今年の米アカデミー賞で12部門にノミネートされ、美術賞とダニエル・デイ・ルイスさんが主演男優賞を獲得したスティーブン・スピルバーグ監督の最新作「リンカーン」が19日、公開された。ピュリッツァー賞を受賞した女流作家ドリス・カーンズ・グッドウィンさんの原作をスピルバーグ監督が映画化。人間リンカーンを描き出す重厚な作品だ。デイ・ルイスさんのリンカーンのなりきり方はさすがだが、奴隷制廃止を訴えた共和党下院議員を演じたトミー・リー・ジョーンズさんも好演している。
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1865年。大統領に再選されたエイブラハム・リンカーン(デイ・ルイスさん)は、自分が目指す奴隷解放を巡って起こった南北戦争が4年目に入り、苦境に立たされていた。自分の理想のために多くの命が失われていく。奴隷解放を実現するには、議会で合衆国憲法修正第十三条を可決させなくてはならないが、味方であるはずの共和党の意見もまとまらない。リンカーンは国務長官らを使って、議会工作を指示。敵対する民主党の切り崩しを始める。その様子を共和党の下院議員スティーブンス(ジョーンズさん)が冷静に見つめていた。リンカーンの妻メアリー(サリー・フィールドさん)は、幼い息子を亡くした心労で、良好な関係とはいえなかったが夫のことを信じていた。やがてリンカーンの長男が、メアリーの反対を押し切って入隊してしまう……という展開。
映画はややとっつきにくい印象があるかもしれない。だが、米国の歴史に詳しくないからといって見ないのはもったいない。ざっくりと、リンカーンが奴隷解放のための合衆国憲法十三条を議会で通過させて、戦争を終わらせようとしている、ということだけ分かれば大丈夫。これはただの偉人伝、歴史ものではないからだ。そこはスピルバーグ監督の手腕で、濃い人間ドラマでグイグイと映画に引き込んでいく。重厚な映像の中で苦悩するリンカーン、そして夫として父親としての顔も描き出した。「私のために権力を使って票を集めろ」と厳しく言い放ったかと思うと、家では末の息子と一緒にホッコリ……そして夫婦げんかをするなど人間的な部分に焦点を当てた。デイ・ルイスさんが声色まで変え、理想に燃える政治家を熱演。見慣れたリンカーンの座像に命を吹き込むことに成功している。19日からTOHOシネマズ日劇ほか全国で公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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