2013年に公開され、17億円を超える興行収入を記録した「図書館戦争 LIBRARY WARS」。その続編の「図書館戦争THE LAST MISSION」(10月10日公開)について、前作に続いてメガホンをとった佐藤信介監督に話を聞いた。
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映画「図書館戦争」は、有川浩さんが執筆した、シリーズ累計発行部数600万部を超す「図書館戦争」シリーズに基づいている。元号が「昭和」から「正化」に変わった近未来の日本で、国家による思想検閲やメディア規制が横行する中、検閲に対抗し、「本を読む自由」を守る「関東図書隊」隊員たちの活躍を描く。前作は、図書隊に憧れて入隊した榮倉奈々さん演じる笠原郁が、岡田准一さん演じる鬼教官・堂上篤の指導の下で、「図書特殊部隊」(ライブラリータスクフォース)の一員として成長する姿を描いていた。今作は、その1年後という設定で進んでいく。
前作では「顕微鏡で見たような、人の気持ちの動きを見せられたらいい」と話していた佐藤監督。今作を作るに当たっては、前作にはなかった「笠原が戦いに巻き込まれていく」過程で、「後半の、笠原と堂上2人の、長く大きな流れに違和感なく結び付いていくよう、小さな表情の動きを戦いの頭から練り上げていくことをテーマ」に取り組んでいったという。その言葉通り、オープニングからライブラリータスクフォースと「メディア良化隊」(良化隊)の攻防戦が展開する。笠原が本を持って走る中、堂上は良化隊からの攻撃を防御しながら郁に視線を走らせる……。佐藤監督は「戦いのシーンですが、そこに心の動きというか、ああ、こんなときに(堂上が郁を気に掛けている)みたいに思う。それがいいのかなと思いながら」その場面を作り上げていったという。
「小さな心の動き」は、松坂桃李さん演じる「未来企画」代表の手塚慧(さとし)に呼び出された郁を、堂上がレストランに迎えに行くシーンでも見ることができる。慧は、福士蒼汰さん演じる、笠原と同期の手塚光の兄で、今作において「敵方の中心人物」の役割を担う存在だ。佐藤監督は、堂上と慧が、「ピリピリ対峙(たいじ)する場面」が「すごく好き」で、その後に続く、つないだ郁の手を堂上が放す場面は、スケジュールが押し気味で「手なんか撮らなくてもよかった」にもかかわらず、「どうしても撮りたい」と映像に収めたという。
そのレストランのシーンでは、堂上の私服姿も見ることができる。原作での堂上は制服だが、「堂上の私服が見たいという、ただその勢いでそうしました」と笑う佐藤監督。いろんな衣装を試した岡田さんは「何を着ても似合うんですけど、似合えばいいってもんじゃない」ということで、黒は決まり過ぎ、カラフルは堂上のイメージと違う、ネイビー系は普段と一緒……と、最終的に「堂上っぽいよねというところで、真面目に考えて」決めたそうだ。それがどんな衣装かは、本編を見てのお楽しみだ。
ここでこぼれ話を一つ。岡田さんがインストラクターの資格を持つほど、格闘技に精通しているのは周知のことだが、今回もアクションは岡田さん自らがこなしている。そんな岡田さんの影響力は絶大で、佐藤監督は「それはもう大変でしたよ。岡田さんの影響者続出ですよ」と笑う。今作は、5日放送のスペシャルドラマ「図書館戦争 BOOK OF MEMORIES」の撮影と並行して進められたが、そのドラマの更衣室のシーンの撮影時のこと。「みんなが上半身裸になるんですが、筋肉を隆々と見せたいからと、待合室に行ったら20人ぐらいが集まって最後のパンプアップ(筋肉が膨らむ現象)のための筋肉トレーニングをやっているんです」。そこでの岡田さんは、「脱がないのに真ん中で指導していて、『行くぞー!』みたいな。目が合ったらすごく怖かった(笑い)」と打ち明けた。
さて、佐藤監督いわく「動的に物語が進む」今作だが、見どころはやはり、後半の建物の中で繰り広げられるライブラリータスクフォースと良化隊の戦闘シーンだ。ただ、戦闘シーンというのは、「ある程度いってしまうと、ともすればただ撃っているだけ」になりがちだ。そうならないよう隊員たちのフォーメーションにも力を入れた。戦い方に関しては、自衛隊の軍事訓練の専門家に検証してもらったという。その撮影には「すごく苦労した」と佐藤監督は明かす。
