豊かな歴史と文化を持つ一方で、政治的には大きく揺さぶられ続ける沖縄。照屋林賢さん率いる「りんけんバンド」は本土復帰(1972年)後の77年に結成し、ウチナーグチ(沖縄の言葉)にこだわり、新しい沖縄のポップミュージックの先頭を歩んできた。12日の東京公演を前に林賢さんに聞いた。
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−−りんけんバンドは沖縄の文化にこだわって活動を続けてこられました。バンドの柱、これは変わらないというのはどんなところでしょうか。
「りんけんバンドの方程式」というのがあって、沖縄の言葉、沖縄のリズム、沖縄のメロディー、衣装も沖縄のもの、そこに西洋の楽器を入れる。もちろん、(三線など)沖縄の楽器を入れる、というものです。りんけんバンドを始めた頃、これからどうなるんだろうという不安があった。でも、外国に行くようになって、僕らと同じミュージシャンがたくさんいることが分かったんです。それで、この「沖縄の」という部分を「自分たちの」と入れ替えれば、この方程式は世界中で使えるなと思いました。この方程式がりんけんバンド。何かが欠けると他のものも欠けてしまう。沖縄でもいろんな音楽が生まれているけれど、方程式のどれかが削られている。いい悪いは別として、僕はこの方程式で見てしまう。こうした基本となるものが僕の中でのりんけんバンドの価値観で、ちょっと頑張ればちゃんとしたものになると思うんです。
−−3年前からご出身のコザ(沖縄市)で「根音(ニィウトゥ)ウマチー(祭り)」という無料の音楽イベントを始められました。今年も3月に開かれ好評でしたが……。
これも、その方程式を取り入れたいと思ってやってきました。僕らは沖縄の「根っこの音」に、もっと感謝したい。根っこがなければ僕らの音楽は生まれてこなかった。この根っことは何なのか、それを考えようと思ったのが、このイベントです。
沖縄でも「ただ売れればいい」という風潮が、この十数年かなりあった。面白ければ、楽しければいいんじゃないかと、売るのに一生懸命な音楽がいっぱい出てきた。それは仕方ないかもしれないけれど、そうすると、若い人たちが聴いた時に、価値をどこに見いだすのか。(売り上げなどの)数字とかテレビやマスコミにいっぱい出てるというところに価値観を置く、そうなったら、民謡をやってる人たちはだんだんつまらなくなる、いくらやっても食っていけないと、結果的になくなってしまうかもしれない。弟子に教えてお金をもらうという形にしてやっと、という人もいる。でも、それでいいのか、そこに発展はあるのかと思うんです。
沖縄の人は、辺野古の(米軍基地)問題も含めてですが、「私たちは何も言えない、何も私たちに力はないんじゃないか」と思っている。翻弄(ほんろう)されているわけです。気力さえ失っている。それは、「自分たちのものでありながら、自分たちのものじゃなくなる」という感覚が相当生まれているのではないか。よく音楽を例にとって言うんですが、音楽で自分たちの誇りを取り戻したいと思うんです。音楽から、誇りとか自信とかが生まれるようなものができないか。そこから「根音ウマチー」の発想も出てきました。
−−PRも兼ねてフランスで公演もされましたね。
「もっと沖縄の音楽はポテンシャルが高いんだ。だからフランスでやろう」と言ったら、みんなコケたんですよね。ポテンシャルの高さにもっと自信を持って、世界中の人にアピールしないと。フランスは芸術に対して寛大で、日本の中心、東京よりフランスにダイレクトで語りかけようと。それが報道されると、沖縄の音楽がフランスでできるんだ、すごいんだと伝わるんです。
「コザはロックの街」とよくいわれますが、僕は、まずは沖縄の音楽の街だろうと。(沖縄民謡界の重鎮)嘉手苅林昌(かでかる・りんしょう)さんも登川誠仁(のぼりかわ・せいじん)さん(いずれも故人)も、(林賢さんの父で音楽家の)照屋林助(故人)も、そして島袋正雄さん(琉球古典音楽、三線の人間国宝)もコザ。集中してるんです。沖縄の音楽はポテンシャルが高いということをもっと県内外に知らせるべきだと思っています。沖縄の人々の勇気や自信をもう一度、文化の種火をあおいで、メラメラと燃える日が来たらすごいんじゃないかと思います。
*……「りんけんバンドコンサート2015」は12日午後5時、日本橋三井ホール(東京都中央区)で開催。詳しくは公式ホームページ(http://rinken.gr.jp/)まで。(油井雅和/毎日新聞)
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