元ももいろクローバーの早見あかりさんが映画初主演した「百瀬、こっちを向いて。」が公開中だ。 作家の乙一さんが中田永一という別名義で執筆した同名小説が原作で、早見さんのほか工藤阿須加さん、向井理さんらも出演。うそから始まりこじれていく高校生の初恋物語を、みずみずしい映像に仕上げたのは、全国の映画館で本編上映前に流れる「NO MORE 映画泥棒」やCM、ミュージックビデオを手がけてきた耶雲哉治(やくも・さいじ)監督。今作で長編映画デビューを飾った耶雲監督に話を聞いた。
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−−まず、原作を読んでどんな映画にしようと思いましたか?
原作を読んで面白いと思ったのは、ただキラキラしているだけではない青春が描かれていたところでした。甘いだけでなくピリッとしていた。そこを軸としながら、ブレないように描いていきました。往年の「角川アイドル映画」のようなものにしたいというイメージがプロデューサーの明石直弓さんから出て、僕ももともと(薬師丸ひろ子さん主演の)「セーラー服と機関銃」(1981年)などが大好きなので、女の子を魅力的に撮るということを大事にしていきました。
−−ヒロイン役の早見さんは初めての主演でしたが、どのように演出をしていきましたか?
早見さんは脚本を読んで、百瀬を「私と似ている」と言っていました。僕の中の百瀬のイメージとすり合わせながら、演劇のような立ちげいこをして、リハーサルを繰り返していきました。演技をうまくするのではなく、なぜそうしゃべるのか、どう思っているのかを大事にしてもらいました。付き合うフリをする相手のノボルとの関係でいえば、肉親のような、弟に接しているような感じを出したかったので、いつも早見さんがご自身の妹とケンカするときのことを想像してもらったりしました。
−−早見さんご本人の魅力を、どう役に投影していきましたか?
ももいろクローバー時代の元気で明るく可愛いというイメージより、彼女のもともと持っているふとした寂しい感じや憂いのある雰囲気が魅力的だなと思ったので、そこを出したいと思いました。百瀬はノボルと付き合っているフリをして、校内で演技をしているんです。うそをついているときの顔、学校の屋上で素の自分に戻ったときの顔、たくさんの弟や妹たちの面倒をみるたくましい顔、後半になるにしたがい、深く傷ついている顔も見せます。早見さんは百瀬になりきって、女の子のいろいろな顔を見せてくれ、そこが映画の魅力になったのではと思っています。
−−ヒロインの多面性も魅力的ですが、百瀬を好きになっていくノボルの、男子側の気持ちがとてもリアルに描かれていました。同じ男性として、ノボルに共感できる部分もあったのではないでしょうか。
ノボルは「一生女の子とは縁がない」と思っていて、自分のことを必要以上に低く見ています。彼が見ているモノクロームの風景の中に、ある日突然、百瀬という原色が割り込んできた。そのときの戸惑う気持ちはよく分かります。百瀬が弟のように接してくるので、ノボルにとっては、その距離の近さにドキドキなんですね。高校生だから、登場人物4人とも恋愛べたなんですね。初恋ってそういうものじゃないですか。映画を見る方々も、懐かしく思い出すのではと思います。
−−その4人の高校生のシーンは、気持ちが交錯していて見どころです。宮崎先輩を好きな百瀬、百瀬を好きなノボル、ノボルの憧れである宮崎先輩、宮崎先輩の彼女の神林先輩、神林先輩と付き合いながら百瀬に優しい宮崎先輩……。神林先輩役の石橋杏奈さん以外はほとんど新人の起用でした。配役はどう決めていったのですか?
ノボル役の竹内太郎君、宮崎先輩役の工藤阿須加君……みなオーディションです。特に宮崎先輩役はスポーツ万能で成績優秀な男子なので、鼻につくような雰囲気にならない人をと思って選びました。工藤君の爽やかな魅力に助けられましたね。初顔合わせで自己紹介をしてもらったあと、役になりきっての自己紹介をしてもらいました。それから1カ月くらいかけて、4人のワークショップをやって、空気感を作っていきました。
−−4人のシーンでの一番の見どころはどこですか?
デートのシーンですね。一番きれいな青春です。キャッチボールのシーンに注目してほしいです。それぞれが思っている相手にしかボールを投げない。ここは青春の残酷さの象徴です。その後、帰りのバスの中でのみんなの表情も含めて見どころです。
−−この映画の魅力について教えてください。
やはり、ヒロインの魅力ですね。早見さんが、今までのイメージを破って演じています。また、大人になったノボルを演じる向井理さんが、さえない眼鏡男子を演じているので、向井さんにも萌(も)えてほしいです。この映画を撮って思ったのは、女性が魅力的に見える作品はいいなあということ。男性の僕にとって、女性はよく分からない存在なので、これからも女性を描いた作品を撮ってみたいと思いました。
−−最後に、これまで影響を受けた映画作品やマンガ、アニメなどがあったら教えてください。
「セーラー服と機関銃」「時をかける少女」(83年)のような角川映画や、「犬神家の一族」(76年)。メジャーだけど、作り手のくせが強い映画が好きです。マンガは……出身地が富山県なので、子どものころから藤子不二雄さんに親しみがありました。お二人の自伝的作品「まんが道」には、家の近所がたくさん出てくるので(笑い)。
<プロフィル>
1976年生まれ、富山県出身。98年、東京学生映画祭でグランプリ、2000年、JCF学生映画祭グランプリなどを受賞。同年、ROBOTに所属し、「NO MORE 映画泥棒」をはじめ、映画「レッドクリフPart1、2」日本版のオープニング映像、「踊る大捜査線THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」のオープニング映像、スキー・モーグルの上村愛子選手に密着取材した長編ドキュメンタリー「2U SKIの神様と過ごした日々の記録2編」、ミュージックビデオでは、ステレオポニーの「青春に、その涙が必要だ!」、東方神起の「stand by U」、AKB48のユニット「渡り廊下走り隊」の解散に迫るドキュメンタリー「渡り廊下走り隊 解散の真実」などを手がけた。
(インタビュー・文・撮影:キョーコ)
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