朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第88回 ブルワー・リットン「ポンペイ最後の日」前編

「ポンペイ最後の日」著・ヴルウェー、訳・渡辺秀(サンパウロ)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「ポンペイ最後の日」著・ヴルウェー、訳・渡辺秀(サンパウロ)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第88回はエドワード・ブルワー・リットン「ポンペイ最後の日」前編だ。

ウナギノボリ

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 あるジャンルを代表する事柄・場所・人物などを言い表すとき、「日本三大○○」「世界三大××」といった表現をよく聞きますよね。お話の世界に登場する「世界三大探偵」をご紹介しましたが、今回はその国内編ともいえる「日本三大探偵」をご紹介したいと思います。

 ◇明智小五郎(あけち・こごろう)

 日本の探偵小説の第一人者、江戸川乱歩さんの手によって生み出された私立探偵です。映像化された作品の影響で「明智小五郎=背広姿の似合う紳士」のビジュアルイメージがありますが、初登場作品「D坂の殺人事件」ではよれよれの帯を締めた着物姿という書生スタイルでした。好敵手「怪人二十面相」との対決でも有名ですね。

 ◇金田一耕助(きんだいち・こうすけ)

 多作で、数多くの作品が映画化されたことでも知名度の高い横溝正史さんによって生まれた、和装の私立探偵です。頭をかきむしりながら推理する姿が印象的ですよね。70作以上の作品に登場していますが、事件解決のたびに関係者のことを思って落ち込んでしまい、旅に出てしまうという繊細な一面もあるんですよ。

 ◇神津恭介(かみづ・きょうすけ)

 前回お誕生日でご紹介した高木彬光さんによって生まれた、6カ国語を操る天才探偵です。初登場作品「刺青殺人事件」は、高木彬光さんの作家デビュー作でもあるんですよ。3人の中では唯一私立探偵ではなく大学の先生という本職を持っていて、友人の松下研三さんやそのお兄さんで警視庁捜査課長を務める松下英一郎さんに協力して難事件を解決していきます。

 この3人が活躍するお話、機会があればそれぞれご紹介したいと思います。

 ではここで朗読倶楽部のコーナー、甲原みかえさんのお話・その4です。

 待ち合わせの場所に着いた部長さんと私は、英語で道案内をしているみかえさんを目撃しました。彼女の英会話はいつもと違う流ちょうなもので、これだけ話せるならなぜ普段はジャパニーズイングリッシュなのかと私が疑問に思ったその時、道案内を終えたみかえさんと私たちの視線が合ったのです。

 授業での彼女を知らない部長さんはその堪能な英語力に感心した様子で、その場で拍手するほどだったのですが……称賛を受けているみかえさんの方はというと、照れているというよりも気まずい表情。その様子を見た私は、何も聞かない方が良さそうと思ったのですが……。

 「いつもの話し方だと、向こうの人には通じないから……」。その一言を皮切りに、みかえさんはぽつりぽつりと話し始めたのです。

 彼女はかつて、語学留学をしていました。そのためクラスメイトの私より一つ年上なのですが……本来は向こうでの大学入学を見据えた、長期にわたる留学を予定していたそうです。

 でも、実際は現在日本に戻っていて、私と同じ朗読倶楽部の一員です。では、なぜ留学を切り上げたのでしょうか……と、いうところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね。

■しおりの本の小道 エドワード・ブルワー・リットン「ポンペイ最後の日」前編

 こんにちは、今回ご紹介する1冊は、かの名言「ペンは剣よりも強し」の生みの親、英国の男爵エドワード・ブルワー・リットンさんによる「ポンペイ最後の日」です。

 このお話の舞台となる古代ローマ帝国のリゾート地・ポンペイは、現在のイタリア・カンパニア州ナポリ県にありますが、西暦79年8月24日に発生したヴェスヴィオ火山の大噴火によって、火砕流にのみ込まれてしまいました。

 その後、およそ1700年を経て始まった発掘は現代まで続く遠大な作業となり、高度な文明を裏付ける遺構が続々と発見されています。ポンペイを訪れ、その様子を目の当たりにして物語の着想を得たリットンさんは、1834年にこのお話を発表しました。

 大噴火によって「最後の日」を迎える少し前のこと。

 大勢の人々でにぎわい、活気に満ちた避暑地ポンペイの大広場で「街に不吉な影が迫っている」と説く一人の老人がいました。ナザレ教伝道師の彼は、この影をはらうには、神(キリスト)に祈るべきだと説きますが、イシスの女神を信仰するポンペイの人々は全く聞く耳を持ちません。

 そのイシス神を祭っている神殿の祭司アーバセスさんは、ご神像に仕掛けを施したいんちきの「神のお告げ」によって、信者を増やしていました。

 しかも彼はそれに飽き足らず、両親を失った資産家の兄妹から全財産を巻き上げようとたくらんでいたのです。

 彼が開く宴会に歌姫として呼ばれている盲目の奴隷ニディアさんは、その悪だくみの数々を耳にして、彼女の主人であるブルボの酒場夫婦に「もう宴会に出たくない」と訴えるのですが、彼女が歌うことはお金になるために「奴隷に口ごたえは許さない」と、むちで打たれてしまいます。

 しかし、そんな可哀そうな彼女にも、救いの手が差し伸べられました。それが正義感あふれるローマの青年貴族にしてこのお話の主人公、グローカスさんだったのです……。

 善悪の対決に恋物語と魅力的なストーリーで展開するこの作品、次回も引き続きご紹介しますね。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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