注目映画紹介:「天空の蜂」 “原発テロ”を軸にした8時間の攻防 じりじりとした心理戦も

映画「天空の蜂」のワンシーン (C)2015「天空の蜂」製作委員会
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映画「天空の蜂」のワンシーン (C)2015「天空の蜂」製作委員会

 「ガリレオ」シリーズなどで知られる東野圭吾さんの小説を、俳優の江口洋介さん主演で映像化した映画「天空の蜂」(堤幸彦監督)が12日公開される。開発されたばかりの超巨大ヘリを乗っ取り、原子力発電所の原子炉に墜落させるという史上最悪の“原発テロ”を引き起こそうとする犯人と、日本壊滅という究極の危機に立ち向かう人々との8時間の攻防を描いている。江口さんが超巨大ヘリ「ビッグB」の設計士・湯原、本木雅弘さんが原子力発電所「新陽」の設計士・三島、綾野剛さんが「ビッグB」を奪う謎の男・雑賀を演じるほか、柄本明さん、國村隼さん、石橋蓮司さん、竹中直人さん、手塚とおるさん、仲間由紀恵さんら豪華キャストが集結した。

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 「天空の蜂」は、東野さんが“原発テロ”を題材にし、1995年に発表したクライシスサスペンスで、「SPEC」や「トリック」などで知られる堤監督がメガホンをとり、20年の時を経て映像化が実現。物語の舞台は原作発表時と同じく95年で、湯原が5年をかけて開発した最新鋭の超大型ヘリ「ビッグB」が、工場から遠隔操作によって何者かにより奪われるところから始まる。機内に迷い込んだ湯原の息子を乗せたまま「ビッグB」が向かった先は、福井県灰木村にある原子力発電所「新陽」。犯人は「ビッグB」を原子炉の真上、高度800メートル地点に静止させると、自身を「天空の蜂」と名乗り、「ビッグB」の燃料がなくなるまでの8時間内に「日本のすべての原発の破棄」を要求し、従わなかった場合は大量の爆発物を積んだまま「ビッグB」を原子炉に墜落させると宣言する。息子の安否を気遣いつつ警察の要請を受け「新陽」へと向かった湯原は、「新陽」の設計士で同期の三島と再会するが……というストーリー。

 三島が冷淡な男に変わってしまっていたことに驚く湯原と、そんな湯原を邪魔者扱いし、突き放す三島。三島の提案と自衛隊の活躍により湯原の息子は無事に救出されるものの、三島の言動に腑(ふ)に落ちないものを感じた湯原の抱いた疑念が、事件の真相につながっていくなど、2人が繰り広げるじりじりとした心理戦は“対テロ”以上に大きな見どころとなっている。またテロ回避と人命確保の二者択一を迫られる発電所内の人々、地道な聞き込みと行動によりじわじわと犯人像をあぶり出していく警察など、登場人物たちのそれぞれの立場の懸念や焦燥が、最近の日本を代表する俳優たちの名演とともにリアルに描かれ、濃密な“8時間”を味わうことができる。優れた原作ありきとはいえ、原発と政治、親子や夫婦の絆、いじめや差別まで、さまざまなテーマを内包しながら、きっちりとエンターテインメント作品にまとめあげた堤監督の手腕も見事。また「超巨大ヘリ」の名にふさわしい「ビッグB」の造形に心躍る瞬間もあり、最後まで大いに楽しむことができた。12日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で公開。(山岸睦郎/毎日新聞デジタル)

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