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11月20日(水)放送分
97年のテレビシリーズ開始以来、15年にわたる歴史についに終止符を打った「踊る大捜査線」シリーズ。その間、スペシャルドラマや劇場公開作、ほかにもスピンオフドラマやスピンオフ映画などで多くの「踊る」ファンを楽しませてきた。その締めくくりを担ったのが、昨年9月に公開された「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」(以下、「THE FINAL」)だ。今作のブルーレイディスク(BD)/DVDがリリースにあたって、メガホンをとった本広克行監督にインタビューした。本広監督は「踊る」シリーズに対する思いとともに、「THE FINAL」について、今だから話せるエピソードを明かした。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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最初に断っておくが、この記事は物語の核心に触れている部分もあるため、「THE FINAL」を見ていない方は見てから読むことをおすすめする。最終興行収入59億7000万円を記録した「THE FINAL」は、湾岸警察署管内で国際環境エネルギーサミットが開催される中、2件の殺人事件が発生。さらに湾岸署署長の真下正義(ユースケ・サンタマリアさん)の息子の誘拐事件が起こり、織田裕二さんふんする青島俊作や、彼の先輩であり同志の恩田すみれ(深津絵里さん)ら湾岸署刑事たちが事件解決に奔走する姿を描く。
−−今回の「THE FINAL」で最も印象に残っている場面はどこでしょう。
「THE FINAL」を作るにあたり、僕は、何をしてファイナルというんだろうとずっと考えていました。その中で意識したのが、すみれさんがバスで倉庫に突っ込んでくる場面。そこで、青島とすみれさんが抱き合って、恋人のようなラブラブな会話をするんですが、実はあのすみれさんが実体じゃなかったらどうなるんだろうという思いで演出をしたんです。
−−というのはつまり……。
あんなに大きなバスの事故で、生きていられるわけがない。観客のみなさんにもそう思った人もいたのではないでしょうか? ちょうどそのころ、我が家で「踊る大捜査線」が始まったころからずっと飼っていた猫が死んじゃって、でも、その存在はいつも感じていました。じいちゃんが亡くなったときもそうでした。怖いわけじゃないんです。でも気配を感じるんです。そういった空気感を映像にしたくて、「THE FINAL」で、もしすみれさんが死んでいたらという気持ちで僕は演出をしたんです。これは僕の中ではすごい実験。でも、めちゃくちゃ危ない実験なんです。プロデューサーの亀山(千広)さんにも脚本家の君塚(良一)さんにも言わなかった。言ったのは深津さんだけです。
−−そのときの深津さんの反応は?
深津さんは、「こんなせりふ、私は言えないです」と言いましたが、僕は「確かにその通りだ。でも深津さん、もし、すみれがここで亡くなっていたとしたら、このせりふをどう思いますか」と読んでもらったんです。そうやって演出したシーンなんです。実は見てもらうと分かるんですけど、すみれさんはそれ以降、一切出てこないんです。
−−確かにそれは私も思いました。
でもそう思うと、めちゃくちゃ悲しい話じゃないですか。だから僕としては、もちろんハッピーエンドにもとれるよう、最後に1枚写真を入れました。エンドロールの一番最後の写真です。
−−すみれさんと青島が一緒に敬礼している写真ですか?
そうです。あれ、どこで撮った写真だと思います?
