注目映画紹介:「ターナー、光に愛を求めて」 大自然を観察し創作するターナーを生き生きと描く

映画「ターナー、光に愛を求めて」のワンシーン(C)Thin Man Films
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映画「ターナー、光に愛を求めて」のワンシーン(C)Thin Man Films

 19世紀の英国の偉大な風景画家ターナーの半生を描いた「ターナー、光に愛を求めて」(マイク・リー監督)が、20日から公開される。名匠リー監督の作品では常連のティモシー・スポールさんが、謎多きターナーをリアルに演じ、第67回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞。第87回アカデミー賞では、作品が4部門にノミネートされた。絵画の中に入り込んだような映像にも注目だ。

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 19世紀、英国。若くして認められた画家ターナー(スポールさん)は、夏はインスピレーションを求めて旅をし、冬はアトリエで創作する日々。オランダ旅行から帰って来たターナーを、助手を務める元理髪師の父親(ポール・ジェッソンさん)が温かく迎える。ターナーと父親は、家政婦のハンナ(ドロシー・アトキンソンさん)と3人で暮らしている。あるとき、旅先でたどり着いた港町で、光きらめく海に魅せられたターナー。創作意欲をかき立てられ、偽名を使って宿に泊まることに。女将(おかみ)のブース夫人(マリオン・ベイリーさん)と知り合い、後に離れられない仲になる。創作に没頭するターナーだったが、父親の気管支炎が悪化していき……という展開。

 ターナーの後半生を描いた今作は、スポールさんの生き生きとした芝居と、有名な「戦艦テメレール号」などの名画誕生のエピソードに立ち会う喜びに包まれ、一瞬たりとも目が離せない。キャンバスに魂を丸ごとぶつけるかのようなターナーの、大自然に挑み、抱かれながら、つぶさに観察する姿にも圧倒される。肉親を亡くし、未亡人に引かれていくターナー。愛する女性には不器用で可愛らしく、ほほ笑ましいシーンとして織り込まれる。前半は、父親とうり二つ、仲のいいターナー父子の、後半は未亡人や家政婦との関係がドラマチックに描かれる。プリズムの実験や、写真に興味を持つシーンからは、当時の近代科学についてもうかがえる。旅先での遠景は、絵画そのまま、光ときらめきに満ちている。その幻想的な映像の中でワシワシと歩く姿に、風景を自分のものにしようと勇むターナーの生き様と自信がありありと満ちている。撮影を担当したディック・ポープさんは、カンヌ国際映画祭で芸術貢献賞を受賞している。20日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。スポールさん好きな私にとって今作は、いろいろな表情が楽しめる最高の作品でした。

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