お笑いトリオ「森三中」の大島美幸さんがオッサン役で主演したことでも話題の映画「福福荘の福ちゃん」(藤田容介監督)が8日に公開された。同作は、沖縄国際映画祭をはじめ世界12カ国の映画祭に正式招待され、日本国内のみならず英国、ドイツ、イタリア、台湾などでも劇場公開が決まっており、大島さんがモントリオール・ファンタジア国際映画祭で最優秀主演女優賞に輝いた。主人公の福ちゃんを演じた大島さんと、親友のシマッチを演じた荒川良々さんに話を聞いた。
あなたにオススメ
来春朝ドラ「あんぱん」の“二人の妹” 朝ドラヒロインまで手が届くか
−−大島さんは、これが映画初主演ですが、それが男性のオッサンの役というのは正直どう思いましたか?
大島美幸さん:とにかく、びっくりでした。主演というのでも驚いたのに、まさかのおじさん役というので、いろいろびっくりしてしまって。話を聞いたときは、大丈夫かなという不安がありました。でも、監督のこれまでの作品を見させていただいたら、どれもステキな作品ばかりだったし、事前にいろいろ話をさせていただいたので気が楽になって、撮影が楽しみになっていました。荒川さんと共演させていただくのも初めてだったので、それもすごく楽しみでした。役作りという部分では、自分の父親とか親戚のおじさんがこうだったなと、頭で思い浮かべながら演じていましたね。
荒川良々さん:僕は藤田監督から、企画の段階で話を聞かせていただいていました。主演は大島さんで、こういう内容で、と。もともと藤田監督の作品はどれも好きなので、「いつから撮るんだろう?」と楽しみにしていたんです。そうしたら、大島さんがお仕事でやせてしまった体形を戻すのに撮影スケジュールがちょっと延びたと聞いて、「なんだよ~」って(笑い)。そう思ったくらい、本当に楽しみにしていたんです。
−−それぞれの役柄についておうかがいします。大島さんは、福ちゃん(福田辰男)像をどのように考えましたか?
大島さん:純粋だけど、心に傷を持っていて、繊細なところもあって、面倒見がいい。見た目はのほほんとしているんですけど、いろいろなものを抱えて生きている人だなって。そういう見た目だけじゃないところを、すごく考えましたね。
荒川さん:大島さんが演じたからこそという部分が、すごくあると思います。大島さんの人柄も含めて、福ちゃんの魅力になっています。
−−荒川さんが演じられたシマッチ(島木拓郎)も、すごくいいヤツですね。
荒川さん:福ちゃんにいろいろおせっかいを焼いて、女の子を紹介してあげたりとかするんですけど……。いいヤツなのか、うっとうしいヤツなのか(笑い)。
大島さん:いいヤツですよ。
荒川さん:演じているときは、本当に楽しくて。終わっちゃうときは「ああー」って寂しくなりました。藤田監督は、ちゃんとお芝居を見てくれる方なので、そういう安心感もあったし、大島さんや杉浦千穂役の水川(あさみ)さんとのやりとりも、違和感とかやりにくさがまったくなくて、スッと入ることができて心地よかった。もっと撮影していたいなという気持ちがありながら、でも完成したものを早く見たいという気持ちもあって。
−−作品に流れている温かい雰囲気や牧歌的な空気は、出演者同士のコミュニケーションや、藤田組のチームワークによるものでしょうね。
荒川さん:監督が、そういう空気感を作っていたと思います。スタッフさんもすごく熱意を持って携わってくださって。福ちゃんの部屋の美術がいい例ですけど、部屋に置いてあるもの一つ一つに、すごくこだわっていて。しかも、すごく居心地がいい部屋なんです。そういう細かいところから、この空気感を作っていたと思います。
−−山とか自然の中でのシーンが多くありましたが、ご苦労はありましたか?
荒川さん:苦労というか、やっぱり天気ですね。
大島さん:ちょうど季節はずれの台風が来ちゃって、スケジュールがずれてしまったんです。
荒川さん:そのお陰で監督がどんどんやつれていったのも、苦労といえば苦労なのかな(笑い)。撮らなきゃいけないシーンがどんどん山積みになって、監督はお弁当ものどを通らなかったようで。
大島さん:私たちは、おいしくたいらげていましたけどね(笑い)。
荒川さん:「これ体にいいんで、飲んでください」って、アミノ酸みたいなのをこっそり差し入れしました(笑い)。
−−大蛇が出てくるシーンもありましたが。
大島さん:もちろんホンモノですよ! 「首を絞められたときは、どうしたらいいですか?」ってトレーナーの人に聞いたんです。そうしたら「大丈夫です」って言うだけで、対処方法を何も教えてくれなかったのが怖かったです。
荒川さん:すごくいい演技していましたよ、蛇が(笑い)。
−−劇中では、千穂(水川さん)が撮った福ちゃんの写真もたくさん出て来ますね。
大島さん:あれは監督の知り合いのカメラマンの方で。
荒川さん:もともと監督が自主映画を作っていた時代に、カメラマンをやっていた方です。あれは、別撮りでスチール撮影したんですか?
大島さん:いえ、動画で撮ったんですよ。
荒川さん:あ、動画なんだ!
大島さん:撮影の合間に、何日かに分けて撮影したんです。カメラマンさんと散歩に行って、犬を触ったりいろいろやっているのを、それをずっと撮っていて。動画で撮っているから、どういうふうになるのかまったく想像がつかなかったんですけど、実際に写真になったものを見たら、めっちゃステキな写真ばかりでびっくりしました!
荒川さん:大島さんのいい表情がいっぱい出てくるので、たくさんの人に見てほしいですね。
−−ちなみにロケは、どのあたりで?
荒川さん:ピクニックのシーンは、埼玉のキャンプ場です。東京都内のロケは、神田の居酒屋さんとかですね。
大島さん:福福荘の外観は、東小金井に実際にあった建物で、もう取り壊しをするということで、壊す前に使わせてもらったらしいです。ああいうちょっと懐かしい風景を、作品の中に残すことができたのは、すごくよかったんじゃないかと思いますね。
−−福ちゃんと千穂が行くカレー屋さんも実際にあるんですか?
大島さん:あるんです。作品の中ではからくて食べられないっていう設定でしたけど、本当は甘口でめっちゃおいしかったんですよ。だからせりふは「からっ!」でしたけど、心の中では「うまっ!」って叫んでました(笑い)。
−−純朴な主人公がいて毎回マドンナが登場してという、寅さんのような、シリーズになっても面白いんじゃないかと思いました。
大島さん:私も監督に「次を作ってくれますか?」って聞いたら、「福ちゃんはこれで完結です」って言っていました。「全部出し切ったから」って。それくらいみんな気持ちを込めて作った作品ということです。かめばかむほど味が出る映画になったので、一度と言わず、二度三度と何度でも見てほしいです!
<プロフィル>
大島美幸(おおしま・みゆき) 1980年生まれ、栃木県出身。吉本総合芸能学院(NSC)時代に村上知子さん、黒沢かずこさんと「森三中」を結成してデビュー。お笑いタレントとしてバラエティー番組に出演するほか、「グーグーだって猫である」「ハンサム☆スーツ」「漫才ギャング」など多数の映画に出演して女優としても評価を得ている。今作でモントリオール・ファンタジア国際映画祭で最優秀主演女優賞を受賞。今年、妊活による芸能活動の休業を発表した。
荒川良々(あらかわ・よしよし) 1974年生まれ、佐賀県出身。98年に「大人計画」に参加。2000年に「アナザヘブン」で映画デビュー。独特な風貌と個性あふれる演技で、13年のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」をはじめ、映画、舞台、CMと幅広く活躍。藤田容介監督による映画「全然大丈夫」(08年)で映画初主演を果たし、映画「サビ男サビ女」、テレビドラマ「サバ」など多くの藤田作品に出演している。2015年には出演した映画「ジヌよさらば~かむろば村へ~」「予告犯」の公開が控える。
(インタビュー・文・撮影:榑林史章)
ディズニー・アニメーション・スタジオの最新作「モアナと伝説の海2」(12月6日公開、デイブ・デリック・ジュニア監督ほか)で主人公モアナが楽曲「ビヨンド ~越えてゆこう~」を歌う劇…
人気グループ「なにわ男子」の長尾謙杜さんが、2025年4月4日公開の映画「おいしくて泣くとき」(横尾初喜監督)で劇場映画初主演を務めることが11月22日、分かった。ヒロイン役は俳…
ディズニー・アニメーション・スタジオの最新作「モアナと伝説の海2」(12月6日公開、デイブ・デリック・ジュニア監督ほか)の日本版エンドソング「ビヨンド ~越えてゆこう~」を、ガー…
故・坂本龍一さんが指揮をとった2014年のフルオーケストラ公演「Ryuichi Sakamoto | Playing the Orchestra 2014」の模様が映画化され、2…
俳優の今田美桜さんが11月19日、東京都内で行われた映画「劇場版ドクターX FINAL」(田村直己監督、12月6日公開)の完成披露舞台あいさつに、他のメインキャストと共に出席。美…