話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、平凡な男子中学生が社交ダンスと出合い、その才能を開花させていくさまを描いた竹内友さんのマンガ「ボールルームへようこそ」です。「月刊少年マガジン」(講談社)編集部の小田太郎さんに作品の魅力を聞きました。
ウナギノボリ
10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
−−この作品の魅力は?
平凡な中学生、富士田多々良くんが、偶然、ダンス教室に足を踏み入れたところから始まります。
彼は学校でいわゆる「イケてないグループ」に属するような少年ですが、社交ダンスという強力な自己アピール性を持った競技に心引かれてしまいます。それは彼に全くない要素だからなのか、彼の中にそういう一面が眠っていたからなのかは、物語が進むにつれて明らかになるかと。
10代の少年がダンスに興味を持つことは多くないと思いますが、ダンスは少年にも訴えかける強力な魅力を持った競技です。それは「他人から喝采(かっさい)を浴びることが目的」という点です。普通に生きていて、そんなことなかなかないですよね。むしろ皆、「目立たないように空気を読んで」生きていますよね。でも、喝采を浴びるってすごく快感だと思うんです。
「ボールルームへようこそ」を通して、多々良くんの目を通して、そのあたりを体感してもらえたらうれいしいです。
−−作品が生まれたきっかけは?
竹内先生にとって初連載作品なのですが、「ボールルームへようこそ」の前に実はお蔵入りになってしまった作品があるのです。
竹内先生自身が学生のときにダンスをしていた経験があり、その作品もダンスをモチーフにした作品でした。それが増刊号に掲載される予定だったのですが、悲しいことに増刊号が休刊に(今は「月刊少年マガジンプラス」というリニューアルされた増刊号があります)。
本誌での連載を目指すにあたり、ガッツリ少年誌を意識して一から作り直したのが今の「ボールルームへようこそ」です。お蔵入りになってしまった作品もすごく面白いんですよ! いつか日の目を見るかもしれないので今は詳しく語りません(笑い)。
−−編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった……、もしくはクスッと笑えるナイショのエピソードを教えてください。
深夜、竹内先生が突然、「イケメンだの、美少女だのは描き飽きました。すえた中年を心ゆくまで描きたいんです」といわれたときは、一生懸命になだめました(笑い)。そのうち、すえた中年キャラが出てきたら「あー、これか」と思っていただければ!
−−今後の展開は?
読者のほとんどが社交ダンスのことをよく知らないでしょうから、ここまでは「テンション重視」で話が進んできました。なので少しずつ、社交ダンスの知識や技術論を織り交ぜていきたいな、という話はしています。竹内先生自身はダンスに詳しいので、当初から「もっとダンスのことを詳しく描きたい」とおっしゃっていたのを担当が止めていたのです(笑い)。
あとは多々良くんの高校ライフもお見せできたらいいな、と思っております(多々良くんは現在、中学3年生です)。
−−読者へ一言お願いします。
多々良くんは、ほとんどの皆さんと同じようにダンスとは無縁の人生を送ってきた子です。なので皆さんの心にもきっと響くことがあると思います。
第4巻は4月中旬発売です。まだ3巻ですから、今からでも全然、追いつけます! ぜひ、お手に取ってみてください。
講談社 月刊少年マガジン 小田太郎
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