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11月3日(日)放送分
映画「シックス・センス」(1999年)などの作品で観客の度肝を抜いてきたM・ナイト・シャマラン監督が、初めてテレビドラマの制作に取り組んだ「ウェイワード・パインズ 出口のない街」がFOXチャンネルで放送中だ。同僚の行方を捜索中事故に遭い、“ウェイワード・パインズ”という田舎町にたどり着いたシークレットサービスの捜査官が、不穏な空気が漂う謎だらけの街から脱出を試みようとするミステリー作品で、ブレーク・クラウチさんの小説が基になっている。主人公の捜査官イーサン・バークを演じているのは、80年代の大ヒット映画「アウトサイダー」(83年)や、「メリーに首ったけ」(98年)、「クラッシュ」(2004年)などの作品に出演してきたマット・ディロンさん。「最高の恋人」(93年)のプロモーション以来の22年ぶりに来日したディロンさんに、見どころなどを聞いた。
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「ハロー!」と威勢よく取材部屋に入ってきたディロンさん。10代の時、「マイ・ボディガード」(80年)のプロモーションで、「生まれて初めて訪れた外国」が日本だったため、今回の来日は「ことのほかうれしい」と喜びを口にする。テレビドラマで主演するのは今作「ウェイワード・パインズ」が初めてだ。
「僕自身、テレビドラマをやることになるとは思っていなかった」というが、その気持ちを変えたのは、ここ最近の米ドラマ界の活況がある。また以前ほど撮影で長期間拘束されることもないため、ディロンさんは、「今のテレビは、俳優にとって最高のメディアではないか」と言い切る。
今作の出演話が舞い込み、ディロンさんに手渡されたのは、全10話あるうちの最初の2話の脚本だった。それを読んだとき、「この『ウェイワード・パインズ』の世界にどっぷりハマってしまった」と振り返る。その一方で懸念もあった。というのは「こういう超自然的な現象やSF的な作品の場合、どうしても“そっち”を描くことのほうに比重がかかり、キャラクター描写がないがしろにされがち」だからだ。その点を、今作の製作総指揮で、第1話の監督も務めたシャマランさんにぶつけたところ、シャマランさんが「キャラクターを通じてストーリーを語ることを確約してくれた」ため、オファーを受ける決意をした。
初のドラマの現場では、映画に比べ、「長い時間をかけてストーリーが語られる分、キャラクターを作り上げていく自由がある」ことを実感した。「演じる役をふくらませることができるんだ。それが面白い」と話すが、半面、「その過程でキャラクターの信憑(しんぴょう)性を損なわない」よう注意も払った。実際、イーサンを演じながら、「シークレットサービスという職業柄、こういう状況において、こういう行動はとらないだろう」と首をかしげる場面があった。そんなときは、そのエピソードの演出家に、自ら「変えた方がいいんじゃないか」と進言したという。
「話の流れも重要だけど、客がその作品を見なくなるのは、キャラタクーが突飛な行動、常識から外れた行動をとった時だと思う。だから、なぜこんなことをやるんだと疑問を持ったときには、僕がイーサンに代わってそれを声に出していった。そうする責任が、僕にはあると思ったんだ」
時には、「文句をつけているようで言いにくいときもあった」そうだが、「やるべきことはやったし、結果には満足している」と胸を張る。そして、メリッサ・レオさんやカーラ・グギノさん、トビー・ジョーンズさん、さらにテレンス・ハワードさんら共演者に対しても「これまで素晴らしいキャリアを築いてきた彼らも、同じ思いだったと思う」とおもんぱかる。
さて、26日からデジタル配信も始まった同作だが、物語は序盤から、重要と思われた人物が姿を消したり、“鍵”を握る人物が街の秘密をイーサンにほのめかしたりなど、その展開の速さには驚かされる。それだけではない。今作最大の謎の一つである街の“正体”がシーズン中盤には明かされ、作品のジャンルすら覆してしまう展開が待ち受けている。今作は、日本を含む世界125の国と地域で同時放送されており、そのため、物語がどう転がっていくかは、今のところ、関わったスタッフ、キャストしか知らない。
そこで、すでに全話の撮影を終え、ラストまでを知るディロンさんに今後の見どころを尋ねると、「僕は、映画でもテレビでも、その“一ファン”として興味があるのは、物語のキャラクターの振る舞いがどう変化していくかなんだ」と断った上で、ジャン・ルノワール監督の映画「大いなる幻影」(1937年)を引き合いに出し、「誰でもその行動には理由がある。つまり……」と話し始めた。
ディロンさんによると、第2話での、ハワードさん演じる保安官とのやりとりを経て、「イーサンは、自分が生き残るための“戦略”を変えていく」のだといい、「それが、彼が置かれた状況におけるベストなやり方なんだ」と説明する。その上で、「事故で頭を打ったせいで自分は頭がイカれてしまったんじゃないかと思いながらも、彼なりに戦略を考えて、ウェイワード・パインズという世界を徐々にコントロールし始めていくんだ。もちろん、世界を牛耳ることなんてできない。でも、できないなりにそれをやろうとしていくところがとても面白いと思う」と指摘する。
そして、「僕は、先へ、先へと話が進んでいく作品が好きなんだ。イーサンは自ら行動を起こし、それによって話がどんどん進んでいく。その点において、イーサンは僕と似ている。だから、ぜひ皆さんにもその部分に注目して見てほしい」とアピールした。
米ドラマ「ウェイワード・パインズ 出口のない街」は、FOXチャンネルで毎週金曜午後10時から放送中(8月から再放送予定。20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント ジャパンから6月26日にデジタル配信開始。今秋DVDリリース予定)。
<プロフィル>
1964年、米ニューヨーク州生まれ。「レベルポイント」(79年)でデビュー。その後、「マイ・ボディガード」(80年)、「アウトサイダー」「ランブルフィッシュ」(83年)などの青春映画で人気を博す。その一方で、「ドラッグストア・カウボーイ」(89年)、「最高の恋人」(93年)などのインディーズ映画に出演。「メリーに首ったけ」(98年)ではコメディーにも挑戦した。「クラッシュ」(2004年)でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。
(取材・文:りんたいこ)
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