米国の第88回アカデミー賞で、アダム・マッケイ監督とチャールズ・ランドルフさんが脚色賞に輝いた「マネー・ショート 華麗なる大逆転」が4日に公開される。2008年に起きたリーマン・ショックとそれに続く経済破綻。それに、誰よりも早く気付いた男たちが、ウォール街を相手に、一世一代の大勝負に打って出る姿を描く。今作は、映画「マネーボール」(2011年)の原作者としても知られるマイケル・ルイスさんによる著書「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」に基づいている。「マネーボール」に引き続きプロデューサーを務めるブラッド・ピットさんをはじめ、クリスチャン・ベールさん、スティーブ・カレルさん、ライアン・ゴズリングさんが、型破りの金融マンに扮(ふん)している。
ウナギノボリ
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2005年、金融トレーダーのマイケル(ベールさん)は、あるとき、返済の見込みの薄い住宅ローンを含む金融商品(サブプライムローン)が、数年以内に債務不履行に陥る可能性があることに気づく。彼は、サブプライムローンの価値が暴落したときに巨額の保険金を手にできるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という契約を投資銀行と結ぶ。同じ頃、銀行家ジャレッド(ゴズリングさん)は、マイケルの動きを察知し、ヘッジファンドマネジャーのマーク(カレルさん)にCDSの購入を勧める。一方、ウォール街参入を狙う若き投資家、チャーリー(ジョン・マガロさん)とジェイミー(フィン・ウィットロックさん)は、勝負を仕掛けるにあたり、元銀行マンのベン(ピットさん)に相談を持ち掛ける……という展開。
面白かった。だが、すっきりしない。「華麗なる大逆転」というサブタイトルがつき、強欲なウォール街に勝負を仕掛ける男たちに焦点が当たっているにもかかわらず、爽快感がない。なぜか。それは、筆者が経済に疎いということもあるが、それ以上に、勝負を仕掛ける彼らは庶民の味方であり、彼らがもうかることはイコール、貧乏な人を一層貧乏にし、金持ちを一層潤すことにほかならないからだ。彼らの視点で描かれた今作は、強欲な人間を笑ってみせつつも悲壮感にあふれ、それが“すっきりしない”という感想に結び付いているのだ。
半面、難しくなりがちな経済ネタを扱いながら、映画としての娯楽性は追求されている。一発逆転を狙う4人の金融マン=アウトローを演じる俳優たちの顔ぶれを見ればそれは明らかで、また、展開もスピーディーだ。お陰で、ウォール街VSアウトローの勝負の行方を見極めようと、終始神経は張りつめっ放しになった。小難しい経済用語も、女優のマーゴット・ロビーさんやセレーナ・ゴメスさんが登場し、かみ砕いて説明してくれる。それでもやっぱり「?」なところはあるわけで、それを食い止め、皮肉と教訓に満ちた今作を存分に楽しむためにも、「ショート(空売り)」「CDS」「CDO」「モーゲージ債」といった用語は予習しておくことをお勧めする。4日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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