青木志貴の魔王式随想:ボクの特殊?な友人観

青木志貴さん(左)と山崎はるかさん
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青木志貴さん(左)と山崎はるかさん

 人気ゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ」の二宮飛鳥役などで知られる新人声優の青木志貴さん。自身を「ボク」と呼ぶ“ボクっ娘”で、“魔王”のニックネームで「League of Legends」などのオンラインゲームをがっつりやり込むコアゲーマーという異色の経歴も併せ持つ青木さんが、その独自の視点で自身の歩みやさまざまな思いを語ります。

ウナギノボリ

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 すっかり寒くなって、もう冬がくるんだなーとしみじみ。皆さんは冬支度、できてますか? ボクはこれといって何もしていないのですが、冬用のパジャマに変えて、寝るときは猫たちが布団にもぐりこんでくると、ああ、もうすぐ冬だな~と実感します(笑い)。 真冬はとくに湯たんぽの変わりになる猫たち。布団の中がいつもぬくぬく快適で、いまのところ暖房なしでなんとかやっています。猫のいる冬の生活、最高です。

 さて今回ボクがお話するのは「友達」について。以前も友達についてお話したことがあったのですが、実は一応、今年の目標は「友達をつくること」だったんですよ(笑い)。 そして今現在、友達が出来たかというと……、頻繁に連絡をとりあうほどではないですが、去年と比べてプライベートでご飯へいったり、どこかへ遊びに行ったりする機会がめちゃくちゃ増えました!!

 やはり友達を作る、コミュ障を克服するというのは、少しの意識でも変えられるものなんだなあと思ったり。まあでもまだまだ、友達と呼んでいいのかわからないくらいなので、今年ご縁があって遊んだりしてくださった皆様とはさらに親睦を深められたらいいなあと思ったり。ほんの少しですが、自分的には大きな進歩だったりするので、今年の目標は達成した!ということで、前向きにいきたいと思います(笑い)

 しかしながら今回は「友達」と言っても、ただの「友達」ではありません。今回は「親友」という存在について。みなさん、親友っていらっしゃいますか?

 ボク、とにかくこの「親友」って存在に憧れがあるんですよね。親友ってどんなものか、親友の定義はなにか。それは人それぞれだと思うのですが、ボクにとって親友はとにかく憧れが強くて理想が高い存在です。

 みなさんの中で、人との関係性について多少なりとも優先順位というものがあると思うんです。例えば家族だったり、恋人だったり……。“普通”という基準がわからないのでなんともいえないのですが、ボクの周りにいる人たちは基本的に「友人よりも恋人優先」という方が多かったです。

 でもボクは違うんですよね。ボクの中では、家族(ゆん、どらごん)=友人(というか親友?)>>>>>>>恋人。

 これを話すと、周りからは「それは恋人がいないからだよ」とか、「本当に好きな人に出会ったことがないからだよ」って言われてしまうのですが……。ボクはそうじゃない気がするんですよね。話していて、ああ、それは一理あるかもしれない、とも思ったりもするのですが。

 恋人って「一時的な存在」ってイメージが強いんです。恋人というより、「恋愛感情」に対してかもしれません。恋愛って、いつか終わりがくるものっていうのがボクの中の認識なんです。

 結婚したら終わりがない?でも離婚する人もいるよなあって。結局愛情って、何がきっかけで薄れてしまうか、消えてしまうかわからないし、ボクがまだ精神的に子供なだけかもしれませんが、薄っぺらく感じてしまうんです。

 愛情がいつ消えてしまうかわからない、薄れてしまうかわからないなんて友人関係でも同じことが言えるんじゃないかって思う方もいると思います。その通りです。なにがきっかけで友情が壊れてしまうか、消えてしまうかわからない。だからこそボクが憧れ、何よりも欲しいと思っている存在が「親友」。何があっても薄れたり消えてしまうことのない友情に魅力を感じ、憧れているのです。

 恋愛では付き合っている人がいたとしても、もしかしたらいつか運命的な出会いや一目ぼれでその愛が他人へ移ろいでしまうかもしれない。お金や権力で揺らいだり壊れてしまう愛もあるかもしれない。そういった不確かな「愛情」というもの、関係性に今のところみじんも魅力を感じないボク。


多分ボクは「親友」という存在を神格化しすぎてる部分もあると思っています。親友だって人間だから、信じられない部分はあると思うんです。この世に絶対なんてないからこそ、親友だけは絶対に裏切らないとか、親友だけは絶対に一緒にいてくれるとか。そんなのはあり得ないだろうなあとも思っているのですが…。

 どんなにケンカしても、どんなに傷つけあっても、また次の日は「アホなことしたなー」って笑いあったり、なんでも本音で話し合えたり。どんなに自分の汚い部分を知っても、離れずに一緒にいてくれる。悪いことをしたらちゃんとしかってくれる。素の自分で居られる唯一の居場所みたいな人。いつかそんな人にめぐり会えるのではないかと期待している自分もいるんです。ずっと小さいころから。

