モデルで女優の菊池亜希子さんが、28日から全国公開される映画「わが母の記」(原田眞人監督)で、役所広司さん演じる作家・伊上洪作の娘たち3姉妹の中で、病弱ながら意志の強い次女・紀子を演じている。同作は、11年8月にカナダ・モントリオールで開催された「第35回モントリオール世界映画祭」で審査員特別グランプリを受賞した注目作で、親子の絆について宮崎あおいさん、ミムラさん、樹木希林さんなど豪華キャストで描いている。井上靖さんの自伝的小説が原作だと聞いて、すぐに「井上さんの作品の世界観が好きで、やりたいと思った」という菊池さんだが、「監督が厳しい方だといううわさを聞いていたので、オーディションが一番緊張しました」と明かした。映画の舞台裏や役柄への思いを聞いた。(毎日新聞デジタル)
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映画「わが母の記」は昭和39(1964)年が舞台。幼少期に母親と暮らしてこなかった小説家の洪作(役所さん)が実母・八重(樹木さん)の面倒をみることになり、妻と長女・郁子(ミムラさん)、次女・紀子(菊池さん)、三女・琴子(宮崎さん)たち“家族”に支えられ、自身の幼いころの記憶と、八重の思いに向き合うことになる。八重は次第に薄れてゆく記憶の中で、“息子への愛”を必死に確かめようとし、息子はそんな母を理解し、受け入れようとする……という物語。
病弱な紀子役は「私を知っている人からしたら、『ピンピンしているのにね』と言われそう」と笑う菊池さんだが、「(劇中の)3姉妹の中ではやっぱり紀子だな。すごく自分に通じる部分があったと思う」という。「私自身にも姉がいて、私の中に姉要素がなく、いつも誰かが面倒を見てくれるタイプ。映画の中では真ん中なんですが、(宮崎さん演じる)妹の琴子が紀子の面倒を見てくれる(笑い)。琴子が紀子の気持ちを代弁して(役所さん演じる)父と接してくれていたんじゃないかな」と、役柄を説明した。
撮影の様子について聞くと、菊池さんは「和やかだったし、監督も基本的にニコニコしていたので、居心地のいい現場でした」と話し、心配していた原田監督の“厳しい”一面には遭遇しなかったという。役作りについては「せりふに表れていないたたずまいで、その人らしさって出てくると思う。紀子は、お父さんのことを直視できなくて、すぐ体調が悪くなってうずくまってしまったり、みんなと同じようにはできない。けれど『でも言いたい』っていう意志の強さがある」と難しさを語る。具体的には「待ち時間で監督と『紀子だったらこんなことをしているよね』という話をして、『どっちかというと紀子はこれだよね』という監督の中の紀子のイメージと合わせていきました。自然に紀子が出ればいいなと思った」という。
特に、せりふの少ない紀子にとって、重要なキャラクター作りになる髪形については、事前に原田監督に相談したといい、「監督の中には、オーディションで見た私の髪形で、紀子のイメージができていた。髪の長い女性が多い時代、引っ込み思案な紀子が、一番個性的なショートカットをしている時点で、紀子の意志の強さが出ているから『そのままでいいよ』と言ってくださった。監督の中で紀子だと思って選んでくださったのだから、そのままで演じようと思いました」とうれしそうに語った。
そんな菊池さんに「演技することとは?」と聞くと、「まだ全然答えが見つからなくて……」と困った顔をしながら、「今まで意外と要領よく生きてきたんですが、今までやってきた中で、一番分からないことが演技。一番分からないから興味があるので、まだまだやってみたい」と意欲を燃やす。今後挑戦したい役は「すっごく悪い女の役」だといい、「今までは自分の中にある部分を引っ張り出して演じていたので、どう考えても自分の中には1ミリもない役をやってみたい。私自身が、穏やかで“いい人”だと思われているんですけれど、何の毒も言わなそうなこの風貌のままで、そういう(悪女の)役をやったら面白いんじゃないかな。すごく大変だと思うんですけれど」と、女優の顔を見せた。
次回は、菊池さんのユニークなオフの過ごし方や、将来について、プライベートを聞く。
<プロフィル>
82年8月26日生まれ、岐阜県出身。ファッション誌「PS」(小学館、11年12月に休刊)でモデルとして活躍し、05年からは同誌でイラストとエッセーをすべて手がけるコーナー「道草」を連載していた。主な映画出演作に「ぐるりのこと。」(08年)、「森崎書店の日々」(10年)、「ファの豆腐」(11年)などがある。18日に、自身が編集長を務めたファッションライフスタイル本「菊池亜希子ムック マッシュVol.1」(小学館)を発売し、28日には出演した映画「わが母の記」が公開される。秋には主演映画「みちのおく~よだかの星~(仮)」が公開予定。