1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、「月刊officeYOU(オフィスユー)」(集英社クリエイティブ)で連載、1966年の東京を、伊ベネチア出身の大学教授ジャコモ・フォスカリの目を通して描いたヤマザキマリさんのマンガ「ジャコモ・フォスカリ」です。
ウナギノボリ
10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
ジャコモが幼かった頃、家には代々伝わる家宝の一つヘルメス像があった。ジャコモは使用人の息子で学校に通わず、自由に生きる少年アンドレアにあこがれていた。そして93年の東京、老人になったジャコモは懐かしい人物と再会し、昔を思い返していく。
当初は、ヤマザキさんが学生時代アルバイトをしていた名曲喫茶を舞台に展開する予定でした。ただ、東日本大震災後、「日本人が社会に対しても真剣に生きていた1960年代後半から70年代初頭を描いてみたい」と変化していきました。その過程で、ある海外の日本文学研究者のことを思いつき、一気にイメージが広がっていったようです。
彼女がフィレンツェでの美術大学時代、むさぼるように読んだ三島由紀夫や安部公房らしきキャラも出てきます。
また、ジャコモと美少年・古賀の危険な関係も見逃せません。おそらくマンガと文芸との狭間を行き来する挑戦的な作品になると思います。
社会主義国キューバでサトウキビ刈りの重労働をし、アマゾン川でピラニヤと一緒に泳ぎ、チベットでは高山病で生死をさまよう。かたや古代ギリシャ・ローマの耽美な世界をこよなく愛するマンガ家ヤマザキマリさん。
今年はシカゴからジャコモの故郷の街に引っ越しをされると聞いています。
「ジャコモ・フォスカリ」の世界がより深まることでしょう。
まだ、物語は始まったばかりですが、末永くご愛読ください。よろしくお願いします!
ヤマザキ先生ご自身が「ただもう、読んでみたくて描いた作品」とコメントしている本作ですが、こちらこそ「こんな作品を待っていました!」と伝えたくなりました。先生のお好きなものが詰め込まれたという印象が強く、ジャコモの目を通したノスタルジックな日本の姿は、代表作である「テルマエ・ロマエ」よりもさらにディープに描かれています。物語のキーになるアンドレアの奔放(ほんぽう)さと古賀少年の影のある魅力、耽美な雰囲気にドキドキ。物語が動きそうな2巻に期待大です!
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