「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」(2011年)のヒットも記憶に新しい英国の名女優ジュディ・デンチさんの主演作「あなたを抱きしめる日まで」が全国で公開中だ。「クィーン」(06年)のスティーブン・フリアーズ監督が、実話を基に描いた。原作は、英国でベストセラーとなったノンフィクション書。アイルランド人女性が50年前に生き別れた息子を捜す旅路の物語だ。スティーブ・クーガンさんが原作にほれ込んでプロデュースし、共同脚本も務め、主人公と一緒に旅に出る元ジャーナリスト役で出演もしている。
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フィロミナ(デンチさん)は10代で未婚の母となった。強制的に女子修道院施設に入り、息子アンソニーに会えるのは1日1時間のみ。息子が3歳になったある日、突然養子に出されてしまった。以来50年間、心が休まらないフィロミナは、娘のジェーン(アンナ・マックスウェル・マーティンさん)にそのことを打ち明ける。ジェーンはパーティー会場で知り合った元ジャーナリストのマーティン(クーガンさん)にそのことを記事にしてもらえないかと頼み込む。最初は乗り気でなかったマーティンだったが、フィロミナの話に引き込まれ、一緒に息子を捜すために米国へと旅立つ……というストーリー。
カトリック教徒でありながら未婚の母になった罪と、息子をもぎとられた悲しみを抱えながら生きる女性が主人公で、元ジャーナリストとともに教会の欺瞞(ぎまん)を暴いていく。というと重苦しい作品を想像するかもしれないが、雰囲気は軽妙な探偵小説のようで、とっつきやすい。フィロミナはテレビとロマンス小説好きの可愛らしいおばあちゃんで、マーティンは名門大学を出た頭でっかち。2人のなかなかの名コンビぶりが面白く、会話のかみ合わなさに笑える。フィロミナを無知な人だと小バカにしているマーティンだが、次第に彼女のペースに巻き込まれていくさまが楽しく描かれている。こういった普通のおばあちゃんが一番強い。つらい目に遭っているからこそ明るく、懐が深いフィロミナの魅力に、マーティン同様、引きつけられていく。息子の行方、職業……驚きの展開に実話という強さも感じる。15日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)、シネスイッチ銀座(東京都中央区)ほか全国で公開中。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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