森山未來：「いい意味で力が抜けた」　阪神大震災の15年後を描く「その街のこども 劇場版」

　昨年1月にNHK総合で放送されたドラマの劇場版「その街のこども」（井上剛監督）の舞台あいさつが15日、東京都写真美術館ホール（東京都目黒区）で行われ、主演の森山未來さん（26）と佐藤江梨子さん（29）が登場した。高校までずっと神戸で生活していたという森山さんは「（出演した役は）実年齢だし、その時の状況を（劇中の）会話に混ぜて（脚）本に起こしてもらっている部分もある。僕はこの本とか作品にかかわれたお陰で、いい意味で力が抜けた部分があるのかな」と撮影を振り返った。佐藤さんは「私はその時（震災時）は神戸にいて、震災直後に引っ越してしまったので、皆さんが思われている被災者生活がなかったんですが、この本だから出演しました」と語った。

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　幼いころに阪神大震災を経験した若者の15年を描いたドラマ「その街のこども」は、ドラマ放送後に視聴者から多数の称賛の声が寄せられ、第36回放送文化基金賞を受賞。NHK制作ドラマとしては異例の全国公開が決定し、放送時にカットせざるを得なかった映像を加えた再編集バージョンでの劇場版を制作した。

　映画は、東京の建設会社に勤める勇治（森山さん）は、先輩（津田寛治さん）とともに出張先の広島に向かっていた。新幹線の中で明日が震災の日だと知った勇治は、新神戸で降りてしまう。15年ぶりの神戸だった。一方、美夏（佐藤さん）は「追悼のつどい」に参加するために新神戸にやって来た。偶然出会った2人は、一緒に三宮まで歩くことになる……というストーリー。放送中の連続テレビ小説「てっぱん」の井上監督がメガホンをとり、脚本は映画「ジョゼと虎と魚たち」（03年）や「メゾン・ド・ヒミコ」（05年）の渡辺あやさんが手がけた。

　森山さんは「被災者だけれども『震災、大変だったんじゃないの？』という普通の会話が（これまで）成立させられなかった自分の思いが、この作品で整理できた」と作品の感想を語った。井上監督は「僕は神戸の人間ではないので、この作品を取る時にキャストや脚本家との感覚の違い、思っていることの違いに葛藤して苦しんだ。でもこの（僕の）フィルターで撮ったからこそ伝えられることがあると思う。それが少しでも感じてもらえれば」と映画をPRした。映画は、15日から同所や池袋シネマ・ロサ（東京都豊島区）ほか全国で順次公開。（毎日新聞デジタル）