松本人志:「本当に面白い人を見てみたい」 芸人たちの密室笑わせ合いサバイバル配信スタート

Amazonプライム・ビデオで配信される映像作品「HITOSHI MATSUMOTO Presents『ドキュメンタル』」について語った「ダウンタウン」の松本人志さん
1 / 7
Amazonプライム・ビデオで配信される映像作品「HITOSHI MATSUMOTO Presents『ドキュメンタル』」について語った「ダウンタウン」の松本人志さん

 お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さんによる映像作品「HITOSHI MATSUMOTO Presents『ドキュメンタル』」が、30日からAmazonプライム・ビデオで配信される。「ドキュメンタル」は、10人のお笑い芸人たちが1人100万円の参加費を用意して同じ部屋に集まり、6時間という制限時間内にさまざまな手法で笑いを仕掛けるという“密室笑わせ合いサバイバル”の模様を収めたドキュメンタリー。笑ってしまい、レッドカードを出されたら即退場となり、笑いに耐え抜き、最後まで残った一人が賞金1000万円を獲得できる。芸人たちの笑わせ合いを見守る松本さんに話を聞いた。

ウナギノボリ

 ◇寝ても覚めてもずっと笑いのことばかり考える

 今回の番組について、松本さんは「地上波のテレビでは、老若男女の人たち皆さんに楽しんでもらわないといけないということもあり、どうしてもいろんな要素を入れないといけない」と切り出し、「そういう中で、もっとぜい肉をそぎ落としたというか、本当に面白いことだけができるような場所がないかなと探していたところだったので、(Amazonプライム・ビデオの企画が)うまくはまったかなと思っています」と説明する。

 参加者同士が笑わせ合うというシンプルなルールだが、「18歳からずっとお笑いに携わってきて何が面白いんだろうって、もう寝ても覚めてもずっと笑いのことばかり考えている」と松本さんは前置きし、「その中で“原点回帰”じゃないですが、本当に面白いことってこんなことなのかなと。ネタとか一生懸命、事前に考えることもいいんですが、本当の面白い人間というのはどんな人間なんだろうかというのを見てみたい」と強く感じたという。そして、「そういう意味では実験的ではありますが、(この番組では)そんなことができそうな気はします」と自信をのぞかせる。

 番組はネット配信で公開されるが、「ケチャップ味にしたりマヨネーズを付けたりとか、調味料みたいなものがテレビの中では必要かなというのはある」と地上波の心構えを話しつつ、「この番組に関してはそんなことは一切考えず、おさしみというか素材だけ食べてもらって、素材のうまさだけでどれだけ勝負できるかなと。本当にそこだけでいいんじゃないかなって思うし、僕が本当にやりたいことは意外とこういうことかなって思う」と持論を語る。

 さらに、「一生懸命、笑いのメカニズムみたいなことも考えますが、その一方で普通に予期せぬところでちょっとつまずいただけで笑ってしまうみたいな、そういう笑いっていうものも決して無視はできないと思っています」と今作にも垣間見える多様な笑いについて解説する。

 ◇参加者は全員「少し問題ありでギリギリな人たち」

 参加者は、宮川大輔さん、FUJIWARAの藤本敏史さん、野性爆弾のくっきーさん、東京ダイナマイトのハチミツ二郎さん、とろサーモンの久保田和靖さん、トレンディエンジェルの斎藤司さん、マテンロウのアントニーさん、天竺鼠の川原克己さん、ジミー大西さん、ダイノジの大地洋輔さんの10人。「個性のぶつかり合いで、いわゆる“ツッコミ”というものがそんなに存在しない。本当にキャラクターだけでどれだけ相手を笑わせられるかというか、ねじ伏せられるような人たち」と松本さんは参加メンバーを分析し、「皆さんちょっと一般の中では機能していない(笑い)。少し問題ありだな、ギリギリだなという人たちを集めたところはあります」と話す。

 100万円の参加費については、松本さんは「番組をどう撮っていこうかと考えたとき、ドキュメンタリーとして追いかけていった方がきっと面白いだろうというのはあった」といい、「テレビ出演などでは最終的にギャラがもらえるわけですが、これはへたしたら100万円持って行かれちゃうというところで、精神的な部分は相当なもの」と普段のテレビの仕事との違いを語る。

