

 ドラマの終盤では、武田さんが頭突きを披露したテレビCMを彷彿(ほうふつ)とさせるシーンも登場。武田さんが「台本には書いてなかった」と打ち明けると、渡部さんも「完全にサービスカットです」と笑顔を見せる。現場で演出が変更されることが多々あったといい、「いろんな無茶ぶりが現場でありました」と武田さんは笑う。

 実写版「進撃の巨人」の見どころを、武田さんは「映画もドラマも原作の世界観を大切にしつつ、オリジナリティーも入っていて、新しいエンターテインメントが含まれている作品」、渡部さんは「アクションだけではなく内面にフォーカスを当てていて、原作ファンもそうですが、今回初めて『進撃の巨人』を見る方も楽しめる作品」と表現する。

 それぞれの演じた役の注目ポイントについては、「私たちがやっている第3話はアクションがかなり多く、コミカルさだったり、皆さんが想像している以上にいろんなものが詰め込まれていたりして、新しい『進撃の巨人』が見られると思うので、ぜひ楽しんでほしい」と武田さん。「ドラマはコミカルな描き方もしつつ、映画につながる重要なキーワードやシーンがたくさんあるので、映画と合わせて見てほしい」と語る渡部さんは、「フクシは最初は弱く描かれていますが、実はそうではなくて強い信念を持ったキャラクター。逆にリルが強そうに見えて実は心が弱かったりとか、そういう真逆だからこそ補い合える何かがあると思う。2人の成長も含め、dTVと映画でそこを注目していただけたらと思います」とアピールした。オリジナルドラマは全3話がdTVで配信中。


 <渡部秀さんのプロフィル>

 1991年10月26日生まれ、秋田県出身。2008年に第21回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを受賞しデビュー。特撮ドラマ「仮面ライダーオーズ/OOO」(テレビ朝日系)で連続ドラマ初主演を飾り、劇場版「仮面ライダー×仮面ライダー オーズ&ダブル feat.スカル MOVIE大戦CORE」で映画初主演を務める。12年には「里見八犬伝」で舞台に初出演、15年には「GO WEST」で舞台初主演を果たす。主な出演作に「PIECE ~記憶の欠片~」(12年)、「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」(15年)、ドラマ「ラスト・ドクター~監察医アキタの検死報告~」(テレビ東京系)など。

 <武田梨奈さんのプロフィル>

 1991年6月15日生まれ、神奈川県出身。2009年に映画「ハイキック・ガール!」で本格デビュー。空手歴13年の経験を生かしてアクション作品を中心に出演し、14年には頭突きで瓦を割るクレディセゾンのテレビCMで話題を集める。主な出演作に「ヌイグルマーZ」(14年)、「少女は異世界で戦った」(14年)、「ライアの祈り」(15年)など。15年には出演している映画「木屋町DARUMA」、16年には主演映画「かぐらめ」の公開を控える。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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