「バベル」でアカデミー作曲賞を受賞した音楽家グスタボ・サンタオラージャさんがプロデュースし、アルゼンチンタンゴ界の重鎮たちが一堂に会するドキュメンタリー作品「アルゼンチンタンゴ 伝説のマエストロたち」が全国で公開中だ。タンゴは日本人にはなじみの深い音楽ジャンルの一つ。歌謡曲にも使われ、アストル・ピアソラ没後5周年だった97年ごろには、ピアソラブームもあった。
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アルゼンチン・ブエノスアイレスのレコーディングスタジオにおじいちゃんたちが集まった。タンゴの黄金期である1940~50年代に活躍した伝説の音楽家たちだ。楽器を軽く弾いただけでも、年季の入ったその音楽の奥深さが分かる。映画はやがて、世界三大劇場の一つであるコロン劇場でのライブシーンに場面が変わる。このライブがとにかく超絶だ。最高齢で90代の人もいるだけに、この体験に間に合ってよかったと思った。映画は、「同窓会」状態でわき立つ。カフェでサッカーを観戦していたマエストロたちの素の姿を前半に映し出し、後半ではプロの表情を存分に見せてくれるのである。
メンバーたちは日本のバンドネオン奏者・小松亮太さんとも共演している、ピアソラ五重奏団のメンバーだった1941年生まれのバイオリン奏者フェルナンド・スアレス・パスさん、エレキギターを使ってタンゴ界に革命を起こした(物議を醸し出したとも言い換えられる)ピアソラのブエノスアイレス八重奏団にも参加した1927年生まれのバンドネオンのレオポルド・フェデリコさんの顔もある。
映画はあまり個人をクローズアップしないので、誰が誰なのか少々分かりづらいが、細かいことはこの際いいだろう。欲をいえば、ブエノスアイレスの街のカットがもっとあったらとも思ったが、映画はステージ全体と、アルゼンチンタンゴの魅力を「感じられる」作りだ。哀愁を帯びたメロディーでありながら、力強いビート。高齢とは思えないエネルギッシュな演奏が堪能できる。
年齢を重ねたマエストロたちの姿のなんてステキなこと! ピークを過ぎた後の美学、枯れることの良さ、失ったものを持っていることの良さも感じてくる。6月26日からBunkamuraル・シネマ(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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