2018年も数々のアニメがテレビや映画館で私たちを楽しませてくれた。そんな中で毎シーズン注目されるのが「覇権アニメは何だったのか」論争だ。しかし、18年は少し違った動きがあったようだ。そして19年のアニメ勢力図は……。週に100本以上(再放送含む)のアニメを見ている“オタレント”の小新井涼さんが独自の視点で分析する。(前編)
ウナギノボリ
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2018年の冬アニメは、放送前から注目されていた「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」や「からかい上手の高木さん」「カードキャプターさくら クリアカード編」のほか、放送開始後には、オリジナルアニメである「宇宙よりも遠い場所」なども話題になりました。
そんな中、これらの作品をはるかに上回ってこのクールの覇権作品といわれたのが「ポプテピピック(ポプテピ)」です。ただし、この作品の人気を今改めて振り返ってみると、「おそ松さん」や「けものフレンズ」など、放送終了後もしばらくブームが続いたこれまでの覇権作品と比べて、驚くほど“波の引きが早かった”のが特徴でもありました。これは、パロディー以外の二次創作や聖地巡礼といった、放送終了後もできるファン活動がいまいち盛り上がらず、作品の楽しみ方が“アニメ本編へのリアクション”で完結してしまったことに原因があったのではないかと思います。作品のオンリーイベント(同人誌即売会)に、あまりにも人が集まらなかったことがネットで話題になっていたのを見ても分かる通り、ガッツリのめり込むというよりは、放送中だけお祭り感覚で気軽に盛り上がりに参加していたファンがほとんどだったのかもしれません。
結果として、放送中は「ポプテピ」の方が盛り上がっていたものの、放送後の息の長さでいえば、「ダーリン・イン・ザ・フランキス」や「ゆるキャン△」の方が、その後の人気が長続きしていたというのが、この冬クールの特徴であったと思います。
続く春アニメは、待望の新シリーズである「ルパン三世 PART5」や「僕のヒーローアカデミア(第3期)」、アニメ化発表時から注目されていた「ゴールデンカムイ」や熱い展開が話題になった「ウマ娘 プリティーダービー」などが人気を集めていました。
しかしこの時期、こうしたテレビシリーズ以上に大きな盛り上がりを見せていたのが、劇場版「名探偵コナン ゼロの執行人(ゼロ執)」です。改めてこの作品のヒットの要因をひもといてみると、女性人気は大前提として、劇場作品であることと、元々コナンが持つ認知度の高さというのも、結構大きかったように思います。「今このアニメが人気!」と聞いたときに、放送済みの話数を全部追わなければいけないテレビアニメと比べて、1回の鑑賞で済む劇場版は新規参入のハードルが下がります。加えて「名探偵コナン」は、ベースとなる設定や世界観が幅広い層に知られているため、話題となった際に、女性やアニメファン以外でも、気軽に映画館に足を運ぶことができたと思うのです。
そうして単なる女性人気にとどまらず、結果的に18年の邦画興行収入ランキング第2位にまで昇りつめた「ゼロ執」は、テレビアニメではないものの、時期的には間違いなくこの春クールの覇権作品であったと言えるでしょう。
このように、上半期に早くも2本の覇権作品を誕生させた18年ですが、この「ポプテピ」と「ゼロ執」を最後に、それ以降は覇権アニメが生まれなかった年でもあると思います。
続く夏クールも、有名原作を豪華な座組みでアニメ化した「BANANA FISH」や、放送開始後に男女問わず人気を集めた「はたらく細胞」や「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」、衝撃の特殊エンディングで視聴者を震撼(しんかん)させた「進撃の巨人Season3」など、確かに話題作は豊富でした。ただ覇権作品というのは、アニメファンに人気なのはもちろん、その人気が普段アニメを見ない人にまで知れわたるほどの社会現象となって初めてそう呼べるものだと個人的には考えています。そういう意味で、この夏クールには“覇権”と呼べるほどの社会現象を起こした作品は生まれなかったと思うのです。
原因としては、それぞれが良作であったために人気が分散してしまったことに加えて、この時期ちょうど「ヒプノシスマイク」や「VTuber」といったアニメ以外のコンテンツにも、アニメファンの人気が分散してしまったことも大きかったと思います。“アニメファンなら誰もが知っていて、人気が一般にまで知れわたっている”という覇権アニメも、生まれようがないからです。
改めて振り返ると、18年の冬から夏クールにかけては、「ポプテピ」と「ゼロ執」の盛り上がりを最後に、人気の分散とアニメ以外のコンテンツの盛り上がりによって、覇権アニメが生まれにくくなっていった時期であったと思います。こうした夏クールまでの流れは、続く秋クールの傾向や、19年の展開にはどのように影響していくのでしょうか。後編ではそのあたりを見ていきたいと思います。(後編に続く)
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