青木琴美さんの人気マンガを映画化した「カノジョは嘘を愛しすぎてる」が全国で公開中だ。今作は、音楽業界を舞台に、俳優の佐藤健さん演じる主人公のサウンドクリエイター・小笠原秋と、秋に才能を見いだされる女子高生・小枝理子の恋模様などを描いている。劇中で3人組バンド「MUSH&Co.(マッシュアンドコー)」を演じ、役そのままにCDデビューも飾った理子役の大原櫻子さん、君島祐一役の吉沢亮さん、山崎蒼太役の森永悠希さんに話を聞いた。(遠藤政樹/毎日新聞デジタル)
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「3人とも人見知りなのに、最初から自然と雰囲気ができていたというか、初めましての状態なのにすでにそういう感じはしなくて、自然と話せました。不思議なんですけど……」と3人の初顔合わせのときの印象を話す吉沢さん。森永さんも「それぞれの個性が別の方向を向かずに一緒の方向に集まっているというか、全員人見知り同士だから向き合ったのかも」と笑うと、大原さんと吉沢さんも深くうなずき雰囲気のよさを感じさせる。3人での撮影シーンが多かったそうだが、森永さんが「悠ちゃんがこんなイケメンな顔をしているのに、毎回面白いことをやってくれる」と暴露すると、吉沢さんは「2人は何をしても笑ってくれるので、笑わせたくなっちゃうんです」と照れながら話した。
オーディションで5000人の中から理子役として選ばれた大原さんは「結果を聞いたときはうれしさと不安が重なりすぎ、驚きすぎて頭の中が真っ白に(笑い)。だからそのときは“無”でした」と当時の心境を振り返る。出演決定の実感を得たのは「次に関係者の方に会うまで、あまり実感はなかったですね」と初々しい答えが返ってきた。ちなみにオーディションを受けるきっかけになったのは「ヒロインの小枝理子ちゃんが私とめちゃくちゃ似ている」と友だちに言われたことだという。
3人が演じるのは高校の同級生で組んだ3人組バンド。それぞれが演じたキャラクターについて、友人から似ていると言われた大原さんは「理子ちゃんはよく泣くし、よく笑うし、すごく素直に感情を出す子でまっすぐだなと思いました」と言ったあとに、続けて「ずいぶんとドジするなというのは最初に読んだときに思いました(笑い)。バッグから野菜とかカスタネットとかいろいろ落とし過ぎですね」と笑う。
祐一役の吉沢さんは「意外と恋愛に奥手なところが似ている。僕は好きな子がいても、自分からアタックが全然できないタイプで、片思いのまま終わってしまう。祐一は理子に片思いしているけど、うまく伝えられず秋に取られるという切ない感じですけど、そういう部分は似ているところはあるのかもしれないです」とはにかんだ。森永さんは蒼太と自分が似ている部分として「あまり男らしくないところ」と言って、他の2人から「それは違う」と突っ込まれながらも、「何か起きている中に直接入るのではなくて、一歩引いたところから眺めて優しく見守っている感じのポジションは、よく分かるなと思います」と印象を語った。
大原さんと森永さんはピアノ演奏の経験があるものの、3人ともギターやドラムは初挑戦。ミュージシャンを演じてみた感想を、吉沢さんは「ギターに一度も触れたことがなく、実際に触ってみると本当に難しいし、奥が深いと感じましたが楽しみながらやりました」と語る。大原さんは、ピアノとの違いを「(ギターは)すごく体に近い距離の楽器な気がして、触れ合える楽しみと不安が最初にはありました。(ピアノとは)またちょっと違ったパフォーマンスというか、経験できてよかったなと思います」とギターへの印象を話す。森永さんは「一生やっていこうかなと思えるような楽器に出合えたことがすごくうれしかった」と話し、「ギターの2人と違い、僕は動けないですから、どうやって演奏面以外のところで見せなきゃいけないのかという部分を考えました。ドラムセットの下にタイヤが付いていて動けば2人のところに近づけたりするんですけど」と言って笑いを誘った。
担当した楽器の経験がない中で、カッコよく見せるためにどのような工夫をしたかと聞くと、吉沢さんは「頭を振ったり、体のどこをどう動かしたらカッコよく見えるかなど、鏡で見ながら練習しました。表情もそうですし、ソロのところは超クールな顔をして、これでもかというぐらいカッコつけたりと、見せ方は相当練習しました」と弾くことと同じくらい見せ方にこだわったという。大原さんは映画の音楽プロデューサー・亀田誠治さんから「普通にギターを持っているだけでも、この人、素人というのが分かる。とりあえず(できる限り)ギターに触って」と言われていたそうで、「見せ方プラスなじみ方というか、そういうのをすごく大切にしながらギターを持って歌うときは意識しました」と振り返る。
