北川悦吏子:“恋愛の神様”震災きっかけに新境地

1 / 8

 恋愛ドラマのヒットメーカーで“恋愛の神様”といわれる脚本家の北川悦吏子さんが手がけ、女優の常盤貴子さんが主演するスペシャルドラマ「月に祈るピエロ」(CBC・TBS系)が5日放送される。北川さんと常盤さんは、「愛していると言ってくれ」(1995年)や「ビューティフルライフ」(00年)などこれまでヒットドラマを生み出してきた名コンビ。「常盤さんとは『ビューティフルライフ』以来のラブストーリー。常盤さんも大人になったのねというふうに見てくれたらうれしい」と笑顔を見せる北川さんに、ドラマの見どころや脚本執筆中のエピソードなどを聞いた。(毎日新聞デジタル)

あなたにオススメ

 ドラマは北川さんの出身地、岐阜県が舞台で、遠く離れて住む男女が一度も会うことなく心を徐々に通わせていく“大人の恋愛”を描く。常盤さん演じる主人公の玉井静流(しずる)が閉塞(へいそく)した日常生活の中で、何気ない言葉のやり取りから小さな優しさ、幸せをみつけ、新たな一歩を踏み出す……という展開で、静流が一度も会わず心を通わせる相手となる戸伏航(とぶせ・わたる)役を谷原章介さんが演じる。八千草薫さん、根岸季衣さん、宅間孝行さん、高橋由美子さんも出演する。

 ◇“大人の恋愛”に「新境地」

 「東京が好きで、都会のお話ばかり書いてきた」と話す北川さん。今回、脚本を担当することになったのは、“ふるさとを舞台にした作品”に興味を持ったことがきっかけという。「今まで自分のふるさとを書くのが恥ずかしかったけど、3・11で気持ちが変わって、自分の生まれ育ったところを大事に思うというか、いとおしく思う」と東日本大震災後の心境の変化を告白する。

 また今回は「一度も会わないラブストーリー」を掲げて脚本に臨み、「自分としては新境地」と手応えを感じている様子。ドラマの見どころを「会わないでどう(関係を)育んでいくかというところ」と話す北川さん自身、メールや電話のやりとりだけでも「人はつながっていられる」と考えているといい、作品で描いたのは「今の私が憧れる関係で、信じたい関係」と強調する。

 ◇常盤貴子は分身

 主人公は、故郷で祖母、母と暮らす41歳の独身女性で、主人公役に常盤さんが決定したのは脚本執筆中だった。常盤さんに決まった瞬間、「やっぱり何回も一緒にやっているので、演じる彼女が見える。不思議なもので、新しい人を書くのと気持ちがちがう」と振り返る。

 ヒロインを描く際には「どうしても自分を投影してしまう」という北川さんは、「自分の分身みたいに思う部分があるので、そういう人ともう一回会えるのは楽しみ」とにっこり。2人がタッグを組むのは、2010年9月11日放送の2時間ドラマ「お母さんの最後の一日」(テレビ朝日系)以来、3年ぶりとなるが、「常盤さんがやってくだされば、ずっと書きたい」と一緒にヒットを生み出してきた常盤さんへの思い入れはひときわのようだ。

 ◇テーマソングは「いとしのエリー」

 脚本を書くことについて「毎回きつい」と話す北川さんだが、「書くのはすっごい早いです」という。物語が止まってしまうこともあるといい、「そういうときはお布団入って起きてこない」「12時間平気で寝ちゃったり……」と意外な一面も告白する。気持ちを作るためには音楽の助けを借りるといい、「今回は、(劇中で登場する)盆踊りの曲と、『いとしのエリー』がテーマ曲」と明かした。

 脚本家である自分自身について、「その時々に興味のあるものに反映されてしまう作家」「思っていないことは書けない」と話す北川さん。「愛していると言ってくれ」を書いていたときには、「月に祈るピエロ」は「書けなかった」といい、年齢に応じて書きたいものが変化しているという。今後、挑戦してみたいことを聞くと、「娘がいるので母娘ものはどこかで書くと思う」と笑顔を見せた。

 スペシャルドラマ「月に祈るピエロ」は、TBS系で5日午後2時~3時24分放送される。

 <プロフィル>

 きたがわ・えりこ 1961年生まれ、岐阜県出身。テレビドラマの企画の仕事を経て、脚本家として「素顔のままで」(1992年、フジテレビ系)で連続ドラマデビュー後、「あすなろ白書」(1993年、フジテレビ系)、「愛していると言ってくれ」(1995年、TBS系)、「ロングバケーション」(1996年、フジテレビ系)、「ビューティフルライフ」(2000年、TBS系)、「オレンジデイズ」(2004年、TBS系)、「たった一つの恋」(2006年、日本テレビ系)など話題作を数多く手掛ける。「ビューティフルライフ」では、向田邦子賞、橋田壽賀子賞を受賞した。2009年には「ハルフウェイ」で映画監督デビュー。2012年にはパルコプロデュースの舞台「彼女の言うことには。」を執筆。2012年10月には脚本・監督映画「新しい靴を買わなくちゃ」が公開された。エッセー、作詞などでも人気を集め、その活動は多岐にわたる。

写真を見る全 8 枚

テレビ 最新記事