「秋菊の物語」(1992年)、「王妃の紋章」(2006年)など数々の名作を生んだチャン・イーモウ監督とコン・リーさん主演の8年ぶりのタッグ作「妻への家路」が、6日から公開される。文化大革命が終わり、再会した夫婦の物語。心労で記憶障害となり夫の顔を忘れてしまった妻。そばで妻を支える夫。静かで強い夫婦愛が胸を打つ。
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文化大革命の嵐が吹き荒れる中国。フォン・ワンイー(リーさん)は、元教授だった夫のルー・イエンシー(チェン・ダオミンさん)が強制労働所から逃亡した知らせを受けた。舞踏学校に通う娘のタンタン(チャン・ホエウェン)は、幼いころ別れたきりの父親のせいで舞台の主役をとれず、苦い思いをする。舞台の主演を条件に、父の居場所を党に密告してしまうタンタン。それから3年後の1977年。文化大革命は終結した。イエンシーは20年ぶりに我が家に帰るが、ワンイーは夫の顔が分からなく、別人だと思ってしまう。党員が夫だと言い聞かせても信じず、夫の帰りを待ち続けている。妻を心配したイエンシーは、向かいに仮住まいをし、思い出してもらおうと必死になるのだが……という展開。
思い人を待ち続ける健気な愛が描かれる。イーモウ監督作「初恋のきた道」(00年)のヒロインのいじらしさをほうふつとさせるが、今作のヒロインもまた、時代の中で愛する人と引き裂かれる。序盤、クライマックスのような盛り上がりで別離が描かれた後、20年ぶりの再会が訪れる。しかし、妻は記憶障害のため、夫に会えていないのだ。駅へ夫を迎えに行くことが日課となった妻。後ろ姿を見守る夫。2人の距離感がなんとももの悲しいが、夫の「思い出してもらおう作戦」はなかなかユニークでほほ笑ましく、物語を温かく包み込む。夫は、娘と妻の関係修復にも一役買い、歳月によって変わり果てた家族の形に、前進をもたらす。「HERO」(02年)で秦王を演じたダオミンさんが演じる夫は、知的な優しさにあふれ、悲しみを心の奥底から静かに感じさせてくる。そして、リーさんは病院や老人ホームで観察して役に挑んだという。2人の名優が素晴らしい上に、娘役を演じたホエウェンさんが爽やかだ。「花の生涯~梅蘭芳~」(08年)などの脚本も手掛け、小説家でもあるゲリン・ヤンさんの同名小説が原作。TOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほかで6日から順次公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。イーモウ監督のギョーザやまんじゅうの使い方が大好きです。
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