アニメのネット配信:テレビの補完からファーストコンタクトへ

アニメのネット配信について語る小新井涼さん
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アニメのネット配信について語る小新井涼さん

 かつてテレビや劇場などに限られていたアニメの視聴手段も、ネット配信の普及に伴い、これまでと一風変わった様相をみせ始めている。週に約100本(再放送含む)のアニメを視聴する“オタレント”の小新井涼さんがネット配信の現状について考察した。

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 「放送中のアニメを毎週全部視聴」を始めてから約3年、最近自分の中でネット配信でのアニメ視聴の役割が変化してきているのを感じます。

 当初から「ぷちます!」や「ヘタリア」など、ネット配信での視聴がメインという作品はいくつかありましたが、どちらかというと「ネット配信でアニメを見る」のは、その地域では放送されていない作品や、時間が重なって録画ができない作品を視聴する見逃し配信などの補完的なものだったと思います。

 しかし、今までクール中に1本あるかどうかだったネット配信メインの作品が徐々に増えてきていること、特に今期は配信だけのタイトルが5本以上もあることから、補完的でしかなかったネット配信が、アニメ視聴においてテレビ放送や劇場版、OAD(オリジナルアニメDVD)などと同じく、「作品と最初に触れる機会」、いわば作品との“ファーストコンタクト”としての役割を大きくしてきているのではないかと思うようになったのです。

 果たして本当にそうなのか、現在主な視聴方法であるテレビ放送やそれに続く劇場版・OADなどとの相違点を比較しつつ、ネット配信でアニメを視聴することの可能性を考えてみます。

 テレビ視聴との一番の類似点としてあげられるのは、「基本的に無料で視聴が可能」ということでしょう。

 ネット配信では、作品ごとに最新話1週間無料などの期限はあるものの、初回視聴が無料なぶん、劇場版やOADなどと比べて作品に触れる機会が多いという普及率の高さが特徴です。

 一方で、ネット配信は、お金を払って視聴する劇場版やOADとも類似点を持っています。中でも「ピンポイントな層を狙った作品との相性がいい」というのは大きいのではないでしょうか。

 配信中の「ニンジャスレイヤー」の独特でマニアックな世界観や戦闘の演出、新規ファンというよりは、当時の原作ファンが気になる内容の「聖闘士星矢 黄金魂」なども、テレビシリーズほど広い層ではないけれど、わざわざ劇場まで足を運んだり、DVDを買うくらいその作品が好きな人たちに向けたタイトルと通ずるマニアックさを感じます。

 劇場へ行く、ソフトを購入する代わりにクリックひとつで視聴ができる点は、テレビ放送と比べると視聴の壁となりうるクリックという行為が、劇場版・OADと比べると強みとなっているのも印象的です。

 また、テレビ視聴や劇場版・OADと比較すると、「時間・場所的な制約が少ない」のはネット配信の最大の特徴ではないでしょうか。

 テレビ放送のように(録画をしない限り)時間に縛られたり、劇場版、OADのように有料だったりといった制約がより少ないネット配信は、その利便性でいえば、現在一番気軽にアニメを視聴できる方法といえるかもしれません。

 とはいえ、作品数やジャンルの多様性というコンテンツの充実度でいうと、ネット配信はまだまだテレビ放送や劇場版、OADと並ぶまでは成熟していないと思うのも確かです。

 しかしテレビ放送、劇場版、OADそれぞれの利点といえる部分との類似性、さらに時間・空間的制約からの解放という特徴を持つことから、作品数の増加に伴い「作品と最初に触れる機会」として他と並ぶ時がくるのもそう遠くはないと思います。

 配信サイトのさらなる増加、動画視聴機能の拡張や新たな課金方法、フラッシュアニメのような独特の表現方法など、ネット配信だからできるアニメ視聴の可能性もこれから続々と開拓されていくことでしょう。

 まだまだ発展途上なネット配信でのアニメ視聴ですが、今後5年、10年のますますの変化に注目です。

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