「今回は“撤退戦”なんです。非常に規律正しく撤退していっているんだけど、だんだんとそれがバラバラになり、どこかで一斉に崩れ、そこから先はぐちゃぐちゃになる。あとは防衛あるのみ。そういう大きな流れがある中で、フォーメーションの美しさや崩れ方」を意識しつつ、そのとき郁が何を見て驚き、何に対して動揺するのかといった「細かいドラマ」を盛り込んでいったそうだ。
撮影中の印象に残っているエピソードとして佐藤監督が挙げたのは、郁がリペリング(懸垂下降)をする場面。いつもは吹き替えの人がやるそうだが、今回は雨が降っていたにもかかわらず榮倉さんが「やりたい」と志願したという。「地上3階くらいのところから、つられてシューッとやりました。僕は怖くてのぞけなかったんですが(笑い)、まさにその郁の顔、スーッと落ちてくるカットが今回の撮影のラストカットだったんです。『図書館戦争』らしい最後というか、郁の成長を見た気がして拍手しました」としみじみ語る。
「図書館戦争」らしい最後……。確かに、今作のサブタイトルは「THE LAST MISSION」だ。ということは、これが最後なのか? 佐藤監督は、「それは神のみぞ知ること」と次回作についての明言を避け、「見たいという方が多ければ実現しますし、なければ何もしないということで…(笑い)」とはぐらかす。今作では、手塚光のロマンスもほのめかされているが、“次回”があるとすれば彼の恋愛に踏み込むのか? すると佐藤監督は「次回はないんですけど、あるとしたら、結構進みます。きっと面白いだろうと思います。撮っていませんけど(笑い)」とまんざらでもない様子だった。
次回作といえば佐藤監督は、2016年公開予定の「デスノート2016(仮)」でもメガホンをとることになっている。そこで、そちらの進捗状況についても尋ねた。すると、「撮影に向かっての準備の、いい佳境に入っている段階です。脚本は今、作っている最中で、ストーリーの詳細は明かせませんが、あれ(映画前作)からの続きという感じになります」とのこと。キャストも、「メインどころは……」と言葉を濁しながらも、ほぼほぼ決まっている模様。「お話しできるのはそれぐらいですね……。やっとタイトルが言えるようになったぐらいですが、それもまだ明かせません」と口は重く、撮影にいつ頃入るかも、「この日というのは、まだどうしようかと言っている状態で、まだ言えない」そうだが、「バンバン準備はやっています」とのこと。新たな情報が出るのを待つことにしよう。
ともあれ、今は「図書館戦争 THE LAST MISSION」である。今作についてメッセージをお願いすると、「前作の、なんとも小さなムズムズするような世界観の1年後を描いていますが、(ライブラリータスクフォースの)彼らの身に降りかかる大きな事件が一体どうなるんだろうというところも含めて、彼らが頑張る姿をぜひ見ていただきたいと思いますし、前作の続きが見たいという人たちには新しいキャラクターや世界がぐっと広がっているので、そのあたりをぜひ楽しんでもらいたいですね」と締めくくった。映画は10日から全国で公開中。
<プロフィル>
1970年生まれ、広島県出身。武蔵野美術大学在学中に脚本・監督を務めた16ミリ短編映画「寮内厳粛」が「ぴあフィルムフェスティバル94」でグランプリ受賞。2001年「LOVE SONG」で監督メジャーデビュー。「修羅雪姫」(01年)、「COSMIC RESCUE -The Moonlight Generations-」(03年)、「砂時計」(08年)、「GANTZ」(11年)、「GANTZ:PERFECT ANSWER」(11年)、「図書館戦争 LIBRARY WARS」(13年)、「万能鑑定士Q モナ・リザの瞳」(14年)などを監督。脚本家としても活躍しており、手掛けた作品に「春の雪」(05年)、「県庁の星」(06年)などがある。16年公開の「デスノート2016」(仮)の監督を務める。
(インタビュー・文・撮影/りんたいこ)
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