「モードの帝王」と呼ばれたフランスのファッションデザイナー、イヴ・サンローランの伝記映画「イヴ・サンローラン」(ジャリル・レスペール監督)が、6日から公開される。パートナーとの関係を軸に、華々しい成功の裏側で孤独にさいなまれる天才デザイナーの姿を映し出す。イヴ・サンローラン財団からアーカイブ衣装が貸し出された財団初公認作品ともいわれ、フランスで今最も期待されている若手俳優のピエール・ニネさんが演じるサンローランも本国で「そっくり」と評判だ。
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中産階級の家庭に育ったイヴ・サンローラン(ニネさん)はデザイナーとなり、1957年、クリスチャン・ディオールの死後、21歳で後継者に指名されて脚光を浴びる。ピエール・ベルジェ(ギョーム・ガリエンヌさん)は、そんなイヴの才能にほれ込んだ一人だった。2人は出会ってすぐに恋に落ち、一緒に暮らし始める。顧客対応やマスコミ取材対応をピエールが引き受け、神経質なイヴを支えた。しかし兵役後、神経衰弱になったイヴは、病気を理由にディオール社から契約を打ち切られてしまう。その後、ピエールが奔走し、61年に「イヴ・サンローラン社」を設立。独立を果たしたイヴは成功とプレッシャーから、アルコールや薬物依存などにおぼれていく……という展開。
天才デザイナーと彼を支えるパートナー、2人の深い愛の物語は、実在のパートナーで実業家のピエール・ベルジェさんの協力のもと、イヴ・サンローラン財団所有の本物の衣装が貸し出しされたことでリアリティーを増した。モンドリアン・ルックやスモーキングなど、時代を映すファッションが次々に登場。ファストファッションのない時代、モード界が活気づいていたころのファッション業界の裏側も描いている。とはいえ、今作はファッションの歴史を語るものではなく、華々しい成功の裏にある人間の弱さに主軸を置いている。天才にありがちなあやうさで快楽に走り、自分を痛めつけていくイヴと、彼をまるで親のように守ろうとするピエール。2人の関係が、フランスの国立劇団コメディー・フランセーズに在籍するニネさんとガリエンヌさんによって、繊細に演じられ、ラストには、ピエールのいちずな愛がしみじみと伝わってくる。6日から角川シネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。最近の泣けた映画は「猿の惑星:新世紀 ライジング」(19日公開)。
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