山田風太郎賞:貴志祐介「悪の教典」に 角川書店の新文学賞

「悪の教典」で山田風太郎賞を受賞した貴志祐介
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「悪の教典」で山田風太郎賞を受賞した貴志祐介

 角川書店が新設した文学賞「山田風太郎賞」が29日、貴志祐介さん(51)の「悪の教典」(文藝春秋)に決まった。貴志さんは「勢いがあって、読むのをやめられなくなるような本を目指した。(過激な描写があり)通常の文学賞とは反対で、賞には恵まれないと思ったので驚いているが、やってきたことは間違っていなかった」と喜びをかみしめていた。

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 「悪の教典」は、生徒からも人気で、PTAや職員からの評判のいい好青年の英語教師、蓮実聖司(はすみ・せいじ)が、他者への共感能力に欠けた反社会性人格障害(サイコパス)で、暴力的な生徒やモンスターペアレント、集団カンニング、淫行(いんこう)をする教師などさまざまな病理を抱えた学園内の殺人鬼になる……という内容。上下巻で刊行されている。貴志さんは1959年、大阪府生まれ。京都大経済学部卒業後、97年の「黒い家」で第4回日本ホラー大賞、05年の「硝子(ガラス)のハンマー」で第58回日本推理作家協会賞を受賞している。

 「山田風太郎賞」は、角川書店と角川文化振興財団が主催。09年9月1日~10年8月31日に刊行されたジャンル不問の小説が対象。他の候補作は綾辻行人さんの「Another」、有川浩さんの「キケン」、海道龍一朗さんの「天佑、我にあり」、森見登美彦さんの「ペンギン・ハイウェイ」だった。

 選考委員の京極夏彦さんは、大賞作が綾辻さんの「Another」と一騎打ちになったことを明かし、「一気読みさせる力がある。生徒を大量殺戮(さつりく)する反社会的な内容ではあるが、それを嫌う選考委員すらも読ませてしまった。新しい小説を生み出そうとしている志があり、かつ面白さがキープできている」と評価した。

 賞金は100万円で、授賞式は11月24日に東京会館(東京都千代田区)で開かれる。(毎日新聞デジタル)

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