−−映画の最初のから揚げ屋のところで撮ったものだと思っていました。
そう思ってもらえれば、僕の実験は成功です。でも、親とか近しい存在の人が亡くなったばかりの人が(バスのシーンを)見ると、喪失している話だと感じる人もいるみたいです。会話はしているけど、心の会話なんじゃないかと。だから、今回の「踊る大捜査線」は僕の中では、初めて喪失感を意識した映画で、今後絶対作らないという気持ちも込めてそういう演出をしたのです。
−−本広監督の中では、本当にひと区切りつけたのですね。
完全にあれがファイナルです。ファイナルということで、青島が死ぬとどうなんだろうと考えたこともありました。ちょうどそのころ、山田洋次監督とお会いする機会があって、山田さんに、主人公を死なせるということについてアドバイスを求めたら、「絶対死なせない方がいい」と言われたんです。山田さんは、テレビシリーズで「寅さん」を一度死なせているんですね。そのときにとても悔やんだそうです。ファンの方から、なぜ寅さんを死なせちゃうんだと、ものすごいおしかりを受けて、お手紙もいっぱいいただいて、山田監督は、本当に申し訳ないことをしたと思っていたそうです。
−−それで青島を死なせることを断念したのですね。
そうです。そのかわりに意識したのが、“本当に大切な人を、命を賭けて助けに来る女の人の最後”でした。でもそれをみんなにいうと「ええっ!」となるので、深津さんと僕とで秘密裏に進めました。織田さんは「なになに、なんの話してんの」と聞いてきたけれど、「いえ、あなたには関係ない話です。あなたは魂のせりふを受けてください」と適当なことを言って(笑い)。そういう意識でもう一度見ると、最後に2人は抱き合ってゆっくり立ち上がるんですけど、そのとき、向こうから来るたくさんのパトカーの光が、“お迎え”みたいに見えるんですよ。しかも、すみれさんが天に召している感じのアングルで撮っていて、俺、よく考えてたなと、我ながら感動します(笑い)。
−−シリーズ最後ということで、この際、どうしても聞きたいことがあります。テレビシリーズ最終話に出てくる吉田のおばあちゃん(原ひさ子さん)ですが、彼女からもらったお守りを青島が持っていなかったから、「踊る大捜査線 THE MOVIE」で青島は刺されたと私は思っているのですが、あのときお守りを登場させなかったのはなぜなのでしょう。
僕も当時、お守りを出しましょうといったんですが、「あれは連続ドラマのときのものだからそんなに引っぱっちゃダメだ」と君塚さんに言われたんです。「歳末特別警戒スペシャル」(97年12月放送)のときに、(杉並北署捜査資料室の篠原警部役)谷啓さんと話をするところでちょっと出てきてるんですが、そこで出番を終わりにしました。青島って、ドラマのときから、お守りを持っていれば大丈夫だからといちいち説明していて、それを繰り返しているとお守りは相当汚れるし、お守りを途中で変えるというのも気持ちが悪い。「踊る大捜査線」って小道具がつながっていて、シリーズを通してどこかしらに登場させているんですけど、お守りだけはそういうこともあり、出さないようにしました。
−−「踊る」シリーズに終止符を打った今、今後の抱負を教えてください。
若い人を育てていきたいですね。「踊る大捜査線」をやってよかったと思うのは、そこから人気監督がたくさん生まれたこと(「海猿」シリーズの羽住英一郎監督も、「SP」シリーズの波多野貴文監督も「踊る」シリーズの出身)。ですから、これからも若い人たちにチャンスを与えてあげられればと思います。僕が総監督や総監修として立つことで若い人たちにお金が出て、彼らが好きなものを撮れるんだったら、僕はなんでもやります。
それから、映画をいろんな人に見せる活動をしていきたいですね。この間も地元の香川県で開かれた「さぬき映画祭」のディレクターを務めたんですけど、それがすごく面白かった。亀山さんや君塚さんをはじめとする東京にいるクリエイターを、讃岐うどん食べさせますからと呼んで(笑い)、若い監督たちも呼んで、いろんな交流があって、みんなで何か作ろうと盛り上がりました。ですから、これからは東京でだけではなく、地域に根ざした映画を作る、そういうことを考えています。
<プロフィル>
1965年生まれ、香川県丸亀市出身。横浜放送映画専門学院(現・日本映画大学)卒業後、92年にテレビドラマ「悪いこと」で演出家デビュー。以降、「上品ドライバー」「NIGHT HEAD」などのテレビドラマの演出をへて、96年、「7月7日、晴れ」で映画監督デビュー。97年の「踊る大捜査線」テレビシリーズで演出を担当するとともに初めてチーフディレクターを務め、その映画版4作(98年、03年、10年、12年)と、「交渉人 真下正義」(05年)を監督する。そのほかの映画監督作に「友子の場合」(96年)、「スペーストラベラーズ」(00年)、「サトラレ」(01年)、「サマータイムマシン・ブルース」(05年)、「UDON」(06年)がある。初めてはまったポップカルチャーは「機動戦士ガンダム」。「中3から高1にかけて、映画版から火がつきました。映画の公開初日には映画館に並んで見に行っていました」と語った。
*……「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」(4月26日発売)▽プレミアムエディションBD3枚組み8085円、DVD3枚組み7140円、BD・DVDともに特典映像にはキャストインタビュー集、メーキングなど。▽スタンダードエディションBD4935円、DVD3990円。▽ファイナルセットBD7枚組み1万9950円、DVD7枚組み1万8060円、セット内容は「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」プレミアムエディション(本編のBDまたはDVDと特典DVD2枚)+ファイナルセット専用特典DVD+「踊る大捜査線 THE LAST TVサラリーマン刑事と最後の難事件」(BDまたはDVD)+「係長 青島俊作2 事件はまたまた取調室で起きている!」(DVD)+「深夜も踊る大捜査線 THE FILAL」(DVD)▽発売:フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー/販売:ポニーキャニオン
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2024年11月21日 22:00時点
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