はじめの1巻：「タケヲちゃん物怪録」　妖怪屋敷に住む世界一不運な女の子の物語

　1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、月刊マンガ誌「ゲッサン」（小学館）で連載、妖怪屋敷に住むことになった世界で一番不運な女の子タケヲちゃんの物語を描いた、とよ田みのるさんのマンガ「タケヲちゃん物怪録（ぶっかいろく）」です。

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　世界で一番不運で、今までに幸福を感じたことがないという女の子タケヲちゃん。高校の入学式で、頭上に落ちてくる照明を事前に察知して防いだことで、クラスメートと仲良くなる。始業式が終わって帰宅時間になると、1人暮らしだというタケヲちゃんの家にクラスメートが遊びに来るというが、タケヲちゃんはヘルメット、ゴーグル、ひじ当て、ひざ当てなどの防具を着け、「本当に来るんですか？」と念押しして……。

　◇編集部からのメッセージ　ゲッサン編集部　市原武法さん「普遍的な喜怒哀楽を描き出す」

　人と人の絆を描き続けてきたとよ田みのる先生。「ラブロマ」1巻発売からずっと大好きな作家さんでした。知り合って数年。ついにとよ田先生に“ゲッサン参戦”していただくことになった時は本当に感無量でした。

　とよ田先生が選んだ題材は「妖怪屋敷」。

　テーマは「薄幸の少女」。

　タイトルは「タケヲちゃん物怪録」。

　世の中には一度読んだらもう読む気にならないマンガがたくさんあります。

　とよ田みのる先生の作品はその対極にあり、長く手元に置き何度も何度も読み返したくなる不思議な魅力に満ちています。

　これは、流行や刹那（せつな）的なテーマを切り取るのではなく、人間の普遍的な喜怒哀楽をみずみずしく描き出すことに徹するのが“とよ田ワールド”の本質だからだと思っています。

　この不安に満ちた時代にこそ、多くの方に読んでいただきたい作品です。

　この世の中は捨てたもんじゃない。滑稽（こっけい）だけど愛すべき人間たちが自分の周りにもきっといる。そう信じさせてくれる作品です。

　◇書店員の推薦文　伊吉書院類家店 中村深雪さん「つらい設定でも悲しいだけの物語にならない」

　「世界で一番不運な女の子」が主人公というつらい設定なのに、悲しいだけの物語にならないのがとよ田先生流！　恐ろしいはずの妖怪たちとタケヲちゃんとの攻防が、なぜかどんどんハートフルな方向に発展していくという意外性に思わずクスクス。妖怪たちと一緒に「わ・か！　わ・か！」ともり立ててあげたくなる愛らしさの「若様」をはじめ、登場人物（妖怪も含む）が皆、憎めないのも魅力。そんな彼らと一緒にタケヲちゃんが少しずつ感情を取り戻していく描写にはホロリとさせられます。いつかタケヲちゃんが心の底から幸福になれますように！