亀田さんによるMUSH&Co.の楽曲「明日も」で、劇中だけでなく現実にもCDデビューを果たした3人。楽曲の印象を、大原さんは「イントロが演奏からではなく歌から入り、フレッシュさというか声を先に聴ける新鮮味というのがスッと入ってきました。メッセージ的にも『今はじけよう』とパワフルで前向きだし、すごく元気なメロディーラインだなと。歌詞もまっすぐで、マンガの中では歌は聴こえてくるわけではないですけど、MUSH&Co.が歌う曲としてすごく納得するというか、すんなり受け入れられました」と話す。
吉沢さんが「10年後、100年後のことは分からないから今を、明日を全力ではじけて楽しもうという、すごい奥が深い、メッセージ性のある曲だなと感じました」と言えば、森永さんは「1回聞いただけですぐ口ずさめ、僕自身も鼻歌で歌っちゃうぐらいで、サビは特に歌いやすく、覚えやすい曲かなと思う。マンガの中の3人が楽しそうに演奏している風景が浮かんで、自分たちもこうやって演奏していくんだろうなという情景が浮かびました」とうれしそうに語る。
主演の佐藤健さんの印象を聞くと、大原さんは「実際にいるのかなという感じが少しあったのですけど……」と少しおどけて笑い、「初めましての握手からすべてを包み込まれたような、すごく優しくてまさに“紳士”とはこういう人のことをいうんだなと。それが小笠原秋の優しい温かさみたいなのとリンクしていて、最初から最後まで初めてのことだらけでいろんな方に支えていただいていたのですが、健さんとは一番長くからみもあって、終始守っていただけた方でした」と感謝の意を表す。佐藤さんの事務所の後輩でもある吉沢さんは「25歳なのにあんなに色気があって、自分の見せ方がすごく完璧なので、尊敬できますし、憧れる先輩です。現場での雰囲気は気さくで、健さんはいつも話しかけてくれるので僕は助かっています」と話し、森永さんも「現場でも進んでムードを作ってくださり、気さくな部分はすごく感じました」と同意する。
映画の見どころについて、吉沢さんは「ラブなストーリーの部分と本格的な音楽面が絶妙にからみ合い互いを高め合っている感じがすごくあり、僕はこの作品を見て高校時代バンドをやっておけばよかったと思いました。見ている方々が楽器を始めたくなるような、バンドマンの青春を熱く描いているので、バンドマンの方々にも楽しんでいただける内容だと思います。キュンキュンの足りない人たちにも見ていただきキュンキュンしてもらって、楽器でも始めてみようかなと思ってもらえたらうれしいです」と語った。
大原さんは「画面の美しさと音楽の迫力の両方があって、見終わったあとに何かをしたくなる、恋とか音楽とかしたくなるような映画だと思います。ライブシーンの迫力は映画館でしか味わえないので、ぜひ映画館で見てほしい」とライブシーンを推す。最後に森永さんが「レコーディング風景とかも本物を取り入れるなど、細部までリアルを追求していると思います。曲を聴いて作品への助走を付け、作品を見ていただき、見終わったあとにまた曲を聴いてもらって余韻にひたるという流れを作っていただくのが、一番いい楽しみ方かなと思います」と映画とCDを両方楽しむ方法を勧めた。映画は新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で14日から公開中。
<大原櫻子さんプロフィル>
1996年1月10日生まれ、東京都出身。映画のヒロイン役を決める「リコを探せ! オーディション」で、5000人の応募の中から見事ヒロイン役に選ばれる。彼女が演じる小枝理子がボーカルを務める劇中バンド「MUSH&Co.」として、実際にCDデビューを果たした。
<吉沢亮さんプロフィル>
1994年2月1日生まれ、東京都出身。2009年に行われた「アミューズ全国オーディション2009 THE PUSH!マン」で3万人を超える応募者の中からRight−on賞を受賞。11年には特撮ドラマ「仮面ライダー フォーゼ」に出演し脚光を浴びる。13年7月よりTBS系ドラマ「ぶっせん」に主演し、11月からは同じ原作の舞台「ぶっせん」で主演を務める。
<森永悠希さんプロフィル>
1996年6月29日生まれ、大阪府出身。「しゃべれどもしゃれども」(2007年)、「プリンセストヨトミ」(11年)、「奇跡のリンゴ」(13年)をはじめ、フジテレビ系ドラマ「早海さんと呼ばれる日」など、数多くの映画やドラマに出演し、演技派として注目を集める。
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