浜田麻里:30周年記念ベスト盤を発表「またハードな音楽をやりたいと思わせる時代背景になった」

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 “ヘビーメタルの女王”の異名を持つ歌手の浜田麻里さんが、デビュー30周年記念ベスト盤「INCLINATION 3」を7日にリリースした。10年の節目ごとに発表されてきたベストアルバム「INCLINATION」(傾向の意)のシリーズ第3弾で、ここ10年の楽曲を中心に新曲やリメーク曲も収められている。最近、ますます曲作りの意欲が高まっているという浜田さんに、時代と音楽、30周年への思いなどについて聞いた。(水白京/毎日新聞デジタル)

ウナギノボリ

 −−浜田さんといえばやはり“ヘビーメタルの女王”ですよね。

 私がデビューしたときのキャッチコピーが「麻里ちゃんはヘヴィ・メタル」という、糸井重里さんが作ったものだったんですね。そのとき20歳くらいで、歌はかなりハードに歌ってはいたんですけど、普段の格好がロック少女的な感じでは全然なく、普通の大学生という感じだったので、そのギャップがコビーに反映されたんだと思うんです。売り方としても、“見た目は普通だけど、ステージに立つとすごくシャウトして歌う”みたいな二面性を宣伝文句にしていたところもありました。

 −−87年から米ロサンゼルスでレコーディングを行うようになったそうですが、一時期住んでいたこともあるんですか?

 そういうイメージがあってファンの方もよくおっしゃるんですけど、それはないんです。ただ私の場合はアルバムのレコーディングにすごく時間がかかるので、1回行くと2、3カ月は行きっぱなしっていうことはありましたね。そのころは月単位でアパートを借りたり。それこそ一時期は炊飯器とかも買ったりして、自炊もしてました。最近は短い滞在で行ったり来たりするっていう感じで、(宿泊は)ホテルですね。

 −−米国での制作活動を経験してよかったと思うことは?

 視野が広がったことはすごく大きかったですね。音楽に対する頑なさがなくなって音楽性が広がったので、それが一時期のシングルヒットにつながったんじゃないかと思うんです。それ(一連のシングルヒット)には今も昔も賛否両論あるんですけど、自分は単に純粋にいい音楽をやりたい、いい歌を歌いたいという気持ちでやってきただけなので、引け目がないといいますか、自分にとってはプラスしかなかったなと思います。

 −−では、10年に1度のベスト盤第3弾「INCLINATION3」についてお聞きしたいのですが、タイトル通り、ここ10年の浜田さんの音楽的動向が分かる内容になっているんですね。

 ちょうど「2」の時期に当たるんですけど、日本でライブをしなかった時期が9年間あるんですね。はじめの10年が忙しすぎて、がんじがらめになってしまったので、1回休憩の時期を取りたいなと思ったのがきっかけだったんです。なので、「2」のころの10年と比べてこの10年というのは、ライブを復活させてそれがどんどん盛況になってきて、といういい流れがあったので、「3」はライブをする自分というのをベーシックに想定しているところはあると思います。中でも、ライブでお客さんの反応がよかった曲は、よりよいイメージとなって自分の中に残っているので、そういう曲を今回選んでるというのはありますね。

 −−歌詞の中に「痩せた時代……」「夢なき世代……」など「時代」を意識した言葉がよく見られますが、ここ10年の時代の流れと作品の関連性についてどうとらえていますか。

 一時期すごくポップになったといわれて、シングルヒットを出した時期もありますし、もっとメローな音楽に近いアルバムを作っていたこともあるんですけど、だんだん時代背景が、すごくハードな音楽をやりたいと、また思わせるように私を導いてきたというか、ここ数年それがあるので、よりエッジが効いて、言葉も強い方向に向かってるなって。どうしてもフラストレーションや怒りみたいなものを歌詞や音楽に投影したいっていうところがあって、最近なぜそれがハード化しているかっていうのは、そう思わせる時代背景にあるのかなって思います。

 −−そんな中、パワフルなボーカルやハイトーンはずっと変わっていないですよね。のどをケアするための秘訣(ひけつ)はあるんですか。

 歌う前はあまり冷たい飲み物とかは飲まないようにはしてますけど、特にそんなに……。ただ、イメージ的にたばこをガンガン吸うって思われがちなんですけど、1度も吸ったことないんです。お酒は飲みますけど(笑い)。特に焼酎とかワインとか。若いときはそれこそツアー中でもガンガン飲んでたんですけど、今はツアー中はほとんど飲まないです。

 −−この30年を改めて振り返って感じることは?

 ハードなロックを歌う女性シンガーとしては出始めで、私にとってのロールモデルというのはいなかったんですよね。なので、いつも自分で次、どうするかを判断して、手探りの状態でずっとやってきて、それがとりあえず30年続いてよかったなって思うし、間違ってなかったってやっと自分で思えるようになりました。そういう先駆けでやってきた人間として、後世への道を残せるような役割を果たせればいいなと思ってここ10年ぐらいずっとやっているし、これからもその気持ちだけだと思います。

 <プロフィール>

 1983年にアルバム「LUNATIC DOLL」でデビュー。89年に発売したシングル「Returnn to Myself~しない、しない、ナツ。」がヒット。浜田さんが初めてハマッたポップカルチャーは美空ひばりさん。「昔、うちが理容室をやってまして、女の子の従業員がたくさんいたんですね。その中の一人が、美空ひばりさんの大ファンで、コンサートによく連れて行ってくれたんです。たぶん3歳くらいで見たと思うんですけど、白いドレスを着て歌ってる美空ひばりさんの姿をいまだに覚えてるんですよ。人前で歌うすごさというか、楽しさっていうものを垣間見た、初めてのカルチャーショックだったのかもしれないです」と話した。

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