話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、クールな女子高生が冴(さ)えない中年男性に片思いする姿を描いた眉月じゅんさんの「恋は雨上がりのように」です。ビッグコミックスピリッツ編集部の茂木俊輔さんに作品の魅力を聞きました。
ウナギノボリ
10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
寡黙な高校2年生・橘あきらが密かに想いを寄せる相手は、アルバイト先のファミレス店長・近藤正巳45歳。17歳少女の切ない恋心を描いた青春叙情譜です。数ある年の差恋愛モノの中で、この作品が新しいのは近藤店長が本当に冴えないオッサンなところです! ヒロイン・あきらの可愛さが、もちろん一番の魅力ですが、「店長の冴えなさが可愛い!!」という女性読者の声も非常に多く、ある意味どちらもヒロインです(笑い)。まさに女性作家ならではの表現力だと思います。
担当になってすぐの頃、眉月先生が4年前に弊誌で初めて描いた「しこたま!」という「今時の女の子が、冴えないコンビニ店長に熱烈な片思いをする」といった内容の読み切りが面白かったという話をしたところ、さらに前に描いた「羅生門」という女子高生の日常を描いた未発表読み切りを読ませてくれて、これまた非常に面白く、「この路線で連載作品を作ろう」と互いに同意したところから始まりました。
とはいえ、最初のネームはヒロイン・あきらが割と自分の思いをしゃべったり、態度に良く出すキャラクターで、お互いなんとなくピンと来ず、「無口で、目つきが悪くて、自分の思いが全然相手に伝わらない子にしよう」と打ち合わせしてから、ネームががぜん光を放ち始めました。キャラクターが生き生きと動き出す瞬間はいつも感動的です。
タイトルは、「雨」をキーワードとして入れることは決まっていたのですが、打ち合わせでなかなか良いものが出ず、締め切りギリギリのある日、僕がiPodでよく聴いている曲目のリストを見ていたら「雨あがりに君が綺麗(きれい)ならきっと僕なら恋せずにいられない」というサビのフレーズが印象的な「恋はスウィンギン・イン・ザ・レイン」(THE BOHEMIANS)という曲名と「悲しみは雪のように」(浜田省吾さん)という曲名が目に飛び込んで来て、それらを組み合わせてつけました。眉月先生はあまり気に入っていなかったようですが(笑い)。その後、1巻最終話である8話目のエピソードは、タイトルに引っ張られる形で完成したので、結果として良いタイトルになったと思っています。
苦労した点は、特にないです。眉月先生は僕の「こういうのが読みたい」といった要望を100%くみ取って、300%くらいの返答で、予想をはるかに超えた作品にして上げてくるので、すごいとしか言いようがないです。絵力や演出力も回を追うごとに進化していっているので、毎話毎話、一読者として大感動しながら読んでいます。天才だと思います。
あきらと店長は「青春時代の挫折」という共通項を抱えており、そういった2人の過去が徐々に明らかになっていくかもしれません。ぜひ、ご期待ください。
青年誌連載作でありながら、おかげさまで老若男女を問わず、あらゆる層の読者の方に支持をいただいております。17歳のあきら(♀)に感情移入するも良し、45歳の店長(♂)に感情移入するも良し、切なく甘酸っぱく純粋な気持ちに浸ってください!! 単行本第4集は来年の1月12日頃の発売となります。今後も面白くなっていきますので、ぜひともご一読いただければ!
ビッグコミックスピリッツ編集部 茂木俊輔
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