 「それって一般的に見て恋人でいいんじゃないの?恋人ならそんな感じじゃないの?」って思う方もいるかもしれませんが、この関係に「恋愛感情」という邪(よこしま)な(ボクの勝手なイメージですが)感情はいらないんですよね。

 恋愛感情が交ざってきてしまうと、余計な感情まで絶対に交ざってくるんです。人間って。さっき言ったみたいに、くだらないことがきっかけで崩れてしまう可能性もあるような気がして。だから恋人じゃなくて親友が良い。

 これはボクがマンガやゲームが好きだからなおさらなのかもしれませんが、マンガやゲームって、どんなことがあっても絶対に裏切らず、自分を投げ打ってでも誰かのために戦ったり、誰かのために行動するじゃないですか。自分を犠牲にしても主人公を助けるキャラクターがいたり、どんな窮地に陥っても見捨てることなく共に戦ったり……。そんなマンガやゲームをたくさん見てきたからこその憧れなのかもしれません。いわゆる「相棒」的な存在ですよね。きっと。それらに影響されているから、ボクのこの「親友」への憧れもファンタジーであることは理解しています。

 そしてまた、これもボクの特殊な考えのひとつなのかもしれませんが、ボク、恋人に嫉妬心や独占欲は抱かないけど、友人関係に対しては嫉妬したりしてしまうんです。

 例えば、昔すごく仲の良い友人がいたんです。ボクは直接言ったことはないけど親友みたいなものだと思ってたし、向こうもそう思ってくれてるだろうと謎の自信がありまして(笑い)。とにかく仲が良かったのですが、その友人がボク以外の人と遊びに行ったりしているのを見ると、とにかくもやもやイライラしてしまいました。

 「自分にはアイツしかいないけど、アイツにはボク以外のたくさんの友人がいる。ボクじゃなくてもいいんだ」って思ってしまって、とても寂しかったんです。それと同時に自分の「友人」へ対する特殊な執着心とか独占欲みたいなものに気づいてしまいまして…(笑い)。

 これはぶっちゃけ今も変わってなくて、変わりたいとは思っているのですがどうにも変えられないんです。まあでも、人として当たり前なんですよね。自分以外にもたくさんの友人がいるって。それでもそこに嫉妬してしまうんです。

 ボクはあまり友人が多くないからなおさらかもしれませんが、自分が特別だと思っている友人が、自分以外の誰かと楽しそうにしているのを見ると、「ああ、ボクじゃなくてもいいんだ」って思ってしまう。(とても狭い心!!) 友人が自分以外の人の輪に入っているのを見ると、とてつもない疎外感と孤独感を感じてしまう。

 「自分にはお前しかいないのに、お前はボクじゃなくていいんだ」って思ってしまうと、もうだめなんです。めんどくさい性格でしょ(笑い)。だからかもしれないです。「親友」とか「相棒」という存在に憧れてしまうのは。

 言ってしまえば特別仲の良い友達ってだけなのに、親友って響きに代わるだけで特別な何かを感じませんか? これはもしかしたらただ親友や相棒という「肩書き」を欲しがっているだけなのかもしれませんが、それでもボクはその肩書きが欲しくて、その肩書きに助けられるんです。「親友」と堂々と呼べるだけで、相手が誰と話してても、楽しそうにしてても許せるような気がするんです。「あいつはいろんな人と楽しそうにしてるけど、あいつの親友はボクだけ」この特別感に安心感を抱くのかもしれません。考えれば考えるほど自分の狭い心がいやになりますね(笑い)。

 そう考えるとボクは、根っからの独占欲、支配欲の塊なのかも。でもこの、「お前の相棒はボクだけ」という唯一無二の関係が、やっぱり何よりも欲しい。そして何度も言いますが、この関係に絶対「恋愛感情」はいりません(笑い)。


 そんなボクの特殊かもしれない友人観。これを見てくださった方はきっと「そんな絶対に切れない絆なんてないよ(笑い)」って思うかもしれません。ボク自身、あり得ないだろうなあって思ってるんです。マンガじゃないんだから! でもどこかにあるような、いつかそんな人に出会う日が来るんじゃないかって期待して生きている自分がいるのも事実。やっぱり憧れてしまうし、欲しいと思ってしまう。

 性別関係なく、恋愛感情もなく、おじいちゃん、おばあちゃんになってもずっとバカなことやって、ゲームとかして笑っていられたら素敵だなぁって。そんなことを思いながら生きてきてもうこんな年ですが、ボクはまだ諦めていませんよ!(笑い)。たとえ“ボクの理想の形”がどんなにファンタジーだったとしても、一生モノの絆っていうのは確かに存在するのですから。

 いないかなぁ……。きっと、いるような気がするんです。この世界のどこかに。ボクはそんな相棒に出会う日を、「君」を、ずっと待っています。

 ◇プロフィル

 あおき・しき=1月14日生まれ。162センチ、AB型。「アイドルマスターシンデレラガールズ」の二宮飛鳥役など。声優、タレントと多方面で活動中。ゲーマーとしても「魔王」の愛称を持つコアゲーマー。

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