 続けて、「みんな同じぐらいの収入ではないですから、わりと余裕がある人もいれば、そうじゃない人もたくさんいる。そこのメンタルな部分みたいなところが、どう出てくるかなと。そこも面白がりたいなと思った」と意図を明かし、「ドキュメンタリーとメンタルということで、造語なんですけど、『ドキュメンタル』という言葉がしっくりきました」とタイトルに込められた意味を説明する。

 芸人たちが笑いを仕掛け合う様子を、「世界情勢を見ているというか、この人って国でいうところの何人なんだとか、この国とこの国がやり合うとこんな感じになって、間にこの国が入っていてとか、そんな感じがしました」と独特な言い回しで松本さんは表現する。自身がプレーヤーだった場合、やっかいだと思うメンバーは「ジミーちゃん」で、「いわゆる計算してこない笑いがすごいので、こういう人はちょっと怖い。笑いのテクニックをあんまり持ってないですけれど、一種、“昔の出てきたころのボブ・サップ”みたいな恐ろしさはあります」と松本さん“らしい”例えで理由を語る。

 ◇次回があれば自身もプレーヤーとして参戦したい

 「IPPONグランプリ」(フジテレビ系)など、松本さんが手がける番組の中には笑いによる戦いや瞬発力を必要とするものも数多くある。「小学生ぐらいのころからありました」と自身の中に笑いで戦うと気持ちが幼少期からあったことを明かし、「まずクラスで一番面白くなりたいし、学年で一番面白くなりたい。それで学校で一番面白くなって、それで大阪で一番面白くなって日本で一番面白くなりたいみたいな(笑い)。そんな思いが子供のときからずっと、今もあります」と深くうなずく。

 そういった思いがベースにありながらも、「なんてことない天然のじいちゃんの一言に勝てないみたいな、単純なのか複雑なのか分からないですけど、笑いの複雑さもあり、本当にお笑いってなんなんだろうって……」と笑いの難しさに言及し、「多分、死ぬまで解決しない問題なんでしょうけれど、ずっとそうやって携わってやっていきたいと思うし、やっぱりどこかでうそでも一番を決めないと、向上していかないのではという思いはあります」と笑いへの真摯(しんし)な一面をのぞかせる。

 今回の番組の撮影を終えて、松本さんは「進化していく可能性は少し感じました」と手応えを感じ、「外部とは一切遮断し、密室の中でやるということだったんですが、ちょっとこういうことを足してみてもいいのかなとか、足し引きしてみたいことが僕の中であって、もっともっと違う形に変化していく可能性はあります」と今後に思いをはせる。

 今回は吉本芸人のみの参加となったが、「今後できれば吉本にかかわらず、もっといえば芸人にかかわらず、もっといえばタレントにかかわらず、でもいいのかもしれない」と腹案を披露し、「カテゴリーみたいなものを取っ払ったら、とんでもないやつが出てくるんじゃないかなと思って楽しみだったりもします」と目を輝かせる。

 松本さん自身がプレーヤーには? 「もちろん、その気もあるし、これがもし評判がよかったら、そんなことも考えるんですが、僕がやる場合、1億円でやりたいなと」と驚きの発言が飛び出すも、「すみません……。1億円は言い過ぎました(笑い)。参加費を1000万円にして、賞金1億円にしてみたいな夢はありますが、1000万円を持ち寄る人たちが果たして何人いるんだろうかという。そこですよね」とちゃめっ気たっぷりに語った。「ドキュメンタル」は30日からAmazonプライム・ビデオで、毎週水曜に1話更新の全4話で配信。

 <プロフィル>

 1963年9月8日生まれ、兵庫県出身。82年に浜田雅功さんとお笑いコンビ「ダウンタウン」を結成。以来、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」(日本テレビ系)や「ダウンタウンのごっつええ感じ」(フジテレビ系)など数多くの番組に出演。93年のオリジナルビデオ作品「ダウンタウン松本人志の流 頭頭」をはじめ、「HITOSI MATUMOTO VISUALBUM」など映像作品も手がける。2007年には「大日本人」で映画監督デビューを果たし、「しんぼる」(09年)、「さや侍」(11年)、「R100」(13年)を手がけている。

  (取材・文・撮影:遠藤政樹)

写真を見る全 7 枚

テレビ 最新記事