名曲「サマーヌード」が昨年、山下智久さんによってカバーされ、リバイバルヒットして再び注目を集めている真心ブラザーズ。このほどレコード会社を移籍し、その第1弾シングル「I’M SO GREAT!」を19日にリリースした。映画「猫侍」主題歌としても話題のこの曲について、また、その曲に込めたデビュー25年の思いを聞いた。
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−−このたびレコード会社を徳間ジャパンに移籍し、そこでご自身のレーベル「Do Things Recordings」を作られたわけですが、その経緯を教えてください。
桜井秀俊さん:デビューして25年たって、心機一転的なところですね。やりたいと思ったことを、フットワーク軽くより精度高くできる環境をと考えたとき、こういう形がベストだった。徳間ジャパンさんには初めてお世話になるというのに、いきなり自分たちの部屋をくれだなんて、非常にずうずうしいお願いをしてしまったんですけど(笑い)。
YO−KINGさん:組織が大きくなればなるほど、やっぱり制約も大きくなってきてしまうんで。
桜井さん:前のレーベルのときも、それはそれでL’Arc−en−Cielみたいな大スターの陰で、好きにやれるというオイシイ面もあったんですけどね(笑い)。
−−徳間ジャパンの社長ともお会いになったそうですが。
YO−KINGさん:篠木雅博さんっていうんですけど、強烈で面白い人でした。
桜井さん:もともと現場のディレクターで、布施明さんの「君は薔薇より美しい」を手がけた方らしいですね。
YO−KINGさん:昔僕らがデビューしたころにいたような、エネルギッシュなおじさんっていうか(笑い)。何十年もこの業界でやってきた、いい意味でのスゴみがあるというか。ああいう人、僕は大好きです!
−−そんな新レーベルからのリリース第1弾が、「I’M SO GREAT!」となるわけですが。
YO−KINGさん:これは映画「猫侍」の主題歌で、映画を見て僕が作詞・作曲したんですけど、すごく面白い映画でした。子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで、本当にみんなが楽しめる。舞台あいさつのとき主演の北村一輝さんが「最近そういう映画がなかったから、かかわれてうれしい」とおっしゃっていたけど、確かに大人が見ていいっていう映画はたくさんあっても、どんな世代でもみんなが楽しめる映画は少なくなったなと思っていたので。
桜井さん:でも、ちょっとした毒っ気もあって。それも心地いいくらいのシビれ具合で、その加減が絶妙なんですよ。
YO−KINGさん:考えさせられるような作品が好きな人でも、その毒によって納得できるし、子どもとかでその毒が分からない人でも楽しめる。それだけ懐の深い映画っていうことですね。
−−そんな映画の主題歌である「I’M SO GREAT!」は、すごくノリのいいロックンロールで、それだけで映画の楽しさが伝わってきますね。
YO−KINGさん:最初に映画のスタッフから、元気のあるものがいいとオーダーがあったんです。それで(映画を)見させていただいて、個人的にエンディングがすごくよくて。感激して、その気持ちが冷めないうちに作っちゃえ!と思って、1番はほとんど勢いで書きました(笑い)。結局、明るくて楽しいのがいいと思ったんです。ロックンロールって毒もあるけど、やっぱり明るくて楽しいもので。エルビス・プレスリーが出てきたころのことまでは知らないけど(笑い)、きっと未来が輝いて見えていたと思うし。フィフティーズ(1950年代)の音楽や映画なんかの持つ能天気な感じは、いま見たり聞いたりしてもすごく生命力を感じる。そういう気持ちを持っていれば、いろいろ失敗したとしても大丈夫なんじゃないかっていうメッセージを込めました。
−−そのシングルのカップリング曲に収録している「Welcome to the world」は、桜井さんの作詞・作曲ですね。一転して大人の哀愁漂う感じですが、シンプルという部分は共通しています。この世界について大人の目線から、次の世代に向けて優しい言葉を投げかけている感じというか。
桜井さん:まさにそう。10代のころは、きっとおじさんになったら体も動かなくなってつまんなくなるのかなと思っていたんです。でも、自分の先輩の方々には楽しそうなおじさんが本当に多くて、そういう人たちに20代のころに出会えた。だから自分たちがおじさんになったときは、いい大人とか楽しい大人として説得力を持ったおじさんになりたいと思っていたんです。それで、そういう気持ちで優しく包み込むロックンロールが書けたらいいなと思って。僕らも年齢的に、そろそろ人生のそういう段階にきているのかなって(苦笑)。
