SPECIAL EDITED VERSION 『ONE PIECE』魚人島編
第1話 再出発!集う麦わらの一味!
11月3日(日)放送分
公開中の映画「風立ちぬ」をもって長編映画の製作から引退することを明らかにしていたスタジオジブリの宮崎駿監督の引退会見が6日、東京都内で行われた。出席者は宮崎監督のほか、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと星野康二社長。会見の一問一答は以下の通り。(毎日新聞デジタル)
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−−スタジオジブリを設立したのが40代半ば、日本社会はどのように変わったと感じる? どんな70代にしたい?
宮崎監督:ジブリを作ったときのことを思い出すと、浮かれ騒いでいた時代だったと思う。経済大国になったとか、ジャパンアズナンバーワンだとか言われてた時代だと思う。それについて、ぼくは頭に来ていた。頭に来てないと「風の谷のナウシカ」なんか作りません。「風の谷のナウシカ」、「天空の城ラピュタ」、「となりのトトロ」、「魔女の宅急便」というのは、基本的に「経済はにぎやかなれど、心の方はどうなの?」ということを思って作ってきたんです。
でも、1989年にソ連が崩壊して、日本のバブルもはじけていきます。その過程で、もう戦争は起こらないと勝手に思っていたユーゴスラビアで内戦状態になるとか、歴史が動きはじめた。今まで自分たちが作ってきた作品の延長上に(映画を)作れないという時期が来た。そのときに体をかわすように、豚を主人公にしたり(「紅の豚」)、高畑勲監督はたぬきを主人公にしたり(「平成狸合戦ぽんぽこ」)して、切り抜けたといったら変ですが、それから長い下降期に入ったんです。
失われた10年は失われた20年になる。半藤一利さんは「失われた45年になる」と予言してます。たぶんそうなるんじゃないか。(手ぶりを交えながら)経済の上り調子のところでバブルが崩壊する。この時期にかかっている。その後、じたばたしながら「もののけ姫」を作ったり、いろいろとやってきましたけど、「風立ちぬ」まで、ずるずるずると下がりながら、これはいったいどこへ行くんだろうと思いつつ作った作品だと思います。
ずるずるずるが長すぎると、持ちこたえられなくなって、どろっといく可能性もあるっていうところまで来てるんじゃないか。抽象的になって申し訳ないが、ぼくの70代は、ずるずると落ちていくときに友人だけではなくて、一緒にやってきたスタッフや隣の保育園の子供たちの生きているところの横に自分がいるわけですから、なるべく背筋を伸ばして、半藤さんのようにきちんと生きなければいけないと思っています。
−−ジブリ作品を中国で上映する予定は?
星野社長:中国は外国映画の公開が規制緩和で増えて行くという状況は分かっているが、まだまだ日本作品の上映の流れはできていない。前向きに考えてはいますが、現時点では上映する流れにはありません。
−−尊敬する監督は?
宮崎監督:今の作品は全然見ていない。ピクサーのジョン・ラセターは友人です。イギリスのアードマン(アニメーションズ)にいる連中も友人です。みんな、ややこしいところで苦闘しながらやっている意味で友人です。競争相手ではない。それから、今の映画は見ていないんです。申し訳ないですけど。高畑監督の映画は見ることになると思うけれど、失礼だからのぞかないようにしてます。
−−「風立ちぬ」には弟子ともいえる庵野秀明監督やスティーブン・アルバートさんも出演。ゆかりの深い方々が出演しているが?
