インドに亡命したチベットの少年が主人公のドキュメンタリー映画「オロ」が30日から全国で順次公開されている。記録映画を撮ってきた土本典昭監督、羽仁進監督、黒木和雄監督の演出助手を経た、アバンギャルドな作風で知られる岩佐寿弥監督が3年前に企画、カンパを受けながら完成させた作品だ。少年の生きる姿が力強い。絵とアニメーションが効果的に使われている。
ウナギノボリ
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オロは6歳のときに親と離れ、命からがらヒマラヤを越えてチベットに亡命してきた。いまはインドのチベット子ども村に寄宿して勉強している。仲よしのドルマ姉妹には父親がいない。中国警察に逮捕されて刑務所にいるという。監督は以前、撮影で出会ったおばあさんのモゥモ・チェンガさんがいるネパールにオロを連れていく。オロはモゥモの親戚の三姉妹に囲まれて家族のように過ごしながら、やがて亡命の過酷な体験を語り出す……。
岩佐監督77歳。孫を見つめるような優しさと温かさでオロを見つめている。その視線は、上からでも下からでもなく常にオロの目線で肩を並べているかのようだ。オロは映画出演のオファーが来たとき、敵と闘うカンフー映画に出るのかと思っていたのだという。無邪気な勘違いが可愛らしいエピソードだ。この作品に登場する亡命チベット人はみな、実にいい笑顔をしているが、その笑顔の裏にある苦労が今作にはよく映し出されている。同じように亡命してきたオロの友だちの口から、過酷な亡命の様子が切々と語られたのち、オロの笑顔がスーッと消える瞬間を見て、ハッとさせられる。オロは幼い胸の中につらさをしまいこんでいた。故郷に帰りたいという祈りの気持ち、厳しい状況の中で生き抜いていく覚悟……。東日本大震災後の原発事故で避難している方々の表情と重なって見えた。30日からユーロスペース(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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