−−「Welcome to the world」はしっとりミディアムで、「I’M SO GREAT!」とのサウンドの対比も絶妙ですね。
桜井さん:テンポが遅くて音がスカスカでというのは、YO−KINGさんからのリクエストだったんです。
−−スカスカでも心に響く音を出せるのは、25年の経験のなせる業ですね。
桜井さん:それを新レーベルの一発目のシングルで、出せているところに意味があると思うんです。レコーディングも、YO−KINGさんがドラムとベースを弾いて、僕がギターという、2人の出した音しか入ってなくて、恐ろしいまでの音の引き算で作った。でもこういう音って、たぶん昔の僕らでは出したくても出せなかったんじゃないかな。
YO−KINGさん:つまり今回のシングルって、そういう自分の過去とか置かれていた環境とか、悪いことも含めてすべてを肯定していこうという一枚なんです。過去を少しだけいいほうにねつ造するというか……。そういうゲームにどんどん勝っていけば、いろんなラッキーなことに出合えていく。それは、実体験としてすごくいえることですね。
桜井さん:気持ちの持ち方ですよね。自分の外側のどうにもならないことならまだしも、気持ちは自分の中でどうにかできるんだから、それはやったほうがいいし。
YO−KINGさん:きっとインターネットを開けば、僕らの悪口もドバッて書いてあるんだろうけど、そんなものは見ないし、見なけりゃないも同じなんです(笑い)。そういうことを気にしない、いい意味での鈍感さとか強さを持って、自分自身を肯定していかないと、今の時代は生きていけないし、幸福もつかめないんじゃないかって。
−−それが、デビュー25年の経験値というものなんですね。
YO−KINGさん:でも僕らのデビューのときって、バンドブームだったし景気もよかったから、ついてたよね。4枚目くらいまではアルバムがぜんぜん売れなくて、ようやく5枚目のアルバム「KING OF ROCK」でちょっと話題になって。その次の次に出したアルバム「I will Survive」が一番売れた。いまだったら2枚目で契約切られちゃってたよね(笑い)。そういう意味では、今の若いバンドは確かにきつい時代にデビューしたと思うんだけど……。
桜井さん:今の若い子は、少し真面目すぎるかな。その真面目さって、役所勤めとかだったらいいんですけど……。見てくれる人をドキドキさせる何かというのは、真面目でいい子からはなかなか生まれにくいから。
YO−KINGさん:生き生きしてほしいね。自分のサイズを小さくして窮屈にいい子をしてるくらいなら、小屋から飛び出して伸び伸び、生き生きとふざけたほうがいいと思う。それで、ときどき優しいとなればもう……。
桜井さん:女の子はイチコロですよ(笑い)。
−−4月から全国ツアーもありますが、楽しいツアーになりそうですね。
YO−KINGさん:ロックンロールをギュッと見せるものになります。個人的にはギターをたくさん弾きたいですね。ライブハウスが多いんですけど、楽屋がせまいのは大好きなんで、楽しみです(笑い)。
桜井さん:あと、今年中にアルバムを出したいと思って曲を書いているので、このツアーでは、お客さんの前で新曲を試すなんてことも、やっていきたいなって。
YO−KINGさん:2月に中野サンプラザ(東京都中野区)でやったライブのチケットも、あっという間に売り切れたし。今、俺たちって、妙に人気があるんですよ!!
桜井さん:妙にね!(笑い)
<プロフィル>
1989年、大学の音楽サークルに所属する先輩YO−KINGさんと、1年後輩の桜井秀俊さんで結成。フジテレビ系バラエティー番組「パラダイスGOGO」内の“勝ち抜きフォークソング合戦”出演をきっかけに、同年9月シングル「うみ」でメジャーデビュー。「どか~ん」「サマーヌード」などがヒット。これまでに36枚のシングル、13枚のアルバムなどをリリースしている。奥田民生さんとのユニット地球三兄弟でも活動。4月11日のSHIBUYA CLUB QUATTRO(東京都渋谷区)を皮切りに、全20公演、全会場オールスタンディングの全国ツアー「WE ARE SO GREAT!~俺たち、エライよね~」を開催。チケットは現在発売中。
(取材・文・撮影:榑林史章)
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