宮崎監督:その渦中にいる方は気づかないと思うんですが、毎日テレビを見ている方とか、日本の映画をいっぱい見ている方は気がつかないと思うんです。僕は東京と埼玉を往復してますけど、映画を見てない。テレビも見てないです。自分の境遇の中によみがえってくるのは、特に「風立ちぬ」をやっている間中よみがえってきたのは、モノクロ時代の日本の映画です。昭和30(1955)年以前の作品ですね。暗い電球の下で、大変な思いをしている若者や男女が出てくるような映画ばっかり。それと、失礼ですが、今のタレントさんたちのしゃべり方を聞くと、愕然(がくぜん)とします。なんという存在感のなさだろうと思います。庵野もスティーブン・アルバートさんも存在感だけです(笑い)。かなり乱暴だったと思うんですけど、その方が僕にとっては映画にぴったりだと思いました。でもほかの人がだめだったとは思わないです。菜穂子をやってくださった人なんかも、みるみるうちに本当に菜穂子になってしまって、ちょっと愕然としました。
そういう意味で、非常に今回、「風立ちぬ」の映画をドルビーサウンドだけどドルビーじゃないものにしてしまう。周りから音は出さない。ガヤも音響監督が2人で済んだといっている。昔の映画は、そこでしゃべっているところにしかマイクは向けられませんから、周りでどれだけしゃべっていてもそれは映像には出てこなかったんです。その方が世界は正しいんですよね。僕はそう思うんです。それを24回線の中から、あっちにもこっちにも声が聞こえる、それを全体にばらまくという結果、もう表現のポイントはものすごくぼんやりしたものになっているんだと思います。これは美術館の短編作品をいくつかやっていくうちにいろいろ試みていたら、これでいけるんじゃないかと思ったんですけども、プロデューサーがまったくためらわずに「これで行こう」と言ってくれたので、本当にうれしかった。音響監督も同じ問題意識を共有できていて、こういうことってめったに起こらないと僕は思っています。
これもうれしいことでしたが、いろんなポジションの責任者が、色だとか背景だとか、動画のチェックをする人だとか、いろんなセクション、製作デスクの女性も音楽の久石(譲)さんも、何かとってもいい円満な気持ちで終えたんです。こういうことは初めてでした。もっととんがって、ギスギスしたものを残しながら終わったものなんですが、僕はつい「僕の通夜に集まったようなスタッフだ」と言ったんですが、もう20年ぶり、30年ぶりのスタッフも何人も参加してくれてました。そういうことも含めて、映画を作る体験としては、非常にまれな、いい体験として終われて、本当に運がよかったと思ってます。
−−5年前にインタビューしたがそのときと比べるとやせたように見えます。今の体重はどれくらいで、健康状態はいかがですか?
宮崎監督:今の体重は63.2キロです。アニメーターになった50年前は57キロだった。結婚してから増えたんですけど、どうしてかというと三度三度飯を食うようになったから。一時は70キロを超えました。そのころの自分の写真を見ると、醜い豚のようで、非常につらい。映画を作っていく上で体調を整える必要がありますから外食をやめました。朝ごはんをしっかり食べて、昼ごはんは妻が作ったお弁当を食べて、夜は家に帰ってからご飯を食べないでおかずだけ食べました。そうしたらこういう体重になったんです。これは女房の教育のお陰なのか陰謀なのか分からないですけど、僕は最後は57キロで死ねればいいと思っているんです。
健康にはいろいろ問題がありますけれども、心配してくださる人がいて、よってたかっていろいろやらされますのでなんとかなるんじゃないかなと思っています。映画を1本作るとよれよれになる。どんどん歩くとだんだん体調が整ってくるが、この夏は暑くて、上高地に行っても暑かったので、まだ歩き方が足りない。もう少し歩けば元気になると思います。
−−宮崎監督が日本のディズニーといわれていることについてどう思う?
星野社長:日本のディズニーといわれるのは、監督がいっているわけではありませんで、2008年に公の場で宮崎監督が同じ質問をある外国の特派員の記者からあったのでお答えになったんですけれどもウォルト・ディズニーはプロデューサーだった。自分の場合はプロデューサーがいる。鈴木さんのことだと思うんですけれども。ウォルト・ディズニーはたいへん優秀なクリエーター、9人のアニメーターがいたというのは有名な話ですけれど、たいへん優秀な人材に恵まれた。自分はディズニーではないと明確におっしゃっています。私自身もディズニーには20年近くおりましたし、ディズニーの歴史とか一生懸命に勉強した中で、全然違うなと感じています。そういう面では日本のディズニーという感じではないんじゃないかなと思います。
−−“町工場のおやじ”がスタジオジブリの機関誌「熱風」に「憲法を変えることなどもってのほか」という趣旨のコメントをしていますが、発信した理由を改めて教えてください。
宮崎監督:「熱風」から取材を受けまして自分が思っていることを率直に話しました。もう少しきちんとしゃべらないといけなかったと思うんですけどそういう話が来たなと思って話したら、ああいう話になりました。べつに訂正する気もありません。それを発信し続けるかといわれると、さっきも言いましたけど僕は文化人じゃありませんので、その範囲でとどめていようと思います。
−−なぜこの時期に発言したのか?
宮崎監督:鈴木さんが中日新聞で憲法について語ったんです。そうしたら鈴木さんのところに脅迫が届くようになった。それを聞いて鈴木さんに、冗談でしょうけれども「電車に乗るとやばいですよ。ブスッとやられるかもしれない」とかいうような話があってですね。これで鈴木さんが刺されてもこちらが知らん顔するわけにはいかないから、僕も発言しようと、高畑監督にもついでに発言してもらって、3人いると的が定まらないだろうということで発言しました(笑い)。それが本当のところです。脅迫した人はつかまったらしいんですけど、詳細は分かりません。
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