小説家の冲方丁さんが11日、東京都内で行われたイベント「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT the AWARD」に、テレビアニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)」シリーズなどで知られる神山健治監督とともに登場。トークイベントで神山監督が、劇中に登場する義体化(サイボーグ化)や電脳化にひもづけ、今後の現実社会の中でも「スキルがアプリ化される可能性はあるのかな」と切り出すと、冲方さんは「才能がダウンロードできる、いいですね」と笑顔で答え、会場を沸かせた。
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トークイベントは「攻殻シンポジウム」と題して行われ、ロボット研究やインターネットセキュリティーの専門家も参加。「義体・ロボット」「電脳と人工知能」「サイバー攻撃とインターネットセキュリティー」をテーマに議論され、リアルタイムでのサイバー攻撃の可視化など最新テクノロジーや、劇中の主人公・草薙素子をモデルにした、女性にターゲットを絞ったインターネットセキュリティーの人材育成「草薙素子育成計画」も紹介された。
AI(人口知能)がコントロールする社会でサイバー攻撃で起こりうることとして「フードテロ」の話が出ると、冲方さんは「僕もフードテロの世界を『攻殻』でやろうと思ったんですけど、あまりにも課題がたくさんあって、シャレにならない部分もあって、エンターテインメントとして不適切だろうって話になった」と語った。さらに「流通を操作するだけで一つの国を終わらせるだけの攻撃が可能になってしまうんですよね。一方で攻撃の定義がたくさんありすぎて、一般人にはよく分からない。データを読み取られることが攻撃なのか、データを差し込まれることが攻撃なのか。攻撃の定義を全員が共有しないと、世界全体がブラックボックスになってしまうな感じがしている」と危機感を募らせていた。
また神山監督が「草薙素子育成計画」に参加している女性たちに囲まれている写真が紹介されると、冲方さんが「草薙素子候補生に囲まれていましたが大丈夫ですか? 携帯とか“侵入”されてたり」と、神山監督に確認する一幕もあり、司会者が「LINEの画面とか……」と冲方さんの発言に乗っかると、神山監督も「そうですね、今朝、僕のメールが全部消えてしまっていて。もしかしたら……」と冗談まじりに明かし、笑いを誘っていた。
「攻殻機動隊」は、近未来の電脳化社会を舞台に架空の公安組織の活躍を描いた作品。士郎正宗さんの原作マンガは1989年に発表され、25年以上にわたって展開されている。押井守監督が手がけた劇場版アニメ「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」(95年公開)、「イノセンス」(04年公開)に加え、「攻殻機動隊 S.A.C.」シリーズ、「攻殻機動隊 ARISE」シリーズも製作された。
「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」は、日本を代表する企業、大学の研究開発者、公共機関、製作委員会が一体となり、「攻殻機動隊」に描かれている数々の近未来テクノロジーの実現を追究するプロジェクト。この日は「電脳」「義体」など作中の近未来テクノロジーを具現化した11作品を展示し、講演も行われた。
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