よしたにさんの同名4コママンガを基にした映像配信サービス「ひかりTV」のオリジナル4K連続ドラマ「理系の人々」が配信中だ。原作は、うっとうしいけど憎めない理系の人々の日常を「あるあるネタ」満載でコミカルに描き、無料マンガサイト「ComicWalker(コミックウォーカー)」(KADOKAWA)で連載中。ドラマは女優の真野恵里菜さんが演じる薬学部の大学院生の理系女子・おのでらの日常を描いた「おのでら」編と、俳優の伊藤淳史さんが演じるシステムエンジニアの男性・よしたにを描いた「よしたに」編で構成されている。理系女子“リケジョ”に初挑戦した真野さんに、理系のイメージや役作り、フルハイビジョンの4倍の解像度を持つ「4K」について話を聞いた。
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真野さんが演じるおのでらはドラマで生まれたオリジナルキャラクター。「原作ものが映像化されるとイメージなどがあり難しかったりしますが、逆に『理系女子編』はオリジナルなので、役作りでは一から作れるというのは、すごくうれしい」と自由に演じられることを喜ぶ。だが、「今回に限っては理系の女子の役なので、私は理系からかけ離れている人間だから(笑い)、何をお手本にしていいか分からなかった」と理系の設定に戸惑ったことを明かす。
真野さんが役作りに頭を悩ませていると、「全然そんなふうに意識してなかったのですが、いつもお世話になっているマネジャーさんが理系と主張し始めて(笑い)、『理系だからなんでも聞いて』と言われた」という。行動を観察した結果、「理系っぽくもなかったので、マネジャーさんの意見は聞かずに(笑い)、台本を読んで想像しました」とちょっぴり毒舌を交えて笑いを誘う。そんな状況での役作りは、「台本を読んで知らない言葉を調べていったら、台本がテスト勉強をしているかのようになったけど、逆に楽しかった」と振り返る。
今作のテーマでもある「理系」だが、真野さんは「自然と難しい言葉がとっさに出るのがすごい」と理系のイメージを語り、「例えば定義とかの言葉は普段使わないので、逆に賢く見えるし、憧れます」と目を輝かせる。「ワンピースを着るのに『全身とワンピースの丈の黄金比が何対何』というせりふもあったのですが、そんなことを考えてワンピースを選んだことないなと思いました(笑い)」と自身が理系とはほど遠いことを感じたという。
せりふの中に専門用語など普段使わない言葉が数多く出てきたそうだが、その中で特に「エントロピー」という単語が印象に残ったという。「『エントロピーが増えていくからいい』とか『エントロピーがこうでこうだからいい』というシーンをずっと撮っていたら、言葉がインプットされた」と喜び、「(次の日に)朝起きても、頭の中でエントロピーと言ってしまいました」と言って笑う。
真野さんは「SPEC」シリーズのサトリ役など、最近は強烈な印象の役柄を演じることが多いが、「おのでらは理系の女子ですけど言うことは等身大の女の子。派手なほうではないけどちょっと落ち着いていて、それが楽しかった」と今回の役を演じられたことを喜ぶ。そして、「本当に私は変わった役が多かったり、実際にはあり得ない力を持っている役が多かったので、等身大の女の子をやれているんだ……」と今回しみじみ感じたといい、「意外とできないのかなと思っていたけど、楽しいし、新鮮でした」とうれしそうに振り返る。
理系の人々のあるあるネタを交えつつ進んでいく「理系女子編」だが、「“リケジョ”編は現場に入ってからコメディー色がどんどん強くなっていったのでアドリブも多い」と真野さん。そのためか「瑠東(東一郎)監督もカットをかけなくなるんですよ(笑い)」といい、「第1話でも山手線ゲームをやって(本多力さん演じる)東条さんに『理系』と言われたあとに『締め切り今日ですよね』と(私が)言うせりふもアドリブ」と一例を挙げる。アドリブ演技については、「台本上では終わっていますがカットがかかるまでお芝居をしないといけないですし、その間も理系の女子でいないといけないのですごくドキドキしました」と心境を告白。「随所にアドリブが組み込まれているので、それも見ていただけたらなと思います」とアピールする。
さらに、「本多さんが出てくると絶対何かが起きる」と強調。「(本多さんは)しゃべらなくても何かをしていて、そういう動きもアドリブ」と切り出し、「どこまで使われるのか分からないですが、話数が進んでいくと本多さんを台車に乗せて私たちが押すというシーンがあるのですが、(台車に)私が乗せられそうになって全力で逃げるという部分もアドリブ。監督的にはおのでらっぽいと言われました」と言って笑う。
アドリブ演技も光る真野さんにドラマや映画、舞台などで違いがあるかを聞くと、「特に舞台だから、映画だからこうしようというのはない」と断言。「役をいただいた時に何かその役をやる意味を見つけ出さなきゃと思う」と演技への思いをにじませ、「役作りは人それぞれやり方があると思いますが、自分がやるからにはどこか真野恵里菜が持っている要素を入れつつ、役柄の設定と混ぜて作ろうといつも思っています」と役への取り組み方を語る。
今作は4K専用カメラで撮影されているが、「ほこりや小さい虫もきれいに映ってしまうので、ほこりが落ち着くのを待ったりスタッフさんが虫取りをしたりという時間もありました」と高解像度カメラならではの苦労を明かす。さらに肌も細部まで見えてしまうため、「メークさんも対策をいろいろ考えてくださった」と感謝するも、「撮影が何日も続いたりすると食生活が偏ったり、睡眠時間が少なくなってしまったりするので(肌に影響しないかと)ドキドキする」と真野さん。続けて、「いいカメラが出ると、その分メークさんが頑張ってくださいますが、また次にいいのが出るのでイタチごっこみたい(笑い)」と苦笑し、「そういう面での美容意識というか女子力は高まるのかなと思います」と冗談交じりに語る。
自身は高校時代に理系と文系を選択する前に通信制に転校したため、「あまり普段、『この人、理系なのかな? 文系なのかな?』と考えることはない」と話す真野さんだが、「ちょっと理系要素があるのかなと思ったのは、ピザを分ける時とか一切れに同じ量の具が乗っているようにしようというのは考えちゃうところが理系寄りかもしれない」と自己分析。しかし、「あんまり理系・文系って分けちゃいけないなと、今回の作品をやって思いました」と笑顔で語り、「たくさんの方に気楽に見てほしいです」とメッセージを送った。ドラマはひかりTVで配信中。
<プロフィル>
1991年4月11日生まれ、神奈川県出身。2006年に「ハロー!プロジェクト」の研修生「ハロプロエッグ」第2期メンバーのオーディションに合格。08年にはハロプロエッグを卒業して女優デビューし、「SPEC 警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿」で民放地上波の連続ドラマに初出演する。映画では「怪談新耳袋 怪奇」で主演を務めたほか、「仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大作戦 MEGA MAX」では仮面ライダーなでしこを演じる。「機動警察パトレイバー」シリーズの実写化プロジェクト「THE NEXT GENERATION パトレイバー」に泉野明役で出演中。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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