女優の井上真央さん主演のNHK連続テレビ小説「おひさま」が10月1日にいよいよ最終回を迎える。平均視聴率は放送開始から20%付近をキープし続け、主人公の陽子が子供を産む第17週の週間最高平均視聴率は21.6%、第22週には同22.6%と高視聴率を記録。ドラマと現実の区別がつかなくなった熱狂的な視聴者が米や金銭を送ってくる“おしん現象”も起きているという。何かを成し遂げるわけでもない、ある意味“普通の人”の人生を描いたドラマの人気の秘密はどこにあるのか。小松昌代チーフプロデューサー(CP)に聞いた。
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「おひさま」は昭和7(1932)年に病気の母のため、東京から長野県の安曇野に引っ越してきたヒロイン・須藤陽子(井上さん)が、父と2人の兄に囲まれながら、戦前、戦中、戦後の時代に青春や国民学校の教師、妻、母としての日々を生き、“そば”で人々をつないでいく物語。番組へは幅広い年齢の視聴者から、月に150~200通のはがきや封書が届くという。
ヒロイン・陽子と夫の丸山和成(高良健吾さん)が祝言を挙げた週には、全国の視聴者から同局に“丸山和成様・須藤陽子様”と役名あてで電報が届けられ、和成が復員してきた週にも和成あてに祝電が届いたという。小松CPは「(劇中で)そばが出せなくてこんにゃくを出しているエピソードの時に『(陽子の娘の)日向子に食べさせてあげてください』とそば粉が送られてきた」というエピソードを披露。朝ドラ史上最高視聴率を出した83年放送の「おしん」でも、熱狂的な視聴者から「おしんに渡してほしい」と、同局に米や多額の金銭を送られたことがあったというが、ここ何年かの朝ドラではなかった現象が起きたことを明らかにしている。
特に東日本大震災の被災者を中心に大きな反響があったという。小松CPは「家族を亡くした被災者から『陽子を未亡人にしないでください』という手紙が届いた。日向子が生まれたときに『新しい命が生まれておめでとう』とカードが来たこともありました。毎朝のことですから一緒になって心配してくれる。あて名がいずれも役名なんです」と明かした。福島県で20台後半ぐらい、仙台でも20%を超す視聴率を記録しているといい、反響について小松CPは「陽子たちが前を見て、ちっちゃな幸せを見つけて、かみしめながら生きていくのを何となく重ね合わせて見守ってくださっているのを肌で感じる」と語り、戦前・戦後の混乱期を乗り越え、生活の復興を目指して前向きに生きる陽子たちの姿が、同じく震災からの復興を願う被災者の共感を得たのではないかと分析している。
震災があったからといって特にストーリーに手を加えなかったという小松CPだが、震災後のこの時期にドラマを視聴者に届けるという意義は意識したという。「『ここから先は前を向いて夢を考えて幸せを考えて生きていこうよ』という小さなメッセージになれば。みんなが集まってきて、ここで元気になって、またそれぞれが自分の場所に戻っていくような、そういう場所が作れた女性の話にしていこうと思った」と熱い思いを語った。(毎日新聞デジタル)
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