注目映画紹介:「夏の終り」 寂聴が40歳で発表した小説を満島、綾野らで映画化

「夏の終り」の一場面 (C)2012年 映画「夏の終り」製作委員会
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「夏の終り」の一場面 (C)2012年 映画「夏の終り」製作委員会

 尼僧で作家の瀬戸内寂聴さんが、自身の体験をつづり40歳のときに発表したベストセラー小説を映画化した「夏の終り」(熊切和嘉監督)が31日、公開された。瀬戸内さん自身が「自分の作品の中で最も好きなもの」だという原作で、満島ひかりさん、綾野剛さん小林薫さんが出演している。

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 昭和30(1955)年代。染色家の相澤知子(満島さん)が一緒に暮らす小杉慎吾(小林さん)には妻子がいる。自宅と知子の部屋を行ったり来たりする慎吾との関係は8年にもなるが、知子はその生活に満足していた。そんなある日、かつて関係があった木下涼太(綾野さん)が知子を訪ねてくる。それをきっかけに、2人はまたよりを戻してしまい……というストーリー。

 原作では、知子は38歳。それを10歳ほど若い1985年生まれの満島さんが演じるのはいささか若過ぎないかと思われたが、そこを演技力でカバーしている。2人の男のどちらにも引かれてしまう女性を、ときにサバサバと、ときにつやっぽく演じてみせる。一方、涼太役の綾野さんは、男の色気を放ちながら、独り占めできない知子のぐちにイライラを募らせる精神的危うさも表現。そんな2人の関係を薄々感じながら、妻とも知子とも関係を続ける優柔不断男を小林さんが好演している。彼らの危うい三角関係をまとめたのがラブストーリー初挑戦の熊切監督。内容が内容であるだけに攻め方を間違えると淫靡(いんび)な作品になりそうだが、熊切監督は昭和20~30年代の風景とともに、しっとりとした大人を感じさせるラブストーリーに仕上げた。31日から有楽町スバル座(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

 <プロフィル>

 りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。

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