ドラゴンボールDAIMA
第11話 デンセツ
12月23日(月)放送分
神戸を舞台に、こだわりの仕立屋二代目と常連客らが織りなす人間模様を描いた映画「繕い裁つ人」が31日に公開された。池辺葵さんの同名マンガが原作で、主人公の仕立屋の南市江役に中谷美紀さんを迎え、「ぶどうのなみだ」(2014年)などで知られる三島有紀子監督が、職人の手仕事を題材に人の思いを丹念に描き出した。三島監督は、8年前からテーラーを主人公にしたものを撮りたいと思っていたところ、原作と出合って市江の魅力にひかれ、映画化に至ったという。
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「ただ物語を実写化するのではつまらない。主人公の市江の思いに寄り添って、彼女の人生を旅したいと思いました」と映画化への思いを、三島監督はこう語る。企画のきっかけは自身の父親からの影響だった。
「私の父は、テーラーで季節ごとに作った数着を、死ぬまで愛用していました。父は『職人の誇りをまとっているんだ』と語っていました。以前からテーラーの映画を作りたいと思っていたところ、池辺葵さんのマンガと出合って、主人公の市江の魅力をぜひ映画にしたいと思いました」
映画は、亡き祖母の仕立屋を継いだ二代目・南市江(中谷さん)の元に、地元・神戸のデパートに勤める藤井(三浦貴大さん)が訪れるところから始まる。藤井は市江に新作をブランド化するよう提案する。しかし、市江はかたくなに首を縦に振らない。市江は、先代が作った洋服の仕立て直しとサイズ直し、先代のデザイン画から数少ない新作を作ることを、天命のように全うしているのだ。
自分の生き方を貫き通す頑固な市江。演じる中谷さんの凛(りん)としたたたずまいがハマっている。「中谷さんは細部までこだわって、最高の演技をしてくれました。髪の毛をバッサリと短くしてほしいというこちらの依頼も快諾してくれて、仕事に対する姿勢はまさに市江でした」とたたえる。
洋裁のシーンは吹き替えにしなかった。約1カ月間の練習後、中谷さんが実際にアンティークミシンを踏んで撮影した。「すごくうまくて洋裁指導の先生も驚くほどの上達ぶりだった」という。
劇中のミシンはこだわりの一品。探し出すまで、かなり苦労した。「市江の祖母が使っていたという設定のため、アンティークミシンにはこだわりました。本体は黒がいいとイメージして、たくさんの洋裁店に聞いて回りました。見た目がイメージ通りでも、全く動かないものもあったので、本当に(探すのは)大変でしたね」と苦労を明かす。
三島監督は、これまでに「しあわせのパン」(12年)、「ぶどうのなみだ」とパン職人、ワイン職人を主人公にした映画を撮ってきた。
「『パン』で大切な家族と分け合って生きる“横”のつながりを描いて、『ぶどう』で長い年月をかけた土から生まれるワインを通して、過去からの“縦”の人のつながりを描きました。今回は、職人が自分の内面と向き合うことで、人と人の心のやりとりが生まれていくところを描きたいと思いました」
藤井は、市江に「自作を発表したいのでは」と投げかける。藤井もまた、市江の仕事ぶりに触れて自身を見つめ直していく……。「藤井によって市江の内面が引き出されます。そして彼女が起こした行動は、藤井の人生に響いていきます。そんな心のやりとりを見てほしい」と語る。
原作とは異なり、市江の家は洋館にした。三島監督は、店として使った洋館で、歴史的建造物の旧平賀邸を「市江そのもの」と見立てた。神戸の街中を探し回って選んだという。
「煙突があって、出窓があって、小石が埋まっている洗い出し舗装の壁。可愛いけれど、どっしりとしていて揺るがない市江そのものです。異人館のような天井の高いものではなく、食住一体となった日本人の暮らしが見える洋館にこだわりました。内装も美しかったので、中もそのまま使わせていただきました」
衣装は、多くの舞台・映画などの衣装を手がける伊藤佐智子さんが担当した。市江の仕立てる洋服だけでなく、ブルーの仕事服や落ち着いた色と巻物を合わせた普段着もとてもおしゃれだ。市江の扱う舶来ものの生地とボタンにも注目したい。
「誰かが思いを込めて作ったものには、人の温かさと生み出す人の生きざまが出るのです」と語る三島監督。自作に込める思いとは? 「100年先の人に届くような作品をと思いながら作っています。生きる価値がない世の中だと思っている人が、もうちょっと生きていいかなと思えるような作品を作り続けていきたいと思います」と前向きに語った。
出演は中谷さん、三浦さんのほか、片桐はいりさん、杉咲花さん、中尾ミエさん、伊武雅刀さん、余貴美子さんら。エンディング曲は平井堅さんが担当。1月31日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。
<プロフィル>
みしま・ゆきこ 大阪府出身。神戸女学院大学卒業後、NHKに入局し、「NHKスペシャル」「トップランナー」などの制作に携わる。11年間、NHKに在職し、退局後、「刺青~匂ひ月のごとく」(2009年)で監督デビュー。これまでの監督作に「しあわせのパン」(12年)、「ぶどうのなみだ」(14年)などがある。
(インタビュー・文・撮影:キョーコ)
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