モーガン・フリーマンさんとダイアン・キートンさんが初共演した「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」(リチャード・ロンクレイン監督)が30日から公開される。同名のロングセラー小説が原作で、熟年夫婦が住み慣れたアパートを売りに出し、新居探しをする数日間を描き出した。名優同士の円熟した芝居を軽やかなタッチで絶妙に見せている。
ウナギノボリ
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画家の夫アレックス(フリーマンさん)と、元教師の妻ルース(キートンさん)は、ブルックリンのアパートの最上階に住んでいる結婚40年を過ぎたカップル。部屋からは美しい街を一望でき、日当たりも良好だ。愛犬ドロシーとともに仲よく暮らしていたが、エレベーターもない我が家への道のりがつらくなり、ルースは部屋を売る決心をする。めいっ子の不動産エージェント・リリー(シンシア・ニクソンさん)によって億の値で売りに出されると、内覧希望者が殺到。内心住み替えたくないアレックスの気持ちをよそに話が進んでいき……という展開。
大統領だったり、博士だったりと大作への出演が続いたフリーマンさんが、普通のおじいさんとして犬を散歩させているだけでこの映画を好きになったが、妻役キートンさんとの夫婦ぶりもチャーミングで魅力的だ。大物俳優が、あれやこれやと庶民感覚の不動産住み替え劇を繰り広げる姿が軽やかにつづられていく。古くなったアパート、弱くなった足腰。そんな理由でスタートした住み替え計画に、親しみを覚える人も多いのではないか。ニューヨークでの不動産売却事情も興味深く、主人公と一緒に部屋探し気分を味わえるのも面白い。
乗り気でない夫に対し、妻は一度火がついてしまったものならと、ガンガン突き進んでいく。内覧者に情を寄せるのも女性ならでは。しかし、家をアトリエにしている画家の夫にとって、妻に励まされながら画業にいそしんできた過去も手伝い、我が家には妻以上に思い出がしみついているようだ。若かりし日々の思い出が挿入されたシンプルな構成で、夫婦の歴史や思い出に触れていく。黒人との結婚に偏見のあった時代や、川向こうで田舎扱いだったブルックリンも、今や昔……。夫婦はどういう選択を下すのか。最後まで心地よく映画を見守った。30日からシネスイッチ銀座(東京都中央区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。今作の犬のドロシーの演技力にも脱